31 / 46
揺れる想い…真実と想いのはざまで…⑨
しおりを挟む
三日間の休みの間、店長の奥様が私の食事を作りに通ってくれて、3日目頃からすっかり元気になっていた。
森野さんからはあれ以来電話が来ることが無く…、会いたさが募ってしまう。
そんな中、毎日、毎日、出勤できる日を指折り数えていた。
4日目にやっと出勤すると、木月さんや他の売り場の人から物凄く心配したと声を掛けられた。心配してくれる気持ちは有難いけど、私の心は森野さんに会いたい気持ちでいっぱいだった。
心配してくれる人達への報告が終わり、私はやっと森野さんに会えると売り場に小走りで向かう。ストック置き場に着くと、森野さんがいつものように本店からの書類に目を通していた。
「おはようございます」
声を掛けると、森野さんがゆっくりと視線を私へと向ける。
「おはよう」
そう答えると、森野さんはいつものように視線を書類へと戻す。
「三日間、すみませんでした。それから…色々とありがとうございました。」
お辞儀した私に、森野さんは視線も向けずに
「嫌、気にしないで…。それより、売り場掃除…して来てくれる?」
って、いつも通りの態度だった。
(優しかったのはあの日だけか…)
がっかりした気持ちで売り場へ行き、掃除を始める。
でも…森野さんの態度はこの日からガラリと変わってしまう。
「もう、一人で仕事出来るよな」
と言われて、私は半ば強引に一人立ちさせられてしまったのだ。
今までずっと、なんだかんだと世話を焼いてくれていたのに、急に私に距離を置くようになってしまった。私にはそれが辛くて悲しくて…。
(何で?私…何かしたの?)
グルグルと毎日毎日悩んでいた。
森野さんに話しかけようとしても、その背中は私を拒否しているかのように見えた。森野さんと会話をしなくなって一週間が経過した頃
「ねぇ、森野君と何かあった?」
杉野チーフに声を掛けられる。
「分からないんです。ただ、あの日から急に避けだして…」
落ち込んで答えた私に
「直接、森野君に聞いてみたら?」
杉野チーフの言葉に胸が痛くなる。
「嫌われたのかもしれないって悩んでるより、直接聞いて答えをもらったら?
言わない後悔より、言って後悔した方が良いよ」
杉野チーフはそう言うと、私の背中をそっと押す。
「この時間、森野君はいつもの場所で休憩取ってる筈だから」
そう言って杉野チーフは軽くウインクした。
(うじうじ悩む位なら…当たって砕けるしかない!)
覚悟を決めて、私は倉庫の屋上へと駆け上った。
すると屋上から声が聞こえて来る。
誰かと話してるのかな?と、私は声が聞こえた場所からゆっくり階段を上るようにして屋上のドアをそっと開けた。
そこには、夕暮れに色が変わり始めた空を見上げて歌を唄う森野さんの姿があった。私はその歌を聴いて、足が震え始める。
(この声は…この歌は…)
聞き間違える筈が無い。
CDにも入っていないBlue Moonの楽曲。
あの日、初めて心を鷲掴みにされたあの歌だった。
(何で?どうしてあの歌を…森野さんが歌ってるの?しかもこの声…歌い方は…)
愕然とする私の耳に
「もう…歌わないって決めたのにな…」
自嘲するような森野さんの声が聞こえた。
空に手を伸ばし
「なぁ…どうしてあいつなんだよ。どうして今更…。」
苦しそうに呟く森野さんの声が聞こえて来る。私はその声に胸が苦しくて、切なくなってしまった。
そして気が付くと、自分の瞳から涙が溢れていた。
(やっぱり…森野さんがカケルさんだったんだ)
今となっては、別人であって欲しかったと思う。カケルさんは…あのスポットライトの中に居るべき人。
私が幼心に惹かれたのは、あの神々しいまでの美しオーラを纏った彼の姿と、まるで神様から授かったような美しい歌声。
森野さんがカケルさんだとしたら…私の手の届かない人だと思い知らされた気持ちになった。そしてその時、やっと私は気が付いた。
あの日、私の部屋でCDを見た森野さんが動揺した理由(わけ)を…。
漏れそうになる嗚咽を堪え、私は森野さんに気付かれないように、そっとその場を後にした。
森野さんからはあれ以来電話が来ることが無く…、会いたさが募ってしまう。
そんな中、毎日、毎日、出勤できる日を指折り数えていた。
4日目にやっと出勤すると、木月さんや他の売り場の人から物凄く心配したと声を掛けられた。心配してくれる気持ちは有難いけど、私の心は森野さんに会いたい気持ちでいっぱいだった。
心配してくれる人達への報告が終わり、私はやっと森野さんに会えると売り場に小走りで向かう。ストック置き場に着くと、森野さんがいつものように本店からの書類に目を通していた。
「おはようございます」
声を掛けると、森野さんがゆっくりと視線を私へと向ける。
「おはよう」
そう答えると、森野さんはいつものように視線を書類へと戻す。
「三日間、すみませんでした。それから…色々とありがとうございました。」
お辞儀した私に、森野さんは視線も向けずに
「嫌、気にしないで…。それより、売り場掃除…して来てくれる?」
って、いつも通りの態度だった。
(優しかったのはあの日だけか…)
がっかりした気持ちで売り場へ行き、掃除を始める。
でも…森野さんの態度はこの日からガラリと変わってしまう。
「もう、一人で仕事出来るよな」
と言われて、私は半ば強引に一人立ちさせられてしまったのだ。
今までずっと、なんだかんだと世話を焼いてくれていたのに、急に私に距離を置くようになってしまった。私にはそれが辛くて悲しくて…。
(何で?私…何かしたの?)
