ワールドマテリアルズ~転生先は、自分が原作者の異世界でした。

依槻

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第二部

58:祭壇の地へ

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 王都到着初日の観光を終えたシノ達はその翌日、いよいよ今回の主目的に乗り出そうとしていた。
 目的地は、王都近郊にあるという精霊の祭壇。行ったことがある人物が殆どおらず、設定を作ったシノ本人でさえも詳細がわからない場所である。
 まだ日も高い昼過ぎ、三人は王都西端の検問所へやってきていた。とあるものを借りる必要があるからだ。

「車両に施した結界の効果はあまり長くは続きませんので、お気を付けください」

「分かりました、ありがとう御座います」

 役員からの説明を受けて借りていたのは、バイクほどの大きさをした小型の魔動車だった。さすがにこの地方を徒歩で移動するのはとんでもない時間がかかるので必須の移動手段といえるだろう。
 ちょうど三人が乗ることができる上に、さすがは王都製で物が良いのか、揺れなども殆どない。村の地方にもこのぐらいの品があればいいのだけれどと、シノは密かに思う。

「王都の技術は凄いですよねー。車両に結界まで張れるなんて」

「それもそうだけど、精霊の能力には遠く及ばないわね。あんただって能力を極めれば、こんなの遥かに凌ぐわよ」

「そ、それは引き続き精進します……」

「王都には転移魔術を使える宮廷魔術師の人が何人かいるけれど、リエルには敵わないよねー」

 どれだけ物凄い技術も、精霊には及ばないというのが彼女達の会話でよくわかる。リエルはどんな移動手段にも勝り、セリアはいかなる盾にも勝る。
 その会話は検問所の男性役員にも当然聞こえているのだが、彼らは何のことやらといった表情だ。まさか目の前にそんな存在がいるとは夢にも思っていないのだろう。

「よし、それじゃあ祭壇を目指して出発ー!」

 シノは魔動車の動力を始動させると後ろに二人を乗せ、役員の見送りを受けながら王都を発って行った。見る間に都の景色が遠ざかり、その速さが伺える。平原の空は晴れ渡っており、その下を風を切りながら進むのは実に気持ちが良い。

「そういえば、その場所はどの辺りにあるんですか?」

「北西にある山の麓に森が見えるでしょ? あの周囲は湖に囲まれているらしくて、その奥にあるんだって」

「また随分と面倒な場所ね……湖の近くからは歩いて行かなきゃならないじゃない」

「まぁ、そのために対魔物用の結界なんてものがついてるんだろうけどね。置いたままだと襲われて壊されるかもしれないし」

 湖には橋が架かっているとのことだが、さすがに魔動車で通ると壊れかねないので必然的に森までは歩きになってしまう。こういう不便さから、調査にこようなんて人はあまりいないのだろう。

「遠くに魔物討伐してる他の冒険者が見えるわね。村周辺の雑魚とは違って、こっちの方面は張り合いがありそうで助かるわ」

「張り合いを求めるのもどうかと思うんですけど……」

「甘いわよ、リエル。アンタにとってはそれすらも修行なんだから、常に身構えておくべきじゃない?」

 目的地への移動中、後ろでリエルとセリアがそんな会話を交わしていた。初めて出会った数ヶ月前と比べるとそれなりに力はつけたように見えるが、まだまだということなのだろう。
 そしてふとシノが思ったのが、今の自分達は冒険者パーティとしてみれば相当強いといえるのではないだろうか?
 全員が魔法主体なので接近戦は少し物足りないかもしれないが、三人共が無詠唱で魔法を使えるという強みがあり、セリアは絶対防御の盾持ちだ。本当に危なくなったらリエルの転移能力で離脱だって出来るのだし、いざという時も抜かりなどない。
 精霊が二人もパーティにいるという時点で他では絶対にありえないとは思うのだけれど。

「湖から遺跡までの間は魔物との戦闘は避けられないだろうし、その時は頼んだよ二人共!」

「任せてください! ここしばらくの修行の成果もお見せしますよ!」

「ワイバーンだろうがゴーレムだろうが私の敵じゃないわ」

 シノが呼びかけると、実に頼もしい二人の声が返ってくる。新しくした杖の具合も試しておきたいし、何の戦闘も起きないというのは正直なところ避けたい。何かあってこその冒険というものだ。
 そしてそのまましばらく小高い丘に囲まれた地帯を進んでいると、ふいにセリアが声をあげる。


