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光のもとへ…④
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「で、誰が誰となら相応しいって?」
地の底を這うような声に、私以外が全員固まる。
声の方を見ると、激怒した顔の森野さんが立っていた。
「あ…王子ぃ~、居たんですかぁ~」
急に、鼻に掛かる声で横溝さんが森野さんに近付いて行く。
森野さんは冷めた目で、自分に擦り寄る横溝さん達を見ていた。
私は、あんなに怖い顔をした森野さんを見たのは初めてだった。
「別にさ、あんたらが俺をどう呼ぼうが、どう思おうが勝手だよ。好きにすれば良い。だけどな、関係無い柊に八つ当たりするのは止めてくれないかな?」
冷静に淡々と呟くから、尚更怖さが倍増される。
横溝さんは、それでも必死に食らいつき
「だって!何度告白しても、美嘉と付き合ってくれないじゃない!」
そう叫んだのだ。
(何度も告白してたんだ…!)
衝撃の事実にびっくりしていると、森野さんは顔色1つ変えず
「好みじゃねぇからな。俺はな、職場のルールに従わないで自己主張ばかりする奴が大嫌いなんだよ!」
冷ややかな視線を向けたまま彼女に言い放った。
横溝さんは好きじゃないけど、森野さんの言葉にみるみる顔色を青くさせて、涙を浮かべている姿は見ていて痛々しい。
多分、森野さんはトドメを指そうとしたんだと思う。
森野さんが口を開き掛けたのを見て
「もう、止めましょう!」
と、私は必死に叫んだ。
「横溝さんも、他の人も反省してると思うんです。それに、私は何とも思っていないですし…」
森野さんを見て、私は必死に叫んだ。
それでも森野さんが何か言いたげな顔をしたけど、私は首を横に振って静止した。
すると森野さんは深いため息を吐いて
「柊に免じて、今回の事は水に流してやる。但し、2度目は無いからな!」
そう言うと、彼女達をかき分けて私の腕を掴んで歩き出した。
私の腕を掴む強さが、森野さんの怒りを伝えてくれる。
それだけで嬉しかった。
ストック置き場に戻ると、杉野チーフが心配そうに待っていた。
「お前が絡まれてるって、杉野チーフが教えてくれたんだよ」
ストック置き場の椅子に、ドカッと音を立てて森野さんが座った。
すると杉野チーフが
「私が何を言っても、横溝さんは話すら聞いてくれないと思ったから…」
そう苦笑いを浮かべた。
「杉野チーフ…ありがとうございます」
思わず杉野チーフに抱き着くと、
「こらこら、お礼は森野君に言って。私は森野君を呼びに行っただけで、何もしてないんだから…」
そう言われて、思わず森野さんを見た。
頭を抱えていた森野さんと視線が合い、思わずドキリと心臓が高鳴る。
黙ったまま見つめ合っていると
「あ!私、店長に呼ばれてたんだ~」
と、白々しいセリフを吐いて、杉野チーフが逃げるように階段を降りて行ってしまう。
ストック置き場には、私と森野さんの2人きりになってしまった。
居心地が悪くて
「あの…、ありがとうございました」
取り敢えず、助けてくれたお礼を言うと、森野さんは怒った顔で私を見て
「違うだろ!俺のせいでこんな目に遭ったのに!お前がお礼を言う事じゃないだろ!」
そう叫んだ森野さんの言葉に、鈴原さんの事件を思い出した。
(そっか…、辛い事を思い出させてしまったのかな…)
「あ…悪い。お前は被害者なのに…」
思わず怒鳴ってしまった事に、森野さんは頭を抱えて再び俯いてしまう。
(あぁ…この人はずっと、こうやって自分を責めて来たんだ…)
私はそう思った瞬間、無意識に座る森野さんをそっと抱き締めていた。
抱き締めた森野さんの身体は、小さく震えていた。
怒りなのか、鈴原さんの事を思い出した恐怖からなのかは分からない。
ただ、今は森野さんを放置してはいけない気持ちになった。
「大丈夫ですよ。だって…森野さん、ちゃんと私を護ってくれたじゃないですか」
私の言葉に、森野さんを抱き締めていた私の腕を掴むと、抱き締めていた腕を解いた。
そして真剣な顔で私を見つめて
「何でお前はそう…」
言いかけて、掴んでいた腕をゆっくりと放す。
そして再び深い溜息を吐いた後
「ありがとう。あの時、お前が止めてくれなかったら、俺は横溝を徹底的に傷付けてた」
森野さんはそう言って力無く笑う。
その笑顔に胸が痛む。
苦しくて、切なくて、悲しくて…。
私はその苦しみから逃げ出したくて
「私も事務所に戻りますね」
と言うと、強い力で森野さんに腰を抱き寄せられた。
椅子に座った状態の森野さんの頭が、私のお腹に当てられる。
「悪い。嫌かもしれないけど…、あと少しだけ、このままでいさせてくれ」
そう呟いた森野さんの言葉に、涙が溢れそうになる。
私は今、鈴原さんの代わりなのかもしれない。
森野さんへの想いが溢れそうになるのを必死に堪えて、目の前に見える森野さんの髪の毛に触れた。
硬いサラサラの髪の毛に触れると、一瞬、森野さんの身体がビクっと震えた。好きで好きで…大好きだけど遠い人。
私の想いは、森野さんにとっては迷惑なだけだと分かっている。
だからせめて、この瞬間だけでも森野さんの心を護れていますようにと祈る事しか出来ずにいた。
地の底を這うような声に、私以外が全員固まる。
声の方を見ると、激怒した顔の森野さんが立っていた。
「あ…王子ぃ~、居たんですかぁ~」
急に、鼻に掛かる声で横溝さんが森野さんに近付いて行く。
森野さんは冷めた目で、自分に擦り寄る横溝さん達を見ていた。
私は、あんなに怖い顔をした森野さんを見たのは初めてだった。
「別にさ、あんたらが俺をどう呼ぼうが、どう思おうが勝手だよ。好きにすれば良い。だけどな、関係無い柊に八つ当たりするのは止めてくれないかな?」
冷静に淡々と呟くから、尚更怖さが倍増される。
横溝さんは、それでも必死に食らいつき
「だって!何度告白しても、美嘉と付き合ってくれないじゃない!」
そう叫んだのだ。
(何度も告白してたんだ…!)
