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16 多忙
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『東京』
『関東』
『スポット』
『最強』
最近、五十嵐がネットでよく検索する言葉だ。それら単語の前に必ず打ち込むのが、
『厄払い』
五十嵐は今度の本田の休みには、彼を厄払いのご利益で有名な神社に連れて行こうかと真剣に悩んでいる。
今なら分かる。あの時、俳優の西野を病院に搬送してくれた救命隊員が言っていた意味が。
「ちゃんと一回、お祓いとかした方がいいですよ」
あの時は何を言っているんだろうと五十嵐は半信半疑だったが、彼が指摘したように、本田がそういった場面に巻き込まれる回数の多さは異常だった。
西野の入院騒ぎから程なくして。『今から帰るから、今日は焼肉に行こう』と本田からメールがきた日があった。だが予定の時間を過ぎてもなかなか当の本人が帰って来ない。何かあったのかと五十嵐が気を揉んで待っていると、1時間も経ってからようやく連絡がついた。その時の言い分が、
「帰り道の途中で、急に目の前の人が倒れたんだ。心肺停止だったよ。今まで救急車の中で手伝って蘇生していたんだけど、何とかさっき脈が回復したから。今から本当に帰るよ」
また別の日には、二人で寿司屋で食事をしていると、カウンターの隅に座っていた熟年の男性がいきなり机の上をバンバンと叩き始めた。口をパクパクさせながら喉を掴んで、息ができないと訴えている。
本田は素早く立ち上がって男の背後に回り、みぞおち辺りに腕を回して腹部突き上げ法で彼の喉に詰まっていた寿司の塊を取り除いてやった。この時は救急車を呼ばなくて済んだが、そのあとは助けた男と店の大将に大袈裟に感謝されて、とても落ち着いて食事をする状況ではなくなってしまった。
それだけではない。このところ本田は休む暇がないほど忙しいのだ。帰る間際に大量の急患が運び込まれたり、緊急の宿直だ、学会だといって、休日が潰れることも多い。二人でゆっくり出来る時間がめっきり減り、夜、一緒の部屋にいても別々にパソコンで仕事をすることが増えた。
変わらず同じベッドで寝てはいるので、日々の細かなスキンシップは欠かさないが、いわゆる本当の意味で、まだ最後まで繋がれてはいなかった。疲れの見える本田に無理強いはできないし、何より軽く愛撫を繰り返すだけで気持ちよさそうに眠ってしまうのだ。
もちろんセックスが全てではないけれど、肉体的繋がりが、精神的繋がりをより強くするとも考えている。しかも本田も、ようやく心の準備ができたようなのに……
そんな、手に入りそうで手に入らない『蛇の生殺し』状態に、五十嵐は日々悶々としていた。蓄積され続けた昂ぶりが、まるで熾火のようにずっと体の中で燻っているのだ。
次の本田の休みは明後日だ。
最近ちゃんとした休息を取れていない本田の体調のためにも、「どうか邪魔が入りませんように」と五十嵐は心の底から願った。
「私が医者になろうと思った切っ掛け?」
五十嵐が調理したカンパチのカルパッチョに手を伸ばし、トングで皿に取り分けながら本田は聞き返した。
「そう。ショウの親父さんは生物学者だから、別に家を継ぐってわけでもないだろ? まあ、関連がないわけでもないんだろうけど、その、病院みたいな継がなきゃいけない『箱もの』があるわけじゃなし。飛び級して14、15歳だっけ? そんな若い歳でなぜ、医学校に進もうと決めたのかなって」
