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第二部
59:静かなる森
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遺跡がある森の中を歩いていると、待ってましたといわんばかりに魔物達が襲い掛かってきた。この辺りは冒険者もあまり訪れないようだし、討伐もされていないのだろう。
狼のような小型から中型まで様々な魔物が木々の間から次々に飛び出してくる。そんなことは予想済みの彼女達は決して慌てることはなく、再び応戦を開始した。
数の多い虫型の魔物に対しては、リエルが風の魔法で先手を取る。
「ゲイルブラスト!」
集団の中央から爆発と共に風の刃が縦横無尽に巻き起こり、あっという間に切り刻む。その勢いを逃すまいと、魔法が収まった瞬間にセリアが後続の中型へと突進していった。
突進ということは相当な近距離から魔法をお見舞いでもするのかと思いきや、
「――――――どぉりゃぁぁーーっ!!!」
わざと相手の攻撃を誘発させて極星の盾の能力を発動し、それを逆手に取ったカウンターの物理攻撃で魔物をぶっ飛ばす。さっきまで使っていた魔法はどこにいったのだろうか。
やっぱりセリアは武闘派の戦士タイプなんじゃないだろうかと思いつつ、シノもそれに続く。
「――――――テンペスト!!!」
以前はこのレベルの魔法だと詠唱が必要だったが今のシノにはそれがほぼ不要。即座に雷の嵐が襲い掛かり魔物達に直撃し、一瞬で十匹ほどが消滅する。
これで襲い掛かってきた第一波は終わったように思えたのだが――――――――
ズズゥゥゥン……
以前にもどこかで聞いたような音が森の木々を揺らし、それらを薙ぎ倒しながらひときわ大きな影が奥から現れた。それは先ほど見かけたものとは違う大型のゴーレムであったが、クラド村周辺で見かけたものより圧倒的に大きく、大体二十メートルは超えているだろうか。
その姿を初めて見たであろうリエルは一歩退いて身構えてしまったが、セリアは全く動じていない様子だ。それどころか、逆にゴーレムへと向かっていっている。
「こ、こんなにも巨大なゴーレムがいるなんて……! 一旦距離を取りましょう、セリアさん!」
「うるさいわよ、リエル。こういうデカブツってのは――――――――」
リエルが慌てて呼びかけるも、セリアは歩みを止めることなく近づいていく。既にゴーレムは彼女らを敵として認識しており、すぐさまその巨大な腕を振りかぶって攻撃に入ろうとしていた。
この時点で回避行動を取らなければ良くて大怪我。最悪の場合だと死だってありえるのだが、
――――――ガッキィィィィィンッ……!!!
当然ながら、ゴーレムが放った渾身の一撃は彼女に通ることなくあっさりと阻まれてしまう。
その向かいで片手をかざしたままのセリアは不敵な笑みを浮かべていた。あの時は相手がシノだったから想定外だったものの、こういう時のセリアはやはり無敵といえるだろう。
「――――――――こうしてやるのが一番なのよ! バーニングインパクト!!!」
直後、彼女は全身に炎の魔力を込めると地面に思い切り踏ん張ったかと思えば、目の前のゴーレム目掛けて飛んでみせた。自らを巨大な炎の弾丸と化した突進攻撃である。
いくら相手が硬いとはいえ精霊の魔力の前には無意味だったようで、身体のど真ん中に大きな穴が穿たれた。それによって大きくバランスを崩したゴーレムだが、まだ諦めてはいないのか攻撃を再開する素振りを見せる。
しかし、その巨大な腕が再び振り上げられることはなかった。何故ならば――――――――
「重力の奔流よ、舞え――――――――グラビディボム!!!」
既にトドメの魔法をシノが詠唱し終わっており、黒い重力球が幾つも発射され巨大な身体を次々に穿っていく。命中する度に重く低い音が響き渡り、やがて完全に瓦解したゴーレムは跡形もなく消え去ってしまった。
一件落着と言わんばかりに一息付くと散らばっている魔結晶を拾い集め、三人は更に奥を目指して歩き出す。
「もしかして、この辺りがそうなんでしょうか?」
「人工物っぽいのが見えるし……ここがまさに祭壇なのかもね」
「精霊って冠した名前の割りには飾りっ気のない造りね。遺跡って規模でもいいのに、祭壇と称されてるのも頷けるわ」
十分ほど進んで見えてきたのは、石造りの人工物の数々。見るからに老朽化しておりあちこちが崩れかかっているのがわかる。恐らくここだとは思うのだが、セリアがぼやいているようにどこにでもありそうな建築だ。
元はドーム型をしていたであろう直径二十メートルほどの崩れかかった建物がそびえており、他にはちらほらと石碑のようなものが見える。
「中央にあるのは台座か何かかな?」
崩れてこないように警戒しながら建物内へと入ったシノの目に映ったのは、他の場所とは違って綺麗さを保っている円形の場所。
真白い石のようなもので造られたそこだけ、周囲とは何か違う雰囲気を放っているのが感じ取れた。
他に気になるところもないし、とりあえず調べてみようと思ったシノが足を踏み入れる。と、その瞬間――――――――
――――――キィィンッ……!
