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異世界帰りへ⑥ その学校は○○の痕跡を残す
リル⑭ ほとんど好きだけど残りのちょっとが邪魔をする
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ふんだんに木材が使われた校舎はとても日本風で、見た目の印象もそうだが漂う木材の香りがこの世界では珍しい木造建築を想起させ、どこかノスタルジックな印象を受ける。
「日本には、木の建物が多いんだよね?」
「いや、そりゃ多いけどさ」
ただ、木造の学校というのは些か懐古的すぎるかもしれない。
「学校は普通、鉄筋コンクリートだ。真っ平らな石造りみたいなもんだな」
「ふーん。じゃあ王城とも、そんなに変わらないのね」
「いや、城みたいな豪勢な感じとも違う。こう――無機質で、人が閉じ込められる檻みたいなイメージだ」
「…………日本って、大丈夫な国……なんだよね?」
そう言われてもねえ。
この国で学校と言えば、上流家庭以上が通う特別な場所だ。
中流家庭程度じゃ子供は労働力であって、学校に通っている暇なんてなく、識字率の向上を目指しているような段階である。
つまり学校は上流家庭のものであり、校舎も上流に相応しい造りとなっている。
対して日本は義務教育制度。上流も中流も下流も全ての家庭の子供が、何かしらの形で学校へ通うわけだ。
もちろん一部の私立校のように潤沢な資金で上流に見合った環境を提供する場合もあるけれど、そうでない場合はコストが優先される。
多少というか、それなりに無機質な造りになるのは、仕方のないことだろう。
「日本の子供は小さい頃から、密室に集団で放り込まれることに慣らされるんだ。そこに馴染めなければ、マノンみたいに引きこもることになりかねない。王族の視点から見れば考えづらいだろうけどな」
言いながら思ったけれど、日本の学校も結構なハードモード環境である。
「そうねぇ。養成学校も日本に倣って狭い教室に人を押し込める形だったから、私もここに通い始めてすぐの頃は、中々慣れなくて苦労したわ」
おっ、マノンに続いてこいつも引きこもり体質か?
ネトラレなんてとんでもない属性を抱えているんだ。マノン級じゃなければ、多少の引きこもり願望ぐらいは余裕で受け入れられる。
「学校の中で唯一、私だけが王族だったのよ。それで集められたのは、王族貴族とか関係なしに見目と器量の良さが優先。……普通、そんなことはありえないから。やっぱり最初は一歩引かれているというか、誰も話しかけてくれなくて、孤立したわ」
――王族は嫌われ者。
そんな状況で平民の中に放り込まれたわけだから、境遇に同情すべき部分はあるのかもしれないな。
「溶け込むのには、どれぐらいかかったんだ?」
「三年かな」
結構長いな。日本の中学や高校なら卒業してしまうぞ。
「十三歳から通い始めて、十六歳になってようやく、人と喋り始めたの。周りの見る目も、少しずつ変わってきていたしね。あの子は本当に王族なのか? みたいな噂も流れていて」
結構苦労してるんだな……。
三年間も誰とも喋らないで学校に通い続けるって、引きこもり体質どころか精神的にタフすぎるように思える。
一人を好む俺だって、もしリルと同じ環境だったら、どうなっていたことか。
「――ま、リルの行動を見ていたら、本当に王族なのか疑わしくなる気持ちもわかるけどな」
「どういう意味よ」
教室の扉の前で立ち止まったリルを、正面に見据える。
王族であることに誇りを抱いている彼女は、その噂を快く思わなかったのかもしれない。
しかし俺みたいな普通の生まれと育ちの人間から見れば、真逆である。
だから、全くその凄さに気付いていないお嬢様に、しっかりと気持ちを伝えた。
「――リルが王族に見えないってのは、王族なのに平民に頭を下げたり、王族だからって偉ぶっていなかったり、面倒ごとに積極的に巻き込まれていったり、それでいて勉強熱心ってことだ。――――何より、生まれや育ちで人を分けないだろ? そういう王族とは思えないところ、俺は好きだぞ」
「す……好き――って…………」
好感度、ギュゥイーンと上昇中。
……あれ? まずい。予想外の反応だぞこれ!
