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異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります
新たな問題
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町の外周へ近づくに従って、徐々に武器や農具を手にした男性が増えていく。
端まで辿り着くと、一定の間隔をあけながら、町全体を警護するように何人もの男が立っていた。
城下町は城を中心に円形を模しているが、城の裏側は険しい山を背負っていて『影』になりやすく、人もそれほど住んでいない。そこには動物も、せいぜい鳥ぐらいしかいないわけだ。
今いる場所は城の正面から真っ直ぐ続く道を進んだ、謂わば町の正面玄関のような場所だ。
「――ったく、城の兵隊は何してんだよ……」
呆れて呟くと、一番近くにいた人が声をかけてきた。
「ここは危ないぞ。手伝うならまず、女を置いてこい。代わりに武器を持ってくるんだ。農具でも構わん」
女、という一言で片付けられたのが気にくわなかったのか、リルは居住まいを正して胸に隠していた金色のブローチを取り出した。
「ジニ家のリルと申します」
「王族……っ!?」
ジニ家――。名は耳にしたことがある。確か、伯爵だった当代が不慮の死を遂げて、爵位を空位にしたままの家だ。
伯爵は王族の中でもかなり位が高い。
つまるところ、リルは王族の中でも特段の名家に生まれている。まあ、現国王の孫だしな……。
王族は家の名をミドルネームとして扱うから、こいつの本名は『リル・ジニ・リティエール』ということだろう。なんで俺に家の名を隠したんだろうか。
…………王族の地位を捨てて、日本へ渡り、英雄に嫁ぐ。その覚悟の表れだったのかもしれない――か。
脅えるように身を引いて傅いた男性が、さっきよりも丁寧に言葉を紡ぎはじめた。
「なぜジニ家のご令嬢が、このような場所に――」
「事情を聞き、現状を正確に把握する必要があると判断しました。邪魔は致しません」
「いえっ、邪魔だなどと、そのような!」
「この目で見た真実を、国王陛下へお伝えします」
「しかし危険です!」
「……お願いします。協力してください」
おお……。王族が平民に頭を下げた。これは、この国では許されない事態だ。
「私からもお願いします」
次いでパティが白銀のブローチを胸元から取り出す。
「賢者様!?」
「私や彼がいれば、戦力としてこれ以上はないはずです」
賢者は魔法の扱いに長けている。
もちろん平民が使える基礎魔法だけではなく、複雑な攻撃魔法も編み出されている。
もっとも、王族の規格外なそれと違って賢者の扱う魔法は最大級でも剣や槍、弓と同程度の評価しか与えられないが。
武器を持たずして武器と同じ威力の攻撃を放てる時点で、十分に異能だろう。
「えっと……その、じゃあこの御方は一体……?」
傅いたまま俺の顔をチラリと見上げて、疑問符を貼りつけたような表情をする。
そりゃ王族と賢者を引き連れてきた男なんて、正体不明もいいところだろう。
普通に考えればより位の高い人間でしかありえないわけで、俺が目を会わせると男性は見るからに恐れおののいた。
――とは言っても、英雄の証とかは無いんだよなあ。
いや、そりゃあ十字大陸統一に当たっては特別に金のブローチを与えられたよ? でもそれ、パレードが終わると同時に返しちゃったし。
二人みたいに格好よく振りかざせる印籠のようなものが、今の俺には、ない。
「彼は十字大陸統一を果たしうぶぅっ!」
正体を明かしかけたパティの口を、強引に塞ぐ。
「名乗るほどの者じゃありませんよ。王家に仕える使用人でございます」
「使用人……?」
「ぷはぁっ!」
口を解放すると、パティは耳元で囁いてきた。
「いいんですか? 英雄だって伝えなくて」
「必要ないだろ。むしろ英雄だなんて知られたら、戦いに参加しづらくなる」
「まあ、それはそうなのかもしれませんが……」
「いいから見とけって」
この人の好感度はかなり高い。八十パーセントと言うところか。
全面的な信頼は置けないけれど、助けにやってきた人間に期待をかけている状態――ってところだな。悪くない。
さて、じゃあ正体不明の何かとやらが出てくるのを待ちましょうか。