硝子を弾いたような鋭く澄んだ音が辺りに響き渡り、シノを含めた全員が驚いてその動きを止めた。
急いで周囲を見回してみるが、何かが起こっている感じはない。シノは首を傾げていたが、
「……! シノさん、祭壇の方を見てください!」
リエルの言葉に気付いて真白い祭壇の方を向いてみると、再び驚いて目を見開く。何もなかった円形の中心に光が集まり始めており、それはどう見ても人の形をとろうとしていたのだ。
「……光の中から誰か出てくるよ。注意して、二人とも」
三人がそれぞれ身構える中、集まった光は一度だけ大きく瞬くと、完全に人の姿へと変化する。光が晴れた後、地面から少し離れた位置に浮かんでいたのは一人の若い女性であった。
腰まで伸びたウェーブのかかった金と銀の入り混じった綺麗な髪に、透き通るような青い瞳。服装は、絵本などでよく見る天使のそれによく似ており、半透明の羽衣を羽織っている。
優しげな眼差しで三人を見下ろしていたその女性はやがて口を開くと、静かな声でこう言ったのであった。
「……あなたが来るのを待っていました。良き強さを知る者よ」
狼のような小型から中型まで様々な魔物が木々の間から次々に飛び出してくる。そんなことは予想済みの彼女達は決して慌てることはなく、再び応戦を開始した。
数の多い虫型の魔物に対しては、リエルが風の魔法で先手を取る。
「ゲイルブラスト!」
集団の中央から爆発と共に風の刃が縦横無尽に巻き起こり、あっという間に切り刻む。その勢いを逃すまいと、魔法が収まった瞬間にセリアが後続の中型へと突進していった。
突進ということは相当な近距離から魔法をお見舞いでもするのかと思いきや、
「――――――どぉりゃぁぁーーっ!!!」
わざと相手の攻撃を誘発させて極星の盾の能力を発動し、それを逆手に取ったカウンターの物理攻撃で魔物をぶっ飛ばす。さっきまで使っていた魔法はどこにいったのだろうか。
やっぱりセリアは武闘派の戦士タイプなんじゃないだろうかと思いつつ、シノもそれに続く。
「――――――テンペスト!!!」
以前はこのレベルの魔法だと詠唱が必要だったが今のシノにはそれがほぼ不要。即座に雷の嵐が襲い掛かり魔物達に直撃し、一瞬で十匹ほどが消滅する。
これで襲い掛かってきた第一波は終わったように思えたのだが――――――――
ズズゥゥゥン……
以前にもどこかで聞いたような音が森の木々を揺らし、それらを薙ぎ倒しながらひときわ大きな影が奥から現れた。それは先ほど見かけたものとは違う大型のゴーレムであったが、クラド村周辺で見かけたものより圧倒的に大きく、大体二十メートルは超えているだろうか。
その姿を初めて見たであろうリエルは一歩退いて身構えてしまったが、セリアは全く動じていない様子だ。それどころか、逆にゴーレムへと向かっていっている。
「こ、こんなにも巨大なゴーレムがいるなんて……! 一旦距離を取りましょう、セリアさん!」
「うるさいわよ、リエル。こういうデカブツってのは――――――――」
リエルが慌てて呼びかけるも、セリアは歩みを止めることなく近づいていく。既にゴーレムは彼女らを敵として認識しており、すぐさまその巨大な腕を振りかぶって攻撃に入ろうとしていた。
この時点で回避行動を取らなければ良くて大怪我。最悪の場合だと死だってありえるのだが、
――――――ガッキィィィィィンッ……!!!
