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#41 気づき
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白夜は息を呑んだ。
平地にいた時よりも低い位置に青空がきているというのに、とてもじゃないが開放的な気分にはなれそうになかった。
金剛寺の爬虫類を彷彿とするギョロりとした瞳が、白夜の姿を映していた。その中にいる白夜はとても頼り気のない顔をしている気がする。
彼の口から出たのは"東宮雪華"の名前。そして"宿星の五人"という固有名詞。――突然出てきたそれらの単語が、今の白夜の首を繋ぎとめていたといっても過言ではない。
白夜が"六人目"の"宿星の五人"という、文字のまやかしに隠れた存在であることは、その手の情報収集に肩まで使っている筋でないと辿り着けないはずだ。
金剛寺にそこへ辿り着く能力はあるとしても、知ろうとする動機はない。それゆえ、彼が白夜の事情を知ってらないはずである。
しかし金剛寺は"宿星の五人"と白夜の繋がりに勘づき始めている。その事実を前に、白夜の中でふと"自衛"から成り立つ彼への殺意が湧きだした。
そんな白夜の心情など露知らず、金剛寺は妙に落ち着きを覗かせる声でぼやく。
「お前は……いや……俺はお前を知っているぞ……」
「……っ」
ぴくりと白夜の肩が揺れた。
そう、金剛寺は数年前に火孁を狙って奇襲をかけた男だ。奇襲そのものは成功したものの、火孁がいうには字が合流するのを恐れて撤退したのだが。
それが意味することはつまり、金剛寺は字を危険であると認識していたということだ。火孁の周辺人物について調べておいたからできた判断である。
白夜も火孁の周辺人物として、字と同列に調べられているはずだ。
多少なりと年月が経っている上に、当時の白夜は低年齢な上に半端な異能力者だった。だから彼の中では字ほど重要に考えられてはいなかったのだろう。言うなれば眼中になかったのだ。
しかし――年月が経ち、この場所で対峙している今、その考えが訂正する時が来てしまったのかもしれない。白夜は四肢に力が入らないなりに、金剛寺を警戒して見つめる。
「陌間……そう、陌間白夜。21のボンボンが17の女に産ませた……なるほど、辻褄は合うな」
自身の記憶の中から白夜の情報の痕跡を探り当てたようだ。どこか腑に落ちた様子で顎をしゃくる。
白夜の首に食い込んだ金剛寺の爪先が、さらに深くまで突き立てられた。キリキリと痛む鋭い痛みに白夜は再び嗚咽をもらす。
「俺が甘かったな。化け物二匹、ペットを飼うにも理由が必要ってか」
ニヤリと唇を曲げる金剛寺だったが、瞬時にその笑みが消えた。そしてぽつりと、表情が落ちた、きょとんとした顔で言葉を吐いた。
「理由……? "宿星の五人"、例の妖星墜落事件は――」
――それは束の間の呆然だった。突然放たれた一閃の青白い斬撃が金剛寺を襲う。白夜の視界は青白い光と威圧、そしてそれらに付与された冷気に包まれた。
「くっ……!」
しかしながら、それでも金剛寺はその斬撃の直撃は避けていた。手のひらに一筋の血液の跡を残しながら、背後へと回避していたのだ。
その場に残された白夜は、背中を壁に預けながらずるずるとその場で崩れ落ちる。
対して金剛寺はそのまま白夜の背後の壁、それが聳える頂点のコンクリート屋根に立った影を見上げ、忌々しく睨みつけた。
「早すぎる……何か、臭いをつけられてるな」
金剛寺の視線を釘付けにしながらも、その影は高い足場から白夜の前へ飛び降りた。
右手に刀を携えたその後ろ姿を見て、白夜は力なく笑う。
「カッコいいねぇ……映画のワンシーンみたいだよ」
「……クライマックスですよ、白夜。そのワンシーンとやらに、貴方も参加しなさい」
ちょっと笑ってくれると思って吐いた言葉だったが、目の前の人影――雪音は淡々と冷たくそう返したのだった。
平地にいた時よりも低い位置に青空がきているというのに、とてもじゃないが開放的な気分にはなれそうになかった。
金剛寺の爬虫類を彷彿とするギョロりとした瞳が、白夜の姿を映していた。その中にいる白夜はとても頼り気のない顔をしている気がする。
彼の口から出たのは"東宮雪華"の名前。そして"宿星の五人"という固有名詞。――突然出てきたそれらの単語が、今の白夜の首を繋ぎとめていたといっても過言ではない。
白夜が"六人目"の"宿星の五人"という、文字のまやかしに隠れた存在であることは、その手の情報収集に肩まで使っている筋でないと辿り着けないはずだ。
金剛寺にそこへ辿り着く能力はあるとしても、知ろうとする動機はない。それゆえ、彼が白夜の事情を知ってらないはずである。
しかし金剛寺は"宿星の五人"と白夜の繋がりに勘づき始めている。その事実を前に、白夜の中でふと"自衛"から成り立つ彼への殺意が湧きだした。
そんな白夜の心情など露知らず、金剛寺は妙に落ち着きを覗かせる声でぼやく。
「お前は……いや……俺はお前を知っているぞ……」
「……っ」
ぴくりと白夜の肩が揺れた。
そう、金剛寺は数年前に火孁を狙って奇襲をかけた男だ。奇襲そのものは成功したものの、火孁がいうには字が合流するのを恐れて撤退したのだが。
それが意味することはつまり、金剛寺は字を危険であると認識していたということだ。火孁の周辺人物について調べておいたからできた判断である。
白夜も火孁の周辺人物として、字と同列に調べられているはずだ。
多少なりと年月が経っている上に、当時の白夜は低年齢な上に半端な異能力者だった。だから彼の中では字ほど重要に考えられてはいなかったのだろう。言うなれば眼中になかったのだ。
しかし――年月が経ち、この場所で対峙している今、その考えが訂正する時が来てしまったのかもしれない。白夜は四肢に力が入らないなりに、金剛寺を警戒して見つめる。
「陌間……そう、陌間白夜。21のボンボンが17の女に産ませた……なるほど、辻褄は合うな」
自身の記憶の中から白夜の情報の痕跡を探り当てたようだ。どこか腑に落ちた様子で顎をしゃくる。
白夜の首に食い込んだ金剛寺の爪先が、さらに深くまで突き立てられた。キリキリと痛む鋭い痛みに白夜は再び嗚咽をもらす。
「俺が甘かったな。化け物二匹、ペットを飼うにも理由が必要ってか」
ニヤリと唇を曲げる金剛寺だったが、瞬時にその笑みが消えた。そしてぽつりと、表情が落ちた、きょとんとした顔で言葉を吐いた。
「理由……? "宿星の五人"、例の妖星墜落事件は――」
――それは束の間の呆然だった。突然放たれた一閃の青白い斬撃が金剛寺を襲う。白夜の視界は青白い光と威圧、そしてそれらに付与された冷気に包まれた。
「くっ……!」
しかしながら、それでも金剛寺はその斬撃の直撃は避けていた。手のひらに一筋の血液の跡を残しながら、背後へと回避していたのだ。
その場に残された白夜は、背中を壁に預けながらずるずるとその場で崩れ落ちる。
対して金剛寺はそのまま白夜の背後の壁、それが聳える頂点のコンクリート屋根に立った影を見上げ、忌々しく睨みつけた。
「早すぎる……何か、臭いをつけられてるな」
金剛寺の視線を釘付けにしながらも、その影は高い足場から白夜の前へ飛び降りた。
右手に刀を携えたその後ろ姿を見て、白夜は力なく笑う。
「カッコいいねぇ……映画のワンシーンみたいだよ」
「……クライマックスですよ、白夜。そのワンシーンとやらに、貴方も参加しなさい」
ちょっと笑ってくれると思って吐いた言葉だったが、目の前の人影――雪音は淡々と冷たくそう返したのだった。
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