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第三章 コルマノン大騒動
54 自然の香り?
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看板によって示されていた道は小さく、さきほど二人がいた大通りとは打って変わって通行人も疎らであった。両端が家の壁になっており、穏やかな坂となっていて看板で宣伝をしていた店は上の方にあるようだ。たまに両隣にある家の窓から愉快な声が聞こえてきて、何ともほのぼのとしている。
「うーん……」
その小道を歩きながら、シルヴァは少し考え事をしていた。
それはシアンの懐に入っている巾着――もとい、その中にある金貨のことだ。
その金貨はアレンから貰ったものであり、その量といえばシルヴァが今までに持ったことのなる金額として最大のもの。しかし量が問題なわけではない。
「……?」
シルヴァは隣で歩くシアンを見つめていた。シアンもその視線に気づき、シルヴァを見て首を傾げる。が、それを見たシルヴァは笑って「何でもない」と言って視線を前に戻した。
このアレンからのお礼は、シルヴァ一人が貰ったわけではない。シアンとシルヴァ、二人に対するお礼だ。だからシアンにも渡そうとするのは至極当然のこと。彼女も欲しいものがあるに決まっているし、何よりいざという時のためにもお金は渡して起きたかった。
だが、肝心の金貨を入れる容器がなかった。締まらないことだが、アレンから貰った巾着以外に、金貨を入れるのに適切なものをシルヴァは持ち合わせていなかったのだ。
シアンの着ているワンピースにポケットがついているようにも思えないし、どうしたものか。
そう考えると、そういえばシアンの服も調達する必要がある。ずっとワンピース姿だと不便なことも出てくるだろうし、何より今は晴れているからいいものの、雨のときとか寒いだろう。普通に露出の少ない服も用意しておくべきだ。
となると、それを持ち運べるものも用意する必要がある。色々とやることがあって、シルヴァは頭を捻っていた。
「あっ、あれじゃない?」
そんなこんなで考えながら歩いていること数分。シアンが髪を揺らしながら、前の方を指さす。シルヴァもその声に反応してかを上げた。
「レンガの街並みの中で、あえて木造なんだ」
シアンの先にあったお店は、周りのレンガ造りの住宅とは違って、木造建築だった。景観としてはちょっと統一感に欠けているかもしれないが、見る限り視界にある唯一の木造なので、アクセントには丁度良いのかもしれない。
そして入り口の上には『食事処-彩食絹華』と大きく達筆な文字で描かれている。
「んー! 木造、好きだなあ」
その外観を見たシアンは嬉しそうに笑っていた。帽子の中の獣耳もピクピクと可愛らしぐ動いている。
シアンは獣の血を引いているので、人間よりも多少なりと自然に対する親和性が高いのかもしれない。
「やっぱ木造だと自然の香りとかするの?」
「自然……? うーん……?」
何気なく聞いたシルヴァに、シアンは手を顎に当てて悩んだ。少し質問が悪かったようだ。
よくよく考えると『自然の香り』ってどんな香りだろうか。分かるような分からないようなフニャフニャしている言葉である。
「よく分かんないけど、自然とは違うかなあ」
そう言って笑うシアン。難しいシルヴァの問いに、彼女なりの答えを出してくれたようで、彼はなんだか少し申し訳なくなった。
「なるほどね、ありがとう。じゃ、入ろうか」
シルヴァはそう言うと、『食事処-彩食絹華』の戸に手をかけた。
「うーん……」
その小道を歩きながら、シルヴァは少し考え事をしていた。
それはシアンの懐に入っている巾着――もとい、その中にある金貨のことだ。
その金貨はアレンから貰ったものであり、その量といえばシルヴァが今までに持ったことのなる金額として最大のもの。しかし量が問題なわけではない。
「……?」
シルヴァは隣で歩くシアンを見つめていた。シアンもその視線に気づき、シルヴァを見て首を傾げる。が、それを見たシルヴァは笑って「何でもない」と言って視線を前に戻した。
このアレンからのお礼は、シルヴァ一人が貰ったわけではない。シアンとシルヴァ、二人に対するお礼だ。だからシアンにも渡そうとするのは至極当然のこと。彼女も欲しいものがあるに決まっているし、何よりいざという時のためにもお金は渡して起きたかった。
だが、肝心の金貨を入れる容器がなかった。締まらないことだが、アレンから貰った巾着以外に、金貨を入れるのに適切なものをシルヴァは持ち合わせていなかったのだ。
シアンの着ているワンピースにポケットがついているようにも思えないし、どうしたものか。
そう考えると、そういえばシアンの服も調達する必要がある。ずっとワンピース姿だと不便なことも出てくるだろうし、何より今は晴れているからいいものの、雨のときとか寒いだろう。普通に露出の少ない服も用意しておくべきだ。
となると、それを持ち運べるものも用意する必要がある。色々とやることがあって、シルヴァは頭を捻っていた。
「あっ、あれじゃない?」
そんなこんなで考えながら歩いていること数分。シアンが髪を揺らしながら、前の方を指さす。シルヴァもその声に反応してかを上げた。
「レンガの街並みの中で、あえて木造なんだ」
シアンの先にあったお店は、周りのレンガ造りの住宅とは違って、木造建築だった。景観としてはちょっと統一感に欠けているかもしれないが、見る限り視界にある唯一の木造なので、アクセントには丁度良いのかもしれない。
そして入り口の上には『食事処-彩食絹華』と大きく達筆な文字で描かれている。
「んー! 木造、好きだなあ」
その外観を見たシアンは嬉しそうに笑っていた。帽子の中の獣耳もピクピクと可愛らしぐ動いている。
シアンは獣の血を引いているので、人間よりも多少なりと自然に対する親和性が高いのかもしれない。
「やっぱ木造だと自然の香りとかするの?」
「自然……? うーん……?」
何気なく聞いたシルヴァに、シアンは手を顎に当てて悩んだ。少し質問が悪かったようだ。
よくよく考えると『自然の香り』ってどんな香りだろうか。分かるような分からないようなフニャフニャしている言葉である。
「よく分かんないけど、自然とは違うかなあ」
そう言って笑うシアン。難しいシルヴァの問いに、彼女なりの答えを出してくれたようで、彼はなんだか少し申し訳なくなった。
「なるほどね、ありがとう。じゃ、入ろうか」
シルヴァはそう言うと、『食事処-彩食絹華』の戸に手をかけた。
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