グルグルと毎日毎日悩んでいた。
森野さんに話しかけようとしても、その背中は私を拒否しているかのように見えた。森野さんと会話をしなくなって一週間が経過した頃
「ねぇ、森野君と何かあった?」
杉野チーフに声を掛けられる。
「分からないんです。ただ、あの日から急に避けだして…」
落ち込んで答えた私に
「直接、森野君に聞いてみたら?」
杉野チーフの言葉に胸が痛くなる。
「嫌われたのかもしれないって悩んでるより、直接聞いて答えをもらったら?
言わない後悔より、言って後悔した方が良いよ」
杉野チーフはそう言うと、私の背中をそっと押す。
「この時間、森野君はいつもの場所で休憩取ってる筈だから」
そう言って杉野チーフは軽くウインクした。
(うじうじ悩む位なら…当たって砕けるしかない!)
覚悟を決めて、私は倉庫の屋上へと駆け上った。
すると屋上から声が聞こえて来る。
誰かと話してるのかな?と、私は声が聞こえた場所からゆっくり階段を上るようにして屋上のドアをそっと開けた。
そこには、夕暮れに色が変わり始めた空を見上げて歌を唄う森野さんの姿があった。私はその歌を聴いて、足が震え始める。
(この声は…この歌は…)
聞き間違える筈が無い。
CDにも入っていないBlue Moonの楽曲。
あの日、初めて心を鷲掴みにされたあの歌だった。
(何で?どうしてあの歌を…森野さんが歌ってるの?しかもこの声…歌い方は…)
愕然とする私の耳に
「もう…歌わないって決めたのにな…」
自嘲するような森野さんの声が聞こえた。
空に手を伸ばし
「なぁ…どうしてあいつなんだよ。どうして今更…。」
苦しそうに呟く森野さんの声が聞こえて来る。私はその声に胸が苦しくて、切なくなってしまった。
そして気が付くと、自分の瞳から涙が溢れていた。
(やっぱり…森野さんがカケルさんだったんだ)
今となっては、別人であって欲しかったと思う。カケルさんは…あのスポットライトの中に居るべき人。
私が幼心に惹かれたのは、あの神々しいまでの美しオーラを纏った彼の姿と、まるで神様から授かったような美しい歌声。
森野さんがカケルさんだとしたら…私の手の届かない人だと思い知らされた気持ちになった。そしてその時、やっと私は気が付いた。
あの日、私の部屋でCDを見た森野さんが動揺した理由(わけ)を…。
漏れそうになる嗚咽を堪え、私は森野さんに気付かれないように、そっとその場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない
白神ブナ
恋愛
高校一年一学期から三年三学期まで続く長編です。気になるサブタイトルを見つけて途中からでもお楽しみいただけます。
女子校あるあると、先生あるある、受験あるあるを描く学園恋愛ドラマ。
佐藤サトシは30歳の独身高校教師。
一度は公立高校の教師だったが心が折れて転職し、私立白金女子学園にやって来た。
一年A組の受け持つことになったサトシ先生。
その中の一人、桜井美柑はガチでサトシ先生に恋してしまった。
サトシ先生は、桜井美柑という生徒の存在を意識してしまいつつ、あくまで職務に忠実であろうと必死に適度な距離を保とうとするが……
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
夜の帝王の一途な愛
ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。
ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。
翻弄される結城あゆみ。
そんな凌には誰にも言えない秘密があった。
あゆみの運命は……
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる