異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります

リル⑦ 酒場

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 城下町というのは開放的な空気にどこかノスタルジックなにぎわいが混ざって、非常にごこが良い。
 大陸せいなんてそうだいで無理難題な目標を達成し終えた今、おれは初めてこの世界を観光気分でまんきつできるわけだ。

 しかし問題は、パティがいらない気をかせたことである。
 そのせいで俺のとなりにピッタリくっついたリルがじようげん『風』にしている。


「ふふっ♪ ねえねえどこ行こうかー♪」

「酒場だよ」

「楽しみだね♪」

「おい。好感度が大したことないのバレてんだぞ? あとを上げるんじゃない」


 五十パーセントほど度の好感度というのは、言わばつう
 もちろん全くの見ず知らずで初対面の人間というのは、たいていけいかいしんいだいているから好感度なんて二十パーセントもあれば上出来だ。
 だからまあ見知らぬ関係というわけではないけれど、せいぜい、時々会話をわす友人――ぐらいの好感度である。こんなイチャラブカップルじゃない。


「仕方ないでしょ! お祖父じいさまの命令です!」


 うーん。あのじいさん、まだリルをヒロインにする気満々なんだよな。だから仲を深めるためにもデートしてこい――なんて言い出したわけだ。
 俺に言うと反対されるから、リルとパティにだけ。

 そりゃ、とんでもない美少女で気品あふれるれいじよう。そんな子がうでからみついてきていやな気はしない。
 命令とは言ってもスキンシップを取っているからか、好感度がじわりじわりとぞうしていく様子がまたわいらしくもある。
 だけど…………ね。


ちがってお前にれちまったら、だれかにられるんだろ? 寝取られ前提のデートなんて最悪すぎる」

「愛を深めなければ寝取られの価値がうすまりますからね。私にとってはすごく良いデートです♪」


 寝取られの価値とは一体…………。
 いや、いい。なんとなく知りたくない。
 きっと養成学校でてつていてきたたまれたんだろう。そりゃマノンも引きこもるっての。というか、むしろこいつに引きこもってほしかった!

 あとリルのやつ、デートになると急にことづかいがですます調になりやがった。
 そのほうが受けが良いという判断なのだろうけれど、少々あざとすぎる。語尾を上げるの直ってないし。


「で、町一番の酒場ってのはどこにあるんだ?」


 俺はリルではなくパティに問うた。王族のリルが城下町の事情に明るいわけがない。


「そこの角にさかだるのマークがあります。立地と美人店主のあいの良さで人気の酒場です」

「おっ、マジかそれ!? いいなぁ。大人の美人店主――。最高じゃん、ふへへ……」


 先細りに声を小さくしてつぶやいたが、腕を絡ませているリルにはハッキリ聞こえていたようで。


「悪かったわね。大人じゃなくて」


 むすぅと口をとがらせて、ほおふくらませた。
 そういうところだけはほんとヒロインしてくれるんだな。それとも今のは天然か……?
 ライカブルって便利だけど人の裏表ばっかり見ちゃうから、俺はすっかり疑い深くなってしまった。


「どーせ私なんてまだまだ子供だって言いたいんでしょ。でもお酒ぐらい飲めるんだからね」

「そういやなんさいなんだ?」

「十八」

「それ日本じゃ酒飲めないんだが…………。――いや、別にリルを子供だとは思ってねえよ? でもさ、ほら…………。人妻とかOLおーえるって、独特の良さがあるじゃん? わるかなぁ。わかんないかなぁ」

「おーえるって何よ」


 まゆを寄せて問われる。
 しかしすぐに眉のきんちようは解かれて、みように暖かな表情へと変わった。


「…………でも、ちょっと以外。人妻ってことは、何かあったときそこに寝取られが生まれるのよね。……いいの?」


 ああ、そこに反応してたのな。


「いやいや、さすがにリアルにどうにかなるとか思ってないから。会話でそういうふんを楽しんだり……あとほら、動画とか……な? 人妻のあれな動画って個人的にきなんだよ」


 あれとかしたし、中世ファンタジー世界で動画とか言ったところで『ドウガってなに?』ってなるのがオチだと思って言ってみたのだが。
 俺の腕が、やたらちからくでギリギリとげられた。


「よくわかんないけど、不健全な印象だけは伝わってきたわ。女の子とデート中にそんな話するなんて、最低……っ!」


 ――――意味じゃなくて雰囲気で察してしまうのか。こわいな、女の子。
 好感度がグイッと下がってしまった。
 こりゃ本気で酒場を楽しんだら、今夜辺りに死ぬな、俺。

 あれ。ひょっとしてこれ、クリア後のおまけクエストじゃなくてただのばつゲームじゃ……?

 のがしていた可能性に気付いてリルのいないほうの腕を動かし、あごに指を当ててかんがむ。
 すると急に、不満そうな感じでリルがいてきた。


「……ねえ、何か反応はないの?」

「反応って?」

「胸、くっつけてるんですけど」


 見ると、確かに俺のひじにリルの大きめおっぱいがれていた。


「や…………やわらかいです」


 いかん。急に敬語になってしまった。だって別のこと考えてたし! 慣れてないし! お金はらわないと触れられないものだったし!


「ふふっ――。何それ。案外ハヤト様ってチョロい?」

「んなことねー…………と、思う。――――というか、様付けはやめてくれ」

「じゃあなんて呼ぼっか?」

「様じゃなけりゃ、なんでもいいよ」

「んー、それならこいびとっぽく――――。…………ハヤトくん?」


 ……俺は、この世界にしようかんされたその日からえいゆうだった。英雄としてあつかわれ、英雄としての仕事を果たしてきた。
 国王が『ハヤト』と呼び捨てするのと、ねんれいの近いパティに最大限普通にしてくれとたのんでどうにか『ハヤトさん』と呼んでもらっていたのが例外で、他は全て『英雄様』や『ハヤト様』――。


「ん? 顔、赤くなってるよ?」


 だから『くん』付けという、たったそれだけがきようれつに胸にひびいてしまった。顔が、耳までカァーッと熱くなるのを感じる。

 俺に残されたせんたくは、反対側を向いてリルの目から顔をらすという一たくのみ。
 きっと、見られてはいけないほどゆるんだ顔をしている。

 本気で惚れてしまわないように気をつけないと、女の子とれんあいいそしんだ経験のない俺に、リルは可愛すぎるのかもしれない……。

 すぐそばの少し低いところで「そんなに照れちゃうんだ。案外、可愛いのね――」なんて呟き声が聞こえた。チラリと見ると、なぜかリルまでずかしそうにうつむいている。
 なんでお前まで恥ずかしそうにしてるの? と強気に返そうと思ったけれど、いつたん時間をおかないと、これ以上の会話は危険だと察した。
 好感度は元にもどるどころか、ちょっと上がっている。
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