衝撃の事実にびっくりしていると、森野さんは顔色1つ変えず
「好みじゃねぇからな。俺はな、職場のルールに従わないで自己主張ばかりする奴が大嫌いなんだよ!」
冷ややかな視線を向けたまま彼女に言い放った。
横溝さんは好きじゃないけど、森野さんの言葉にみるみる顔色を青くさせて、涙を浮かべている姿は見ていて痛々しい。
多分、森野さんはトドメを指そうとしたんだと思う。
森野さんが口を開き掛けたのを見て
「もう、止めましょう!」
と、私は必死に叫んだ。
「横溝さんも、他の人も反省してると思うんです。それに、私は何とも思っていないですし…」
森野さんを見て、私は必死に叫んだ。
それでも森野さんが何か言いたげな顔をしたけど、私は首を横に振って静止した。
すると森野さんは深いため息を吐いて
「柊に免じて、今回の事は水に流してやる。但し、2度目は無いからな!」
そう言うと、彼女達をかき分けて私の腕を掴んで歩き出した。
私の腕を掴む強さが、森野さんの怒りを伝えてくれる。
それだけで嬉しかった。
ストック置き場に戻ると、杉野チーフが心配そうに待っていた。
「お前が絡まれてるって、杉野チーフが教えてくれたんだよ」
ストック置き場の椅子に、ドカッと音を立てて森野さんが座った。
すると杉野チーフが
「私が何を言っても、横溝さんは話すら聞いてくれないと思ったから…」
そう苦笑いを浮かべた。
「杉野チーフ…ありがとうございます」
思わず杉野チーフに抱き着くと、
「こらこら、お礼は森野君に言って。私は森野君を呼びに行っただけで、何もしてないんだから…」
そう言われて、思わず森野さんを見た。
頭を抱えていた森野さんと視線が合い、思わずドキリと心臓が高鳴る。
黙ったまま見つめ合っていると
「あ!私、店長に呼ばれてたんだ~」
と、白々しいセリフを吐いて、杉野チーフが逃げるように階段を降りて行ってしまう。
ストック置き場には、私と森野さんの2人きりになってしまった。
居心地が悪くて
「あの…、ありがとうございました」
取り敢えず、助けてくれたお礼を言うと、森野さんは怒った顔で私を見て
「違うだろ!俺のせいでこんな目に遭ったのに!お前がお礼を言う事じゃないだろ!」
そう叫んだ森野さんの言葉に、鈴原さんの事件を思い出した。
(そっか…、辛い事を思い出させてしまったのかな…)
「あ…悪い。お前は被害者なのに…」
思わず怒鳴ってしまった事に、森野さんは頭を抱えて再び俯いてしまう。
(あぁ…この人はずっと、こうやって自分を責めて来たんだ…)
私はそう思った瞬間、無意識に座る森野さんをそっと抱き締めていた。
抱き締めた森野さんの身体は、小さく震えていた。
怒りなのか、鈴原さんの事を思い出した恐怖からなのかは分からない。
ただ、今は森野さんを放置してはいけない気持ちになった。
「大丈夫ですよ。だって…森野さん、ちゃんと私を護ってくれたじゃないですか」
私の言葉に、森野さんを抱き締めていた私の腕を掴むと、抱き締めていた腕を解いた。
そして真剣な顔で私を見つめて
「何でお前はそう…」
言いかけて、掴んでいた腕をゆっくりと放す。
そして再び深い溜息を吐いた後
「ありがとう。あの時、お前が止めてくれなかったら、俺は横溝を徹底的に傷付けてた」
森野さんはそう言って力無く笑う。
その笑顔に胸が痛む。
苦しくて、切なくて、悲しくて…。
私はその苦しみから逃げ出したくて
「私も事務所に戻りますね」
と言うと、強い力で森野さんに腰を抱き寄せられた。
椅子に座った状態の森野さんの頭が、私のお腹に当てられる。
「悪い。嫌かもしれないけど…、あと少しだけ、このままでいさせてくれ」
そう呟いた森野さんの言葉に、涙が溢れそうになる。
私は今、鈴原さんの代わりなのかもしれない。
森野さんへの想いが溢れそうになるのを必死に堪えて、目の前に見える森野さんの髪の毛に触れた。
硬いサラサラの髪の毛に触れると、一瞬、森野さんの身体がビクっと震えた。好きで好きで…大好きだけど遠い人。
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