――そう思った瞬間。
「うわぁぁぁぁっ。出た! 出たぞぉぉぉッ!!」
少し遠くから悲鳴に近い男の声が鳴り響いて、俺たちは現場へ急いだ。
端まで辿り着くと、一定の間隔をあけながら、町全体を警護するように何人もの男が立っていた。
城下町は城を中心に円形を模しているが、城の裏側は険しい山を背負っていて『影』になりやすく、人もそれほど住んでいない。そこには動物も、せいぜい鳥ぐらいしかいないわけだ。
今いる場所は城の正面から真っ直ぐ続く道を進んだ、謂わば町の正面玄関のような場所だ。
「――ったく、城の兵隊は何してんだよ……」
呆れて呟くと、一番近くにいた人が声をかけてきた。
「ここは危ないぞ。手伝うならまず、女を置いてこい。代わりに武器を持ってくるんだ。農具でも構わん」
女、という一言で片付けられたのが気にくわなかったのか、リルは居住まいを正して胸に隠していた金色のブローチを取り出した。
「ジニ家のリルと申します」
「王族……っ!?」
ジニ家――。名は耳にしたことがある。確か、伯爵だった当代が不慮の死を遂げて、爵位を空位にしたままの家だ。
伯爵は王族の中でもかなり位が高い。
つまるところ、リルは王族の中でも特段の名家に生まれている。まあ、現国王の孫だしな……。
王族は家の名をミドルネームとして扱うから、こいつの本名は『リル・ジニ・リティエール』ということだろう。なんで俺に家の名を隠したんだろうか。
…………王族の地位を捨てて、日本へ渡り、英雄に嫁ぐ。その覚悟の表れだったのかもしれない――か。
脅えるように身を引いて傅いた男性が、さっきよりも丁寧に言葉を紡ぎはじめた。
「なぜジニ家のご令嬢が、このような場所に――」
「事情を聞き、現状を正確に把握する必要があると判断しました。邪魔は致しません」
「いえっ、邪魔だなどと、そのような!」
「この目で見た真実を、国王陛下へお伝えします」
「しかし危険です!」
「……お願いします。協力してください」
おお……。王族が平民に頭を下げた。これは、この国では許されない事態だ。
「私からもお願いします」
次いでパティが白銀のブローチを胸元から取り出す。
「賢者様!?」
「私や彼がいれば、戦力としてこれ以上はないはずです」
賢者は魔法の扱いに長けている。
もちろん平民が使える基礎魔法だけではなく、複雑な攻撃魔法も編み出されている。
もっとも、王族の規格外なそれと違って賢者の扱う魔法は最大級でも剣や槍、弓と同程度の評価しか与えられないが。
武器を持たずして武器と同じ威力の攻撃を放てる時点で、十分に異能だろう。
「えっと……その、じゃあこの御方は一体……?」
傅いたまま俺の顔をチラリと見上げて、疑問符を貼りつけたような表情をする。
そりゃ王族と賢者を引き連れてきた男なんて、正体不明もいいところだろう。
普通に考えればより位の高い人間でしかありえないわけで、俺が目を会わせると男性は見るからに恐れおののいた。
――とは言っても、英雄の証とかは無いんだよなあ。
いや、そりゃあ十字大陸統一に当たっては特別に金のブローチを与えられたよ? でもそれ、パレードが終わると同時に返しちゃったし。
二人みたいに格好よく振りかざせる印籠のようなものが、今の俺には、ない。
「彼は十字大陸統一を果たしうぶぅっ!」
正体を明かしかけたパティの口を、強引に塞ぐ。
「名乗るほどの者じゃありませんよ。王家に仕える使用人でございます」
「使用人……?」
「ぷはぁっ!」
口を解放すると、パティは耳元で囁いてきた。
「いいんですか? 英雄だって伝えなくて」
「必要ないだろ。むしろ英雄だなんて知られたら、戦いに参加しづらくなる」
「まあ、それはそうなのかもしれませんが……」
「いいから見とけって」
この人の好感度はかなり高い。八十パーセントと言うところか。
全面的な信頼は置けないけれど、助けにやってきた人間に期待をかけている状態――ってところだな。悪くない。
さて、じゃあ正体不明の何かとやらが出てくるのを待ちましょうか。
――そう思った瞬間。
「うわぁぁぁぁっ。出た! 出たぞぉぉぉッ!!」
少し遠くから悲鳴に近い男の声が鳴り響いて、俺たちは現場へ急いだ。
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