当然ながら、ゴーレムが放った渾身の一撃は彼女に通ることなくあっさりと阻まれてしまう。
その向かいで片手をかざしたままのセリアは不敵な笑みを浮かべていた。あの時は相手がシノだったから想定外だったものの、こういう時のセリアはやはり無敵といえるだろう。
「――――――――こうしてやるのが一番なのよ! バーニングインパクト!!!」
直後、彼女は全身に炎の魔力を込めると地面に思い切り踏ん張ったかと思えば、目の前のゴーレム目掛けて飛んでみせた。自らを巨大な炎の弾丸と化した突進攻撃である。
いくら相手が硬いとはいえ精霊の魔力の前には無意味だったようで、身体のど真ん中に大きな穴が穿たれた。それによって大きくバランスを崩したゴーレムだが、まだ諦めてはいないのか攻撃を再開する素振りを見せる。
しかし、その巨大な腕が再び振り上げられることはなかった。何故ならば――――――――
「重力の奔流よ、舞え――――――――グラビディボム!!!」
既にトドメの魔法をシノが詠唱し終わっており、黒い重力球が幾つも発射され巨大な身体を次々に穿っていく。命中する度に重く低い音が響き渡り、やがて完全に瓦解したゴーレムは跡形もなく消え去ってしまった。
一件落着と言わんばかりに一息付くと散らばっている魔結晶を拾い集め、三人は更に奥を目指して歩き出す。
「もしかして、この辺りがそうなんでしょうか?」
「人工物っぽいのが見えるし……ここがまさに祭壇なのかもね」
「精霊って冠した名前の割りには飾りっ気のない造りね。遺跡って規模でもいいのに、祭壇と称されてるのも頷けるわ」
十分ほど進んで見えてきたのは、石造りの人工物の数々。見るからに老朽化しておりあちこちが崩れかかっているのがわかる。恐らくここだとは思うのだが、セリアがぼやいているようにどこにでもありそうな建築だ。
元はドーム型をしていたであろう直径二十メートルほどの崩れかかった建物がそびえており、他にはちらほらと石碑のようなものが見える。
「中央にあるのは台座か何かかな?」
崩れてこないように警戒しながら建物内へと入ったシノの目に映ったのは、他の場所とは違って綺麗さを保っている円形の場所。
真白い石のようなもので造られたそこだけ、周囲とは何か違う雰囲気を放っているのが感じ取れた。
他に気になるところもないし、とりあえず調べてみようと思ったシノが足を踏み入れる。と、その瞬間――――――――
――――――キィィンッ……!
硝子を弾いたような鋭く澄んだ音が辺りに響き渡り、シノを含めた全員が驚いてその動きを止めた。
急いで周囲を見回してみるが、何かが起こっている感じはない。シノは首を傾げていたが、
「……! シノさん、祭壇の方を見てください!」
リエルの言葉に気付いて真白い祭壇の方を向いてみると、再び驚いて目を見開く。何もなかった円形の中心に光が集まり始めており、それはどう見ても人の形をとろうとしていたのだ。
「……光の中から誰か出てくるよ。注意して、二人とも」
三人がそれぞれ身構える中、集まった光は一度だけ大きく瞬くと、完全に人の姿へと変化する。光が晴れた後、地面から少し離れた位置に浮かんでいたのは一人の若い女性であった。
腰まで伸びたウェーブのかかった金と銀の入り混じった綺麗な髪に、透き通るような青い瞳。服装は、絵本などでよく見る天使のそれによく似ており、半透明の羽衣を羽織っている。
優しげな眼差しで三人を見下ろしていたその女性はやがて口を開くと、静かな声でこう言ったのであった。
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