ずっと疑問だったことを、五十嵐は今夜のメインであるラザニアを切り分けてやりながら聞いた。もちろん焼く手前まで作ったのはバーのシェフだ。残り物を入れただけですと言っていたので、具は一般的なボロネーゼとベシャメルソースを交互に重ねたボローニャ風ではなく、ナポリ風。半端に余ったミートボール、イタリアのソーセージである『サルシッチャ』、そこにゆで卵とリコッタなどのチーズ、ラグーソースが重ねて入っている。五十嵐は賄いのそれをキャセロールごと頂戴してきて、食べる直前にオーブンに入れただけだ。
「明日の休みはようやくゆっくり出来そうだから」
帰宅後、そう言ってやんわり微笑んだ本田に、五十嵐は、
「じゃあ今夜は外に出ずに、家でゆっくり食事にしよう。明日も1日、特に何もしなくていいし。気が向いたら、天気次第でドライブに出てもいいけどな」
と提案した。下手に外出してまた厄介ごとに巻き込まれたくない。
調理しながらキッチンカウンターで、前菜のブルスケッタにフルボディの赤ワイン。このところ本田の疲れた体調を気遣ってかなりアルコールを控えていたから、久しぶりのワインが五臓六腑に染み渡る。
ダイニングテーブルにきちんと移動して着席した頃には、二人ともかなりリラックスしていた。
「そうだねぇ……あ、これコリコリしていて美味しい」
オリーブオイルの絡んだ新鮮なカンパチをベビーリーフのサラダと共に口に運びながら、本田はその食感に感嘆した。
「えっと、そうそう。切っ掛けね。私はどうも、昔からちょっと Unlucky でね。飛び級で大学に通い出した頃、目の前でひとりの Nun が心臓発作で亡くなったんだ」
「は?」
「それからも何度か、目の前で人が倒れることがあってね。その度に何とかしなきゃって、うろ覚えの応急手当で頑張ったんだけど。知識のない子供が出来ることなんて、たかが知れているじゃないか。でもあまりに頻繁におきるものだから、私も身構えてね。それなりの対処法を覚えようと EMT の Textbooks を読み始めたんだ。まあ実際のところ、その頃の私は若くて傲慢でね、人より勉強ができると自負していたから、知識不足で人ひとり助けられない事実がどうにも許せなかったんだよ。それでつい医学書まで読み漁るようになって、そうなると本だけじゃ物足りなくなって、直に人の体の内部が見てみたくなってしまったんだ。だから進学を決めたんだよ」
「……そうか。なるほど」
昔からそういう体質? だったわけだ。
五十嵐はしばらく考えて、おもむろに紙ナプキンで口元を拭った。
「すまない。ちょっと逢坂に伝えないといけないことを思い出した。少し電話してくる」
そう穏やかに断りを入れて、携帯電話を取りに席を外した。
食後はだいたいは映画や海外ドラマを観ることが多いけれど、この日はどこか二人ともソワソワしていて何を観るかなかなか決められなかった。
ソファに座ってスマートテレビで題名を検索する本田の体を、五十嵐が横から大きく抱き込むようにして引き寄せている。項にキスしたり、肩に唇を押し付けたり。五十嵐が甘い雰囲気を隠しもしないので、本田も照れて気がそぞろになっているのだ。
「先にシャワー浴びてくるから、その間にショウが決めておいて」
「え、あ、うん……」
最後に舌を絡めるような長いキスを交わして、五十嵐は立ち上がった。横目で、色っぽく俯いた本田が濡れた唇を拭っているのを見て、俄然やる気になる。
今日こそはいける!
