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2章
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サイラスの挑発的な宣言を受け、エドガーは言葉を失っていた。その頬が見る間に赤く染まり、視線が泳ぐ。しばしの沈黙の後、彼は恐る恐る口を開いた。
「その……領主様はどのようにして、俺が男性に興奮できるかどうかを確かめるおつもりなのですか」
サイラスは口の端をわずかに上げる。
「なに、簡単なことだ」
机の縁に軽く手を置いて、誘うような視線をエドガーに向ける。
「これから、私はお前の目の前で自慰行為をする」
「なっ……!」
突拍子もない提案に、エドガーは再び言葉を失った。サイラスはそんな彼の反応を予想の範囲内として受け流し、気にせず言葉を続ける。
「お前は、私が自らの手で背徳的な行為に耽るのを、ただ、眺めているだけでいい」
エドガーの瞳が揺れる。動揺と羞恥、そして──サイラスは見逃さなかった──わずかな好奇心が、その瞳の中に混じり合っていることに。
「私の乱れた姿を見て、お前がそこを反応させることができるかどうかで判断しよう」
「そ、それは、その……」
言葉を詰まらせるエドガーに対し、サイラスは艶然と微笑んだ。
「もちろん、お前には断る権利がある。嫌なら、今すぐ後ろの扉を開けて、この部屋から出ていくといい。私はそれを咎めはしない」
逃げ道を示唆するように手で背後の扉を示してやるものの、エドガーはその瞳に迷いを浮かべながらも、その場から動こうとはしなかった。
夕陽がさらに傾き、部屋全体がより深い橙色に染まっていく。重い沈黙が室内を満たし、窓の外を通り過ぎる鳥の羽音がやけに大きく響いた。
エドガーの胸が大きく上下している。彼の内心で何かが激しく葛藤しているのが、サイラスには手に取るように伝わってきた。
そして短い沈黙の果て、ついにエドガーは決意を固めたような表情で顔を上げた。
「……いえ、構いません。続けてください」
「いいんだな?」
エドガーが拒否を示さないことを改めて確認し、サイラスは椅子から立ち上がった。執務室の扉の前まで進むと、ゆっくりと扉に鍵をかける。執務室に鍵が施錠される金属音が響き渡り、そして再び静寂が訪れる。
「お前はそこで見ているだけでいい」
振り返りながら、サイラスは改めてエドガーを見下ろした。
「ただし、決して目を逸らすな」
エドガーは狼狽えながらも、言われた通り視線をサイラスに視線を向けている。逃げ場を失ったように立ち尽くす彼の姿が、なんとも滑稽で愛おしい。
そのまま、サイラスは身につけている衣装を脱ぎ始めた。
まず、上着のボタンに指先をかける。一つ、また一つと、わざと焦らすようにゆっくりと外していく。金属のボタンが布から離れるたび、小さな衣擦れの音が執務室に響いた。
エドガーの視線が自分の一挙手一投足を追っているのが分かる。耳を澄ますと、ほんの少し荒くなっている彼の息遣いが聞こえてきた。
上着が静かに床に落ちた。薄手のシャツ一枚になったサイラスの身体のラインが、夕日に透けてくっきりと浮かび上がる。
次に下衣へと手をかける。その動きにエドガーの視線が吸い寄せられ、頬がより深く紅潮するのが見て取れた。サイラスは内心で微笑む。ゆっくりと、慎重に、そして官能的に。サイラスは一枚一枚衣服を脱ぎ捨てていく。最後に残った下着に指が触れると、エドガーが小さく息を呑む音が聞こえた。
躊躇うことなくそれすらも脱ぎ捨て、サイラスはついに何も身に着けていない状態になった。
エドガーは茫然とその場に立ち尽くしていた。しかしその視線は、相変わらずサイラスの身体に向けられたままだ。