「そっ、そっか……。ハヤトくん、私のこと……」
「いやいやいや、そういうところが好きってだけで、全体を見てどうこうでは――っ」
と、一歩引いて彼女の全身を視界に収めた。
美しく光沢を帯びた栗色の髪に、ちょっと性格がキツそうな青っぽい目。ほんの僅かに釣り目で、可愛いと美しいの良いところ取りをした丁度良い塩梅だ。
肩幅は少し狭くて女の子らしく、胸はしっかり主張して、全体はスラッとしたほどほどの細身。
…………いやこれ、反則だろ。
「……わかったよ。外見と性格は好みだ! むしろドストライクです!」
「――――――やだ、恥ずかしい……っ」
おい。本気で恥じらうな。マジで惚れちゃうからやめろ!
「でもネトラレはダメだからな! それで全部台無しだ!!」
「なっ――。寝取られのどこがダメなのよ!?」
「どこがダメかもわかってない時点で、完璧にアウトなんだよ!!」
「ダメなことはわかってるわよ! でもその背徳感が、愛を加速させるの!!」
おぅ……。割と最低な発言だぞ、それ……。
浮気する人の言い分を一行でまとめました、みたいな。
日本の男性芸能人がそれを言ったら、多分、二度と復帰できないか不倫文化の象徴となるか、二択を迫られる。
もう残念すぎてガッカリすぎて、言葉も出ない。
好感度も少し下がった……けど、それでもまだ九十パーセントぐらいあるな。面倒なことにならなきゃいいけれど。
「…………それに私は、お母さんのこと信じてるから」
「――ん? 今、なんて言った?」
よく聞こえなかったけれど、お母さんがどうのこうのって……。
「なんでもない! それより、教室に入るわよ!」
「お、おう」
ちなみにマノンは俺の昔の好みに合わせて無口キャラを装い、パティは目下権力に逆らっているためまだお口にチャック中だ。
「日本には、木の建物が多いんだよね?」
「いや、そりゃ多いけどさ」
ただ、木造の学校というのは些か懐古的すぎるかもしれない。
「学校は普通、鉄筋コンクリートだ。真っ平らな石造りみたいなもんだな」
「ふーん。じゃあ王城とも、そんなに変わらないのね」
「いや、城みたいな豪勢な感じとも違う。こう――無機質で、人が閉じ込められる檻みたいなイメージだ」
「…………日本って、大丈夫な国……なんだよね?」
そう言われてもねえ。
この国で学校と言えば、上流家庭以上が通う特別な場所だ。
中流家庭程度じゃ子供は労働力であって、学校に通っている暇なんてなく、識字率の向上を目指しているような段階である。
つまり学校は上流家庭のものであり、校舎も上流に相応しい造りとなっている。
対して日本は義務教育制度。上流も中流も下流も全ての家庭の子供が、何かしらの形で学校へ通うわけだ。
もちろん一部の私立校のように潤沢な資金で上流に見合った環境を提供する場合もあるけれど、そうでない場合はコストが優先される。
多少というか、それなりに無機質な造りになるのは、仕方のないことだろう。
「日本の子供は小さい頃から、密室に集団で放り込まれることに慣らされるんだ。そこに馴染めなければ、マノンみたいに引きこもることになりかねない。王族の視点から見れば考えづらいだろうけどな」
言いながら思ったけれど、日本の学校も結構なハードモード環境である。
「そうねぇ。養成学校も日本に倣って狭い教室に人を押し込める形だったから、私もここに通い始めてすぐの頃は、中々慣れなくて苦労したわ」
おっ、マノンに続いてこいつも引きこもり体質か?