まるで思春期の子供のように逸る気持ちを抑え込んで、五十嵐は少し熱めのシャワーを頭から被った。
初めて女を抱いた時ですら、こんなに興奮することはなかった。ただの排泄行為。そう思っていたのに。それがどうだ。胸が高鳴って、まるで童貞のように胃がキリキリと痛むぐらい緊張している。
本田は帰宅後、すぐにシャワーを浴びた。夕食は自宅で、他人との接触はなし。全てが順調だ。
しかも。五十嵐は先ほど逢坂に電話をして、今夜はバーに留まって、絶対に邪魔が入らないように全ての管理を頼むと仕事を押し付けた。彼ならどんな緊急事態でも最善の方法で対処してくれる。
問題は病院からの呼び出しだが、本田がこの2週間ほどまともな休みを取れていないことは周知の事実なので、最大限の考慮をすると約束してくれている──と本人が言っていた。
今夜は絶対に上手くいく。
五十嵐は修行僧のようにシャワーを浴びながら、小さくガッツポーズをとった。
「ん、圭吾……」
組み敷いた本田が甘く五十嵐の名を呼ぶ。互いに脱ぎ捨てたTシャツはリビングの床に散らかっていた。
倒れ込むようにしてベッドに本田を組み敷き、キスを繰り返す。平らな胸から腹筋にかけてを何度も撫で上げたら、五十嵐の背中に回された手が同じように広背筋を彷徨った。
「はあ……ん……」
脇腹から太腿、内腿を通って揶揄うように股の間を少し掠める。そしてまた胸に戻って、先にある小さな尖りを抓った。
煽るように全身を撫で回され、本田の口から艶めいた声が漏れる。
「んっ、んん」
薄い腹を伝って、再び股間へ。手のひら全体でゆっくりと上下に撫で上げると、感じたのか腰が波打ったのが分かった。
「少し尻上げて」
耳たぶを甘噛みしながら囁けば、おずおずとだが腰が浮く。スラリとした足から手際よく全ての履物を抜き取ると、五十嵐はそれをベッドの下に落とした。隠すものがなくなった本田のソコを、そっと握りしめる。嫌悪感は一切感じなかった。それどころかもっと乱れさせたくて、自分が触って気持ちいいところを親指で強めにグイッと扱いた。
「ああっ。け、圭吾……」
「もう濡れてる」
「ふぁっ」
この頃には本田もすっかりその気になって、五十嵐と快感を分かち合いたいのか必死になって口に吸いついてきた。下唇に歯を当てられ、口を開いて尖った舌を受け入れる。甘噛みするとビックリして逃げるそれを追いかけ、吸い上げて舌を絡め合った。一方通行ではないその行為に、一気に劣情が煽られた。
気持ちが良すぎて眩暈がしそうなほど頭がクラクラする。この鳩尾を締め付けるような違和感は、興奮しすぎている所為か。
本田の手が、自分ばかり全裸のまま乱れるのは嫌だとばかりに、五十嵐のズボンのウエスト部分を掴んだ。せっかちに押し下げようとするその骨ばった細い指に自分の指を絡め、
「……っ」
五十嵐は、しかし男に馬乗りになったまま固まった。
「? 圭吾?」
「ちょっと……」
「え、あっ、圭吾?!」
驚いて上半身を起こしかけた本田を置き去りに、五十嵐は猛ダッシュでバスルームに駆け込んだ。
『関東』
『スポット』
『最強』
最近、五十嵐がネットでよく検索する言葉だ。それら単語の前に必ず打ち込むのが、
『厄払い』
五十嵐は今度の本田の休みには、彼を厄払いのご利益で有名な神社に連れて行こうかと真剣に悩んでいる。
今なら分かる。あの時、俳優の西野を病院に搬送してくれた救命隊員が言っていた意味が。
「ちゃんと一回、お祓いとかした方がいいですよ」
あの時は何を言っているんだろうと五十嵐は半信半疑だったが、彼が指摘したように、本田がそういった場面に巻き込まれる回数の多さは異常だった。
西野の入院騒ぎから程なくして。『今から帰るから、今日は焼肉に行こう』と本田からメールがきた日があった。だが予定の時間を過ぎてもなかなか当の本人が帰って来ない。何かあったのかと五十嵐が気を揉んで待っていると、1時間も経ってからようやく連絡がついた。その時の言い分が、
「帰り道の途中で、急に目の前の人が倒れたんだ。心肺停止だったよ。今まで救急車の中で手伝って蘇生していたんだけど、何とかさっき脈が回復したから。今から本当に帰るよ」
また別の日には、二人で寿司屋で食事をしていると、カウンターの隅に座っていた熟年の男性がいきなり机の上をバンバンと叩き始めた。口をパクパクさせながら喉を掴んで、息ができないと訴えている。
本田は素早く立ち上がって男の背後に回り、みぞおち辺りに腕を回して腹部突き上げ法で彼の喉に詰まっていた寿司の塊を取り除いてやった。この時は救急車を呼ばなくて済んだが、そのあとは助けた男と店の大将に大袈裟に感謝されて、とても落ち着いて食事をする状況ではなくなってしまった。
それだけではない。このところ本田は休む暇がないほど忙しいのだ。帰る間際に大量の急患が運び込まれたり、緊急の宿直だ、学会だといって、休日が潰れることも多い。二人でゆっくり出来る時間がめっきり減り、夜、一緒の部屋にいても別々にパソコンで仕事をすることが増えた。