サイラスはその何も身につけていない恰好のまま、当たり前のように執務室の机の上に腰を下ろした。そして、目の前にいるエドガーに問いかける。
「お前、男同士の行為はどうすればよいか、知識はあるか?」
エドガーは緊張した面持ちで短く答えた。
「……いいえ」
「そうか、なら、この場で教えてやる」
サイラスは艶やかな笑みを浮かべ、机の上で姿勢を変えた。彼は羞恥など忘れたかのようにエドガーの目の前で足を大きく開き、その秘部を露わにする。
「いいか、男が男を抱く時、使うのは、この孔だ」
そう言いながら、指で自身の秘部を指さす。見やすいように足を大きく開いたまま、恥じらいなど微塵も見せずに。
エドガーの顔が真っ赤に染まる。それでも、彼は言われた通り視線を逸らそうとしない。その律儀さが、その従順さが、サイラスの心を強く揺さぶった。サイラスはそんな内心を隠したまま、顔に薄く笑みを浮かべる。
「ここは女と違って自然には濡れぬ。だから、前もって準備が必要なのだ」
そう告げてから、自身の指を口元に持っていく。わざとらしく舌を這わせ、しっとりと唾液を絡ませていく。そしてその濡れた指を、露わになったままの自身の秘部に押し付ける。
サイラスはここで一呼吸置き、それからゆっくりと圧をかけた。白く細いサイラスの指が、つぷっ……と中へと沈み込んでいく。
「んっ……ぁっ……」
思わず吐息のような声が漏れる。自分でも驚くほど甘い声だった。
この声を聴いて、自分を見ていたエドガーの視線が一瞬外れた。それに目ざとく気づいたサイラスは、すかさず命令を重ねる。
「逸らすな」
するとエドガーはすぐに、律儀にも再びサイラスに視線を向けた。真っ赤に染まった顔で、それでも視線だけは逸らさない。その従順さにサイラスの胸はますます熱くなる。
彼に注視されている中、サイラスは自身の指をさらに奥まで飲み込ませていった。指が中で動くたび、サイラスの腰は無意識に跳ね、机の上で小さく身体が震える。
室内に響く、わずかな身じろぎの音。呼吸の音。そして時折漏れる、サイラス自身の甘い吐息。すべてが、この密室の空気をより濃密なものにしていく。
「……ああ。ちなみに、男でもこの中で強い快楽を覚える箇所があることを知っているか」
弄りながら、改めてエドガーに問いかける。エドガーは顔を赤くしながら首を小さく横に振った。その反応を見て、サイラスは満足げに目を細める。
「なら覚えておくといい」
改めて、サイラスは自身の中指を秘部に深く差し込んでいく。
「人によって違うが、第二関節あたりまで入れたら、こう、腹側に指を曲げてみろ。うまくやれば、そこでコリコリとした塊に当たる。そこを刺激すれば、男でも、中から快楽に震えることができる」
今から実践して見せてやる──そう告げて、サイラスはエドガーに見せつけるように、中指を深く忍び込ませた。そして内壁を貪欲にまさぐり、最も快楽を得やすい場所を集中して弄り始める。
「んぁっ……あ、あっ……ああっ!」
指先が快感の中枢を捉えた途端、サイラスの口から悩ましい声が堰を切ったように漏れ始めた。机の上で大きく身をよじらせ、身体がビクッ、ビクッと激しく小刻みに痙攣し始める。
ちらりと視線を向けると、エドガーはそんなサイラスの痴態に釘付けになっていた。瞳孔がわずかに開き、呼吸も浅くなっている。
サイラスは視線を流し、そのまま彼の下半身へと目をやった。下衣越しではあるものの、そこには存在をはっきりと主張するかのようなふくらみが確認できる。
その事実に気づき、サイラスは言いようのない高揚と満足感を覚えた。そんな昂った気持ちのまま、サイラスは問いかける。
「……お前もやってみるか?」
その問いかけで、エドガーは弾かれたように視線を上げた。
「やってみるかとは、その……どういった意味でしょうか」
「だから、お前も私の中を指で弄ってみるかと尋ねているのだ」
サイラスは当たり前のようにそう言い放つ。
