異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります

むにむにぶよぶよ

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 この世界にはモンスターと呼べる存在がいない。
 獣は獣であり、例えば人語を話すとか異常な成長を遂げて魔法まで使えちゃうとか、そういう存在はいないんだ。
 あくまで生物の最上位種は人間である。

 だからまあ、正体不明と言ったって、どうせ獣の類い。
 少なくとも獣と呼べるはんちゆうの相手だろう――と思っていた。
 東西南北の統一で各地に遠征してみると、同じ大陸とは言っても各地で生息する獣が違うのは明らかだったわけで。

 多分、この中央区域には存在しない獣が現れ、正体不明とされた。

 そんなところ。
 …………だったら、よかったのになぁ。


「ひぃっ、気持ちわりぃ!」

『ぶよぶよっ♪』


 うーん……。スライム……とも、違う? これは……なんだ?


『ぶよぶよっ♪』


 丸っこくて、やわっこくて、目がつぶらで、でも頭が尖ってない。
 色は黄色。
 スライムのしゆのようだけど、なーんか違う。
 オスとメスなのか、二つの個体がくっついて行動しているようだ。

 どっかで見覚えがあるような……。


「こっ、こいつが畑をらしに来やがるんです!!」

「はあ」

「はあ――って。こいつらこんな柔らかそうなのに、剣もおのもはじき返すんですよ!?」

「いやいやいや、どうみても液体に近いじゃん」


 モノはためしに、と俺は男性から剣を借りて、ツンツンとっついてみる。
 するとカツンカツンと弾き返されて、明らかにかたい物体であることがかんしよくとして伝わってきた。


『ぶよぶよっ♪』

「うわあ、マジだこれ。全然剣がさらないじゃん……」

「気持ち悪いですよね!?」


 んー。確かにこの柔らかそうな感じでカチンカチンってのは、気味が悪いかもしれないな。
 物理法則を無視しているということは、この世界にもものはいた……ということだろうか?
 まだ解明の進んでいない魔法の力で生まれたのならば、物理法則を無視していても説明が付いてしまう。魔法って怖い。

 俺は悲鳴を上げた男性に問う。
 いかついヒゲ顔なんだけど、案外ビビりなのかな。

「そういえばけつけたころにはここにいましたけど、どこから出てきたんですか?」

「上からだよ!! 一週間ぐらい前から定期的に降ってくるんだ!!」

「……………………上?」


 俺が空を見上げると、一組のスライム的な何かがドスンと振ってきた。


『ぶよぶよ!』
『ぶよぶよ~っ』


 えー……っと。さっきのが左右両方とも黄色。今度のは怒ってるっぽいのが赤色で、ちょっと間延びした感じなのが緑色。
 うん。
 なんとなく正体がつかめてきたぞ。原因がさっぱりだけど、見覚えがありすぎる。


「くそっ、お前らやっちまうぞ!!」

「「「おおっ!!」」」


 男どもがせいよく取り囲んで、四方八方から、その――――。ぶよ? を攻撃する。しかしダメージはゼロのようだ。
 なんなら、ぶよは平然と道に生えてる草とか砂のような小石を、ゆっくり体内にみ始めた。
 はんとうめいの体内で消えていくということは、生物の消化器官に相当するものが存在しているのだろう。

 ただまあ、移動はしていない。このまま放っておいたら徐々に土を吸収して、下にまっていくのかな?
 ……それにしても四方八方からガタイの良い男共が「えいっ」「ていっ」「そいやっ」なんて言いながら可愛らしい『ぶよ』を突っつき回す姿は中々……シュールだ。


「ぷっ……」

「ハヤトさん、笑っていませんか?」

「どうしたのよハヤトくんっ」


 いやだって、それで消える・・・わけないじゃん。
 正体がわかっちゃうと、とんでもなくこつけいな絵面である。
 俺は熾烈な物理攻撃を畳み掛ける男連中のそばまで出て、落ち着けるように言い放つ。


「あー、みなさん? もうちょっと増えるのを待ってみませんか?」

「ああっ!?」

「まあまあ。ちょっと見ていてくださいって」


 少し待つと上からまた『ぶよ』が降ってきた。
 思った通り、二体一組。今度は青と黄色。


「このスローテンポ。げきあまあまくちだな」


 さらにしばらく待って、次の一組が落ちてくる。赤と黄色――よしっ。
 俺は二体のぶよをで持ち上げて、運ぶ。軽いな。
 んだり、手を体内に取り込もうとしたりは、してこない。

 カチンカチンなのかと思ったら見た目通りのぶよぶよで、感触が気持ちいい。
 もう顔にててむにむにしちゃいたい。二つあるしおっぱー …………攻撃される瞬間だけこうしてるのかな?


「兄ちゃん、何してんだ!?」

「皆さんちゅうもーく。……はいっ、ここに四色のぶよがいます! 赤、青、黄色、緑。定番の四色ですね」

「はぁ……?」

「そして今、俺の手元には黄色のぶよが二つ。――このぶよを残り二つの黄色いぶよとつなげると――」


 パアアッとまばたいて、ぶよはしようめつした。


「ほらね? こいつら、四ひき合わせると勝手に消えるんですよ」


 言い終えると、後方……城のある辺りから『ぶよんっ』と妙な音が聞こえた気がした。
 しかし振り向いても、何も見えない。気のせいか?


「特に有害生物というわけでもなさそうなので、手で移動させてくっつけちゃいましょう♪」


 そこからは、降ってくるぶよをひたすら消す作業が続いた。
 せつかくだから三びきを縦に二列積み上げて、更に縦にして上にせたぶよを順序よく消す『二れん』もろうする。


「おおっ、すげえぇ!!」


 平和的に解決しそうで良かった。
 血なまぐさいのはあんまり好きになれないからな。

 でも、これまではどうやって対処していたのだろう。
 そもそも移動もしないで砂や草をゆーっくり取り込む『ぶよ』が、きようになるほど有害なのか……?
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