変わらず同じベッドで寝てはいるので、日々の細かなスキンシップは欠かさないが、いわゆる本当の意味で、まだ最後まで繋がれてはいなかった。疲れの見える本田に無理強いはできないし、何より軽く愛撫を繰り返すだけで気持ちよさそうに眠ってしまうのだ。
もちろんセックスが全てではないけれど、肉体的繋がりが、精神的繋がりをより強くするとも考えている。しかも本田も、ようやく心の準備ができたようなのに……
そんな、手に入りそうで手に入らない『蛇の生殺し』状態に、五十嵐は日々悶々としていた。蓄積され続けた昂ぶりが、まるで熾火のようにずっと体の中で燻っているのだ。
次の本田の休みは明後日だ。
最近ちゃんとした休息を取れていない本田の体調のためにも、「どうか邪魔が入りませんように」と五十嵐は心の底から願った。
「私が医者になろうと思った切っ掛け?」
五十嵐が調理したカンパチのカルパッチョに手を伸ばし、トングで皿に取り分けながら本田は聞き返した。
「そう。ショウの親父さんは生物学者だから、別に家を継ぐってわけでもないだろ? まあ、関連がないわけでもないんだろうけど、その、病院みたいな継がなきゃいけない『箱もの』があるわけじゃなし。飛び級して14、15歳だっけ? そんな若い歳でなぜ、医学校に進もうと決めたのかなって」
ずっと疑問だったことを、五十嵐は今夜のメインであるラザニアを切り分けてやりながら聞いた。もちろん焼く手前まで作ったのはバーのシェフだ。残り物を入れただけですと言っていたので、具は一般的なボロネーゼとベシャメルソースを交互に重ねたボローニャ風ではなく、ナポリ風。半端に余ったミートボール、イタリアのソーセージである『サルシッチャ』、そこにゆで卵とリコッタなどのチーズ、ラグーソースが重ねて入っている。五十嵐は賄いのそれをキャセロールごと頂戴してきて、食べる直前にオーブンに入れただけだ。
「明日の休みはようやくゆっくり出来そうだから」
帰宅後、そう言ってやんわり微笑んだ本田に、五十嵐は、
「じゃあ今夜は外に出ずに、家でゆっくり食事にしよう。明日も1日、特に何もしなくていいし。気が向いたら、天気次第でドライブに出てもいいけどな」
と提案した。下手に外出してまた厄介ごとに巻き込まれたくない。
調理しながらキッチンカウンターで、前菜のブルスケッタにフルボディの赤ワイン。このところ本田の疲れた体調を気遣ってかなりアルコールを控えていたから、久しぶりのワインが五臓六腑に染み渡る。
ダイニングテーブルにきちんと移動して着席した頃には、二人ともかなりリラックスしていた。
「そうだねぇ……あ、これコリコリしていて美味しい」
オリーブオイルの絡んだ新鮮なカンパチをベビーリーフのサラダと共に口に運びながら、本田はその食感に感嘆した。
「えっと、そうそう。切っ掛けね。私はどうも、昔からちょっと Unlucky でね。飛び級で大学に通い出した頃、目の前でひとりの Nun が心臓発作で亡くなったんだ」
「は?」
「それからも何度か、目の前で人が倒れることがあってね。その度に何とかしなきゃって、うろ覚えの応急手当で頑張ったんだけど。知識のない子供が出来ることなんて、たかが知れているじゃないか。でもあまりに頻繁におきるものだから、私も身構えてね。それなりの対処法を覚えようと EMT の Textbooks を読み始めたんだ。まあ実際のところ、その頃の私は若くて傲慢でね、人より勉強ができると自負していたから、知識不足で人ひとり助けられない事実がどうにも許せなかったんだよ。それでつい医学書まで読み漁るようになって、そうなると本だけじゃ物足りなくなって、直に人の体の内部が見てみたくなってしまったんだ。だから進学を決めたんだよ」
「……そうか。なるほど」
昔からそういう体質? だったわけだ。
五十嵐はしばらく考えて、おもむろに紙ナプキンで口元を拭った。
「すまない。ちょっと逢坂に伝えないといけないことを思い出した。少し電話してくる」
そう穏やかに断りを入れて、携帯電話を取りに席を外した。
食後はだいたいは映画や海外ドラマを観ることが多いけれど、この日はどこか二人ともソワソワしていて何を観るかなかなか決められなかった。
ソファに座ってスマートテレビで題名を検索する本田の体を、五十嵐が横から大きく抱き込むようにして引き寄せている。項にキスしたり、肩に唇を押し付けたり。五十嵐が甘い雰囲気を隠しもしないので、本田も照れて気がそぞろになっているのだ。
「先にシャワー浴びてくるから、その間にショウが決めておいて」
「え、あ、うん……」
最後に舌を絡めるような長いキスを交わして、五十嵐は立ち上がった。横目で、色っぽく俯いた本田が濡れた唇を拭っているのを見て、俄然やる気になる。
今日こそはいける!