エドガーはすぐには返事をしなかった。だが、彼はしばらく考え込んだ後、やがて意を決したような表情を浮かべた。そしてゆっくりと、まるで何かに引き寄せられるように、サイラスのいる机へと歩み寄ってくる。
(おや、これは……)
それはサイラスにも予想外の行動だった。エドガーが自分に近づいてくるにつれ、今まで感じていなかった羞恥の感情がじわりと全身に広がっていく。
だが、その気持ちを相手に悟らせるつもりはない。サイラスは、わざと試すような声色でエドガーに問いかけた。
「──どうした。本当に応じてくれる気になったのか?」
問いかけると、エドガーは首まで顔を赤くしながらも、サイラスを見つめて小さく頷いた。
「領主様の……そこに、指を入れればいいのですか?」
なんて意欲的なセリフなのだろう。サイラスはその言葉を聞いた瞬間、全身に強い衝動が走った。身体の血が煮えたぎるように熱くなり、興奮が抑えられなくなる。
「……お前は、思っていたよりずっと積極的な男なのだな」
そして、挑発するように言葉を続けた。
「そういう男は嫌いではない。──さあ、好きなように、私を弄んでみろ」
その瞬間、エドガーの瞳に獲物を狙う獣のような光が宿るのが見えた。その変化に、サイラスは思わず舌舐めずりをする。
室内の空気が、より一層濃密になった。夕日はさらに傾き、二人の影が壁に長く伸びている。
短い逡巡のあと、エドガーは恐る恐るその指をサイラスの秘部に押し当てた。自分の指よりもいくぶん太く、無骨な指が入口に添えられる。サイラスのすぐ耳元で、エドガーが息を整える声が聞こえてくる。
しかし、なかなか中に入ってこない。焦れったくなったサイラスは、エドガーの耳元に顔を寄せた。
「さあ、早く」
その囁きに触発されたように、エドガーの中指がいよいよ中に入ってきた。先ほどまで自身の指で解されていたそこは、いとも容易くエドガーの指を受け入れる。
「あっ……ンッ、いいぞ、そのまま……」
喘ぎながら続きを急かす。するとエドガーが心配そうに尋ねてきた。
「痛くないですか?」
「大丈夫だ」
サイラスは再び耳元で囁く。
「なんなら、もっと乱暴にしてもらっても結構だ」
エドガーの動きが一瞬だけ止まる。次の瞬間──いままで遠慮がちだった指が、ぬちゅっ! と最奥まで一気に差し込まれた。
「あ、あっ……!」
突然の深い挿入に短い悲鳴をあげ、サイラスは腰をビクッと反らせる。エドガーはサイラスの様子を確認しながら、その指をサイラスの隘路の中でぐちゅぐちゅと大胆な動きでかき回し始めた。
「……ッ!」
唐突に動きが早まったことで思考が白く朦朧とする中、エドガーの指が何かを探るように中を動き回っているのに気づく。
「第二関節の……このあたりが、貴方の気持ちいいところですか?」
どうやら先ほど教えた性感帯を探り当てようとしているらしい。その素直さに笑みがこぼれそうになったとき――偶然にも、エドガーの指がサイラスの中のある一点を突いた。
「あッ! あぅっ!」
叫びと共に身体が大きく跳ねる。その様子を見たエドガーは、獲物を捕らえた獣のように、薄い笑みを口元に浮かべた。そしてサイラスの耳元に顔を寄せ、追い打ちをかけるように囁く。
「……ここですか? 貴方の気持ちいいところは」
しかし、エドガーの指が気持ち良すぎて、もはやまともな思考ができない。
「ンンぅっ……あっ……ぁぁっ……!」
強すぎる快楽の流れから逃れるように、サイラスは無意識にエドガーの身体に手を回す。エドガーは拒絶することなく、それどころかサイラスを優しく抱きしめ、そっと唇を重ねてきた。
――エドガーにキスをされている。
その事実に気づき、サイラスの頭はいよいよ真っ白になった。