ネトラレなんてとんでもない属性を抱えているんだ。マノン級じゃなければ、多少の引きこもり願望ぐらいは余裕で受け入れられる。
「学校の中で唯一、私だけが王族だったのよ。それで集められたのは、王族貴族とか関係なしに見目と器量の良さが優先。……普通、そんなことはありえないから。やっぱり最初は一歩引かれているというか、誰も話しかけてくれなくて、孤立したわ」
――王族は嫌われ者。
そんな状況で平民の中に放り込まれたわけだから、境遇に同情すべき部分はあるのかもしれないな。
「溶け込むのには、どれぐらいかかったんだ?」
「三年かな」
結構長いな。日本の中学や高校なら卒業してしまうぞ。
「十三歳から通い始めて、十六歳になってようやく、人と喋り始めたの。周りの見る目も、少しずつ変わってきていたしね。あの子は本当に王族なのか? みたいな噂も流れていて」
結構苦労してるんだな……。
三年間も誰とも喋らないで学校に通い続けるって、引きこもり体質どころか精神的にタフすぎるように思える。
一人を好む俺だって、もしリルと同じ環境だったら、どうなっていたことか。
「――ま、リルの行動を見ていたら、本当に王族なのか疑わしくなる気持ちもわかるけどな」
「どういう意味よ」
教室の扉の前で立ち止まったリルを、正面に見据える。
王族であることに誇りを抱いている彼女は、その噂を快く思わなかったのかもしれない。
しかし俺みたいな普通の生まれと育ちの人間から見れば、真逆である。
だから、全くその凄さに気付いていないお嬢様に、しっかりと気持ちを伝えた。
「――リルが王族に見えないってのは、王族なのに平民に頭を下げたり、王族だからって偉ぶっていなかったり、面倒ごとに積極的に巻き込まれていったり、それでいて勉強熱心ってことだ。――――何より、生まれや育ちで人を分けないだろ? そういう王族とは思えないところ、俺は好きだぞ」
「す……好き――って…………」
好感度、ギュゥイーンと上昇中。
……あれ? まずい。予想外の反応だぞこれ!
「そっ、そっか……。ハヤトくん、私のこと……」
「いやいやいや、そういうところが好きってだけで、全体を見てどうこうでは――っ」
と、一歩引いて彼女の全身を視界に収めた。
美しく光沢を帯びた栗色の髪に、ちょっと性格がキツそうな青っぽい目。ほんの僅かに釣り目で、可愛いと美しいの良いところ取りをした丁度良い塩梅だ。
肩幅は少し狭くて女の子らしく、胸はしっかり主張して、全体はスラッとしたほどほどの細身。
…………いやこれ、反則だろ。
「……わかったよ。外見と性格は好みだ! むしろドストライクです!」
「――――――やだ、恥ずかしい……っ」
おい。本気で恥じらうな。マジで惚れちゃうからやめろ!
「でもネトラレはダメだからな! それで全部台無しだ!!」
「なっ――。寝取られのどこがダメなのよ!?」
「どこがダメかもわかってない時点で、完璧にアウトなんだよ!!」
「ダメなことはわかってるわよ! でもその背徳感が、愛を加速させるの!!」
おぅ……。割と最低な発言だぞ、それ……。
浮気する人の言い分を一行でまとめました、みたいな。
日本の男性芸能人がそれを言ったら、多分、二度と復帰できないか不倫文化の象徴となるか、二択を迫られる。
もう残念すぎてガッカリすぎて、言葉も出ない。
好感度も少し下がった……けど、それでもまだ九十パーセントぐらいあるな。面倒なことにならなきゃいいけれど。
「…………それに私は、お母さんのこと信じてるから」
「――ん? 今、なんて言った?」
よく聞こえなかったけれど、お母さんがどうのこうのって……。
「なんでもない! それより、教室に入るわよ!」
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ちなみにマノンは俺の昔の好みに合わせて無口キャラを装い、パティは目下権力に逆らっているためまだお口にチャック中だ。
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