まるで思春期の子供のように逸る気持ちを抑え込んで、五十嵐は少し熱めのシャワーを頭から被った。
初めて女を抱いた時ですら、こんなに興奮することはなかった。ただの排泄行為。そう思っていたのに。それがどうだ。胸が高鳴って、まるで童貞のように胃がキリキリと痛むぐらい緊張している。
本田は帰宅後、すぐにシャワーを浴びた。夕食は自宅で、他人との接触はなし。全てが順調だ。
しかも。五十嵐は先ほど逢坂に電話をして、今夜はバーに留まって、絶対に邪魔が入らないように全ての管理を頼むと仕事を押し付けた。彼ならどんな緊急事態でも最善の方法で対処してくれる。
問題は病院からの呼び出しだが、本田がこの2週間ほどまともな休みを取れていないことは周知の事実なので、最大限の考慮をすると約束してくれている──と本人が言っていた。
今夜は絶対に上手くいく。
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「ん、圭吾……」
組み敷いた本田が甘く五十嵐の名を呼ぶ。互いに脱ぎ捨てたTシャツはリビングの床に散らかっていた。
倒れ込むようにしてベッドに本田を組み敷き、キスを繰り返す。平らな胸から腹筋にかけてを何度も撫で上げたら、五十嵐の背中に回された手が同じように広背筋を彷徨った。
「はあ……ん……」
脇腹から太腿、内腿を通って揶揄うように股の間を少し掠める。そしてまた胸に戻って、先にある小さな尖りを抓った。
煽るように全身を撫で回され、本田の口から艶めいた声が漏れる。
「んっ、んん」
薄い腹を伝って、再び股間へ。手のひら全体でゆっくりと上下に撫で上げると、感じたのか腰が波打ったのが分かった。
「少し尻上げて」
耳たぶを甘噛みしながら囁けば、おずおずとだが腰が浮く。スラリとした足から手際よく全ての履物を抜き取ると、五十嵐はそれをベッドの下に落とした。隠すものがなくなった本田のソコを、そっと握りしめる。嫌悪感は一切感じなかった。それどころかもっと乱れさせたくて、自分が触って気持ちいいところを親指で強めにグイッと扱いた。
「ああっ。け、圭吾……」
「もう濡れてる」
「ふぁっ」
この頃には本田もすっかりその気になって、五十嵐と快感を分かち合いたいのか必死になって口に吸いついてきた。下唇に歯を当てられ、口を開いて尖った舌を受け入れる。甘噛みするとビックリして逃げるそれを追いかけ、吸い上げて舌を絡め合った。一方通行ではないその行為に、一気に劣情が煽られた。
気持ちが良すぎて眩暈がしそうなほど頭がクラクラする。この鳩尾を締め付けるような違和感は、興奮しすぎている所為か。
本田の手が、自分ばかり全裸のまま乱れるのは嫌だとばかりに、五十嵐のズボンのウエスト部分を掴んだ。せっかちに押し下げようとするその骨ばった細い指に自分の指を絡め、
「……っ」
五十嵐は、しかし男に馬乗りになったまま固まった。
「? 圭吾?」
「ちょっと……」
「え、あっ、圭吾?!」
驚いて上半身を起こしかけた本田を置き去りに、五十嵐は猛ダッシュでバスルームに駆け込んだ。
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