目がくらむような快楽が秘部から全身に向かって駆け抜け、エドガーの肩に回した手に無意識に力を込める。甘い嬌声が漏れ、しばらく小刻みに身体を痙攣させたあと、サイラスはエドガーの腕の中でぐったりとその身体を横たえた。
「その……領主様はどのようにして、俺が男性に興奮できるかどうかを確かめるおつもりなのですか」
サイラスは口の端をわずかに上げる。
「なに、簡単なことだ」
机の縁に軽く手を置いて、誘うような視線をエドガーに向ける。
「これから、私はお前の目の前で自慰行為をする」
「なっ……!」
突拍子もない提案に、エドガーは再び言葉を失った。サイラスはそんな彼の反応を予想の範囲内として受け流し、気にせず言葉を続ける。
「お前は、私が自らの手で背徳的な行為に耽るのを、ただ、眺めているだけでいい」
エドガーの瞳が揺れる。動揺と羞恥、そして──サイラスは見逃さなかった──わずかな好奇心が、その瞳の中に混じり合っていることに。
「私の乱れた姿を見て、お前がそこを反応させることができるかどうかで判断しよう」
「そ、それは、その……」
言葉を詰まらせるエドガーに対し、サイラスは艶然と微笑んだ。
「もちろん、お前には断る権利がある。嫌なら、今すぐ後ろの扉を開けて、この部屋から出ていくといい。私はそれを咎めはしない」
逃げ道を示唆するように手で背後の扉を示してやるものの、エドガーはその瞳に迷いを浮かべながらも、その場から動こうとはしなかった。
夕陽がさらに傾き、部屋全体がより深い橙色に染まっていく。重い沈黙が室内を満たし、窓の外を通り過ぎる鳥の羽音がやけに大きく響いた。
エドガーの胸が大きく上下している。彼の内心で何かが激しく葛藤しているのが、サイラスには手に取るように伝わってきた。
そして短い沈黙の果て、ついにエドガーは決意を固めたような表情で顔を上げた。
「……いえ、構いません。続けてください」
「いいんだな?」
エドガーが拒否を示さないことを改めて確認し、サイラスは椅子から立ち上がった。執務室の扉の前まで進むと、ゆっくりと扉に鍵をかける。執務室に鍵が施錠される金属音が響き渡り、そして再び静寂が訪れる。
「お前はそこで見ているだけでいい」
振り返りながら、サイラスは改めてエドガーを見下ろした。
「ただし、決して目を逸らすな」
エドガーは狼狽えながらも、言われた通り視線をサイラスに視線を向けている。逃げ場を失ったように立ち尽くす彼の姿が、なんとも滑稽で愛おしい。
そのまま、サイラスは身につけている衣装を脱ぎ始めた。
まず、上着のボタンに指先をかける。一つ、また一つと、わざと焦らすようにゆっくりと外していく。金属のボタンが布から離れるたび、小さな衣擦れの音が執務室に響いた。
エドガーの視線が自分の一挙手一投足を追っているのが分かる。耳を澄ますと、ほんの少し荒くなっている彼の息遣いが聞こえてきた。
上着が静かに床に落ちた。薄手のシャツ一枚になったサイラスの身体のラインが、夕日に透けてくっきりと浮かび上がる。
次に下衣へと手をかける。その動きにエドガーの視線が吸い寄せられ、頬がより深く紅潮するのが見て取れた。サイラスは内心で微笑む。ゆっくりと、慎重に、そして官能的に。サイラスは一枚一枚衣服を脱ぎ捨てていく。最後に残った下着に指が触れると、エドガーが小さく息を呑む音が聞こえた。
躊躇うことなくそれすらも脱ぎ捨て、サイラスはついに何も身に着けていない状態になった。
エドガーは茫然とその場に立ち尽くしていた。しかしその視線は、相変わらずサイラスの身体に向けられたままだ。
サイラスはその何も身につけていない恰好のまま、当たり前のように執務室の机の上に腰を下ろした。そして、目の前にいるエドガーに問いかける。
「お前、男同士の行為はどうすればよいか、知識はあるか?」
エドガーは緊張した面持ちで短く答えた。
「……いいえ」
「そうか、なら、この場で教えてやる」