「――――――シノ。前方に中型魔物の群れが見えたわ」


 言われるままに目を凝らしてみると、距離にして一キロほど先に何かの集団が見えた。やがて姿がハッキリとしてくると、その正体はワイバーン型や小柄なゴーレム系統が十体ほど。
 さすが王都方面というべきか、普通に群れている魔物も村の近くとは訳が違うといったところか。

「まぁ……さすがに何もないまま森にたどり着けるとは思ってなかったけどね」

「王都方面に来て今更何言ってんのよ。さっさと片づけるわよ」

「先ほど新しくした杖の出番かもしれませんね!」

 少しため息交じりに肩を竦めたシノはすぐに魔動車を停止させると、先ほどよりも近づいた魔物の群れを見据えた。車から降りたリエルとセリアは既にやる気十分のようである。
 既に魔物との距離は三百メートルほどになっており、こちらを威嚇するワイバーンの声やゴーレムが歩く軽い地響きが聞こえるほどだ。

「さぁ、どこからでもかかってきなさい!」

 迫りくる魔物達に向けて、シノが鋭く言い放つ。それが合図であったかのように、魔物達は一気に距離を詰めてこちらへと襲い掛かってきた。シノが真ん中で迎え撃ち、リエルとセリアは両脇へ散開する。


「グアァァァァーッ!!!!」


 その直後、鋭い風の音と共に、杖を構えたシノめがけて三体ほどのワイバーンが飛び掛かってきた。だがもちろん、こんなことで慌てるような彼女ではない。既に詠唱を終えた杖の先を集団へと向けると、


「――――――――ストームブレイド!!!」


 先端の魔法石が輝くと同時に魔法が発動し、小さな風の刃が嵐の如く襲い掛かった。一発一発の威力はそれほどでもないようだが、数十にも及ぶ刃をまともに受けたワイバーンは両翼を切り裂かれて仰け反りながら大きく吹き飛ばされる。

 「まだまだっ!!!」

 もちろんそれだけでは終わらず、吹き飛んだ魔物を追いかけるようにシノが大きく前方へと飛んだ。再び杖に魔力を込めると、今度はそれを魔法剣のように振るってみせる。


――――――――ズバァッ!!!


 魔力で形成された刃によって一刀両断されたワイバーンは断末魔すら残さずに消滅した。そして、その光景を見て驚いているのはシノ自身のようである。

「す、凄いねこの杖……私が今まで使ってたのとはほんとに桁違いだよ……」

「驚いてる暇があったらこいつらを片付けなさいよ。リエル! そっち行ったわよ!」

 炎を宿した両手による接近戦でワイバーンと戦っていたセリアが叫んだ。村で共に依頼をこなしていた時も思ったが、やはり彼女は炎の大精霊付きなだけあって炎系統の技や魔法が得意なようである。

「分かってますよ――――――――イラプションエッジ!!!」

 二体ほどのゴーレムがリエルに接近していたが、その前に彼女は魔法を発動。炎の刃が襲い掛かり、石の身体ごとゴーレムを燃やし始める。燃えながらもリエルに近づいていたゴーレムであったが、やがて腕を振り上げようとした直後に力尽きたのか瓦解してしまう。
 これで群れの半分は片づけたので残りは半分。仲間が倒されたことに怒ったのか、残っていたワイバーン全てが一斉に突撃してきた。

「――――――――シノさん、トドメをお願いします!!!」

 リエルの声にすぐさま反応したシノは、空中から迫りくる五体のワイバーンと対峙。それらと激突するまであと数秒の余裕もなかったのだが――――――――


「フレアトルネード!!!」


 自分を中心に魔法を発動させると、巻き起こった炎の竜巻によって突撃してきたワイバーン全てが自滅する。風と炎が燃え盛る音が混ざった轟音が数秒ほど続いた後に竜巻が止むと、そこには無傷のシノが立っていた。

「ふぅ……こんなものかな」

「やりましたね!」

「あの武具屋さまさまって感じね、ほんと」

 ザッカス夫妻から譲り受けた新しい杖をさっそく試す良い機会にはなったようである。周囲に新たな魔物がいないのを確認すると、三人は改めて魔動車へと乗り込んだ。
 王都を発ってから既に一時間ほど過ぎており、シノ達が乗った魔動車は森の近くへと到着した。後ろを振り返ってみるとまだ王都が小さいながらも見えており、その巨大さが改めてわかる。

「それじゃあ、これは此処に置いておいて……っと」

 全員が降りた後にシノは車両を少し弄ると、小さな結界が発動して対象を包み込んだ。これで半日ほどは魔物を寄せ付けなくできる。
 それから改めて森の方へと目を向けた三人は、湖に掛かっている橋を渡るとその奥へあるであろう遺跡へと向かって歩き出した。
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