神様、俺に主人公補正を

ナベコウ

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第1話 踊れ!クラス発表!

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4月8日。
自身の心の中のモヤモヤが空一面に映し出された様な曇天の中、一中来飛(いちなからいと)
は自信が通う浅山高校へと自転車を走らせていた。

「新クラス楽しみー!」
「可愛い子いっかなー」

後方から聞こえてくるそんな会話から逃げるように、ペダルを漕ぐスピードを速める。
今日から新学年、そして最終学年である高校生活3年目のスタートだ。
当然、今日1番のメインは新クラスの発表。
2年時のそれぞれのクラスに各生徒の所属先が貼り出されており、今日は皆その発表に胸を躍らせるあまりいつもより学校に到着する時間が早い。

「おいおい、いつも遅刻常習犯の小内がもう来てるぜ。まじ笑える。なぁライト。」

駐輪場で聞き慣れた声の方へ顔を向けると、予想通り小学校からの腐れ縁である笑田幸(わろたこう)の姿があった。

「皆はしゃぎ過ぎなんだよ。クラス替えで興奮してるとか、せめて中学生までだろ。」

と少し得意げになって笑田にそう返すが、かくいうライトも実際には30分早く目が覚めている。それどころか、全然眠れていない。

「ライトは去年色々あったからなぁ...でも俺が同じクラスだったら最高に笑える1年にしてやんよ!」

色々あった、と笑田が言う通りライトは2年時にたくさんのトラブルに直面した。
めでたい高校3年生初日にも関わらず、心の中まであいにくの天気なのはそのためである。
昨年の1件以来、この学校の生徒達の事があまり信じられなくなってしまい、自分が除け者にされている様な感覚が常につきまとう。
その中でも、どんな時も変わらず自分に接してくれる笑田の存在はライトにとってとても大きかった。

「さすがに中1から6年連続はねーって。」

と、笑いながら2人は教室の中へと入っていった。


「ねー!新クラスだよ新クラス!」
「分かった分かった。明音は朝からテンション高いんだから。」

眠気が覚めきっていないこんな朝っぱらから、肩を掴んでピョンピョンと飛び跳ねている山崎明音(やまざきあかね)に、
朝日麻衣(あさひまい)は呆れたように答えた。

「いいじゃなーい。高校生活最後のクラスなんだからさー!てゆーかさっきね、クラス替えで興奮するのは中学生まで、とか言ってる人いてさー!」

「はいはい、そんな人もいるでしょ。」

そう明音をなだめつつ、自身にとっても大きな新クラス、そして大きな1年になると覚悟を決めながら教室へと入っていった。

「わー皆早いねぇ。」

感心する明音の目線の先には黒板を前に、ガヤガヤとたくさんの人だからりが出来ていた。

「あ!明音ー!麻衣ー!私達同じクラスだよ!」

人混みをくぐる様にして出てきた新田絵里(にったえり)が興奮した様に2人に手招きしながら叫んでいる。

「えー!本当!?行こ!麻衣!」

高校生活のほとんどの時間を共有してきた明音や絵里と同じクラスで麻衣はほっと胸を撫で下ろした。ここにもう1人、藤崎桃(ふじさきもも)という友人も本来ならばいるのだが、
姿が見当たらない。

「あれ?桃はどこ行ったの?」

「桃はクラス結果が分かるなり芦早(あしはや)君の所行ったよ。」

さっきまで一緒にいたのか、絵里が答える。

「相変わらず仲良しねぇ。でも皆一緒で良かったよ。」

麻衣にはこの事実が心の底から嬉しかった。
が、それと同時に、いやそれ以上に安堵している事があった。

アイツと同じクラスではない。

それを心の中で2度、確認する様につぶやくと、これから自身の高校生活最後の1年の始まりを迎えるべく新3年1組の教室へと向かっていった。
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