サイラスは艶やかな笑みを浮かべ、机の上で姿勢を変えた。彼は羞恥など忘れたかのようにエドガーの目の前で足を大きく開き、その秘部を露わにする。
「いいか、男が男を抱く時、使うのは、この孔だ」
そう言いながら、指で自身の秘部を指さす。見やすいように足を大きく開いたまま、恥じらいなど微塵も見せずに。
エドガーの顔が真っ赤に染まる。それでも、彼は言われた通り視線を逸らそうとしない。その律儀さが、その従順さが、サイラスの心を強く揺さぶった。サイラスはそんな内心を隠したまま、顔に薄く笑みを浮かべる。
「ここは女と違って自然には濡れぬ。だから、前もって準備が必要なのだ」
そう告げてから、自身の指を口元に持っていく。わざとらしく舌を這わせ、しっとりと唾液を絡ませていく。そしてその濡れた指を、露わになったままの自身の秘部に押し付ける。
サイラスはここで一呼吸置き、それからゆっくりと圧をかけた。白く細いサイラスの指が、つぷっ……と中へと沈み込んでいく。
「んっ……ぁっ……」
思わず吐息のような声が漏れる。自分でも驚くほど甘い声だった。
この声を聴いて、自分を見ていたエドガーの視線が一瞬外れた。それに目ざとく気づいたサイラスは、すかさず命令を重ねる。
「逸らすな」
するとエドガーはすぐに、律儀にも再びサイラスに視線を向けた。真っ赤に染まった顔で、それでも視線だけは逸らさない。その従順さにサイラスの胸はますます熱くなる。
彼に注視されている中、サイラスは自身の指をさらに奥まで飲み込ませていった。指が中で動くたび、サイラスの腰は無意識に跳ね、机の上で小さく身体が震える。
室内に響く、わずかな身じろぎの音。呼吸の音。そして時折漏れる、サイラス自身の甘い吐息。すべてが、この密室の空気をより濃密なものにしていく。
「……ああ。ちなみに、男でもこの中で強い快楽を覚える箇所があることを知っているか」
弄りながら、改めてエドガーに問いかける。エドガーは顔を赤くしながら首を小さく横に振った。その反応を見て、サイラスは満足げに目を細める。
「なら覚えておくといい」
改めて、サイラスは自身の中指を秘部に深く差し込んでいく。
「人によって違うが、第二関節あたりまで入れたら、こう、腹側に指を曲げてみろ。うまくやれば、そこでコリコリとした塊に当たる。そこを刺激すれば、男でも、中から快楽に震えることができる」
今から実践して見せてやる──そう告げて、サイラスはエドガーに見せつけるように、中指を深く忍び込ませた。そして内壁を貪欲にまさぐり、最も快楽を得やすい場所を集中して弄り始める。
「んぁっ……あ、あっ……ああっ!」
指先が快感の中枢を捉えた途端、サイラスの口から悩ましい声が堰を切ったように漏れ始めた。机の上で大きく身をよじらせ、身体がビクッ、ビクッと激しく小刻みに痙攣し始める。
ちらりと視線を向けると、エドガーはそんなサイラスの痴態に釘付けになっていた。瞳孔がわずかに開き、呼吸も浅くなっている。
サイラスは視線を流し、そのまま彼の下半身へと目をやった。下衣越しではあるものの、そこには存在をはっきりと主張するかのようなふくらみが確認できる。
その事実に気づき、サイラスは言いようのない高揚と満足感を覚えた。そんな昂った気持ちのまま、サイラスは問いかける。
「……お前もやってみるか?」
その問いかけで、エドガーは弾かれたように視線を上げた。
「やってみるかとは、その……どういった意味でしょうか」
「だから、お前も私の中を指で弄ってみるかと尋ねているのだ」
サイラスは当たり前のようにそう言い放つ。
エドガーはすぐには返事をしなかった。だが、彼はしばらく考え込んだ後、やがて意を決したような表情を浮かべた。そしてゆっくりと、まるで何かに引き寄せられるように、サイラスのいる机へと歩み寄ってくる。
(おや、これは……)
それはサイラスにも予想外の行動だった。エドガーが自分に近づいてくるにつれ、今まで感じていなかった羞恥の感情がじわりと全身に広がっていく。
だが、その気持ちを相手に悟らせるつもりはない。サイラスは、わざと試すような声色でエドガーに問いかけた。
「──どうした。本当に応じてくれる気になったのか?」
問いかけると、エドガーは首まで顔を赤くしながらも、サイラスを見つめて小さく頷いた。
「領主様の……そこに、指を入れればいいのですか?」
なんて意欲的なセリフなのだろう。サイラスはその言葉を聞いた瞬間、全身に強い衝動が走った。身体の血が煮えたぎるように熱くなり、興奮が抑えられなくなる。
「……お前は、思っていたよりずっと積極的な男なのだな」
そして、挑発するように言葉を続けた。
「そういう男は嫌いではない。──さあ、好きなように、私を弄んでみろ」
その瞬間、エドガーの瞳に獲物を狙う獣のような光が宿るのが見えた。その変化に、サイラスは思わず舌舐めずりをする。
室内の空気が、より一層濃密になった。夕日はさらに傾き、二人の影が壁に長く伸びている。
短い逡巡のあと、エドガーは恐る恐るその指をサイラスの秘部に押し当てた。自分の指よりもいくぶん太く、無骨な指が入口に添えられる。サイラスのすぐ耳元で、エドガーが息を整える声が聞こえてくる。
しかし、なかなか中に入ってこない。焦れったくなったサイラスは、エドガーの耳元に顔を寄せた。
「さあ、早く」
その囁きに触発されたように、エドガーの中指がいよいよ中に入ってきた。先ほどまで自身の指で解されていたそこは、いとも容易くエドガーの指を受け入れる。
「あっ……ンッ、いいぞ、そのまま……」
喘ぎながら続きを急かす。するとエドガーが心配そうに尋ねてきた。
「痛くないですか?」
「大丈夫だ」
サイラスは再び耳元で囁く。
「なんなら、もっと乱暴にしてもらっても結構だ」
エドガーの動きが一瞬だけ止まる。次の瞬間──いままで遠慮がちだった指が、ぬちゅっ! と最奥まで一気に差し込まれた。
「あ、あっ……!」
突然の深い挿入に短い悲鳴をあげ、サイラスは腰をビクッと反らせる。エドガーはサイラスの様子を確認しながら、その指をサイラスの隘路の中でぐちゅぐちゅと大胆な動きでかき回し始めた。
「……ッ!」
唐突に動きが早まったことで思考が白く朦朧とする中、エドガーの指が何かを探るように中を動き回っているのに気づく。
「第二関節の……このあたりが、貴方の気持ちいいところですか?」
どうやら先ほど教えた性感帯を探り当てようとしているらしい。その素直さに笑みがこぼれそうになったとき――偶然にも、エドガーの指がサイラスの中のある一点を突いた。
「あッ! あぅっ!」
叫びと共に身体が大きく跳ねる。その様子を見たエドガーは、獲物を捕らえた獣のように、薄い笑みを口元に浮かべた。そしてサイラスの耳元に顔を寄せ、追い打ちをかけるように囁く。
「……ここですか? 貴方の気持ちいいところは」
しかし、エドガーの指が気持ち良すぎて、もはやまともな思考ができない。
「ンンぅっ……あっ……ぁぁっ……!」
強すぎる快楽の流れから逃れるように、サイラスは無意識にエドガーの身体に手を回す。エドガーは拒絶することなく、それどころかサイラスを優しく抱きしめ、そっと唇を重ねてきた。
――エドガーにキスをされている。
その事実に気づき、サイラスの頭はいよいよ真っ白になった。
目がくらむような快楽が秘部から全身に向かって駆け抜け、エドガーの肩に回した手に無意識に力を込める。甘い嬌声が漏れ、しばらく小刻みに身体を痙攣させたあと、サイラスはエドガーの腕の中でぐったりとその身体を横たえた。
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