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第3話 知ら示せ!俺の名前!
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「いやー名前呼ばれたからライトだけ卒業式しとるんかと思ったわ。」
「ハハ、もう本当に卒業しちまいたいぐらいだよ。」
式も終わり、真顔で乾いた笑い声を発しながらライトは誉と共に体育館から逃げるようにして教室へ向かっている。
知り合ったばかりの誉はともかく、普段笑ってばかりの笑田はこういう時こそ大声で笑ってくれても良かったのにと、今だ式での出来事を引きずっているライトはもう1つ重要な事に気がついた。
「そういやうちの担任誰なんだ?寝てて聞いてなかったよ。」
「安田や。俺は高宮先生の方が良かったんやけどなー。それともライトは吉成の方が良かったか?」
「からかうなよ。3年連続はごめんだぜ。」
安田守。(やすだまもる)今年26歳の男性教師だ。バレー部の副顧問を務め、3年生の担任を持つのは初めてだ。生徒からの人望は厚く、少しオドオドとしている感じが印象的である。
ライトと誉が教室に入ると、間もなくして他のクラスメイト達も続々と教室へ戻ってきた。
そして、新クラス特有のぎごちない空気感が漂い始める。
「なんか緊張感あるな。」
ライトがポツリと呟いた。
今まで他クラス同士で仲が良くても、いざ同じクラスになると少し緊張というか、ムズムズとした違和感を感じてしまうものである。
「は、はーい皆席着いてー」
ガララという音と共にぎこちなさ丸出しで安田先生が教室へと入ってきた。
「お、やすっち来たぞやすっち。」
と、いきなり今まで定着してもいないあだ名で笑田が先制パンチを浴びせるとクラス中が笑いに包まれた。先程のライトとは大違いである。
「さぁープリント配ったら早速自己紹介してもらうからなー!」
ゲッとライトは想定外の出来事に動揺した。
3年にもなって自己紹介やるのかよ...
明日までに提出しなければいけないプリントや、恐らくやすっちが個人的に作成したであろう学級通信をぼんやり眺めながら、このクラスでの自分のポジションとやらについて考えてみる。
自分で言うのもなんだが、昨年までだったら陽キャの部類にいただろう。
だから今年は陽キャと陰キャの境界線を行ったり来たりする中途半端なポジションといったところか。きっと、卒業する頃にはクラス内でカップルも出来ているのだろう。
自分には無縁の話だとライトは思っていた。
恋は人を良くも悪くも変えてしまう、一種の薬物の様な物。そうでなければ今の自分はもう少しマシだったのかも知れない、とため息をついた。
「よーし、自己紹介始めるぞー。一中からだな。」
やすっちの呼びかけでハッとし、ライトは我に返った。
しまった。名前の順的に俺が1番最初か...やべぇ、何言おう。
「朝日麻衣です。趣味は料理をする事です。」
おぉ~という声と共に拍手が起こった。
「麻衣の奴、男子の視線浴びまくりじゃない。ねー絵里?」
明音が恨めしそうに、斜め前の席に座る絵里に賛同を求める。
絵里はふふ、と笑いながら、
「高宮先生も中々男子にモテそうじゃない?」
と問いかけた
1組担任の高宮美里(たかみやみのり)は、24歳とやすっちよりも更に1つ若い新米教師でありながら、3年生の担任を任された女性教師である。しかしその経験の浅さ故に、かなりアガりまくっていた。
「はは、はいっ、朝日さんありがとうございましゅた。次は芦早君ですね!」
「今、ましゅたって言ったよね。」
「言った。明音も時々言う時あるけど。」
「ちょっと!?言ってないんですけど!」
ふーっと自身の紹介を終え、麻衣は深く息をついた。よし、今日はこれで終わり。
それにしても明音達席近くて良いなー、などそんな事を考えていると、芦早の自己紹介が終わったらしくクラスは再び大きな拍手に包まれた。中でも一際大きな拍手を浴びせているのが芦早の彼女である藤崎桃であった。
桃はポニーテールが良く似合う麻衣の仲の良い友人の一人である。
一方で芦早爽(あしはやそう)もサッカー部のキャプテンを務め、更にイケメン。
学業成績も常にトップクラスというハイスペック。
「朝日さん、料理が趣味なんだ!家庭的だなぁ。」
「あ、ありがとう...」
「あっ、いきなり気持ち悪かったかな、ごめんごめん。」
おまけに性格も良い。正に桃と芦早は学年を代表する美男美女のカップルである。
麻衣は全然大丈夫だよと芦早を気遣いつつ、自分は恋愛とか縁はないかなぁ...だって男の子苦手だもん。と少し桃と芦早が羨ましく思えた。
絵里も少し前に彼氏が出来たし、私と明音だけじゃん。独り身なの。
皆大人になっていくなぁと黄昏ながら、周囲に合わせるように淡々と拍手を続けていた。
隣、3年2組内でも同様に自己紹介が始まっていた。トップバッターはもちろんライトである。
「一中来飛。好きな食べ物はラーメンです。」
よしよしこれで良い。変にボケてみろ。たちまち滑るか笑田による悪意のある1人大爆笑で終わるのがオチだ。これでミッション成功。
と何か凄い事でもやってのけたかの様にライトは椅子にゆっくりの腰掛けた。
「よーし一中。授業中はさっきみたいに寝ちゃダメだからなー。ハハハ...」
終わった...
やすっちの笑い声以外、この空間で聞こえる笑い声はおろか、物音さえも聞こえないのが分かると、ライトは静かに机に顔を突っ伏した。
「ハハ、もう本当に卒業しちまいたいぐらいだよ。」
式も終わり、真顔で乾いた笑い声を発しながらライトは誉と共に体育館から逃げるようにして教室へ向かっている。
知り合ったばかりの誉はともかく、普段笑ってばかりの笑田はこういう時こそ大声で笑ってくれても良かったのにと、今だ式での出来事を引きずっているライトはもう1つ重要な事に気がついた。
「そういやうちの担任誰なんだ?寝てて聞いてなかったよ。」
「安田や。俺は高宮先生の方が良かったんやけどなー。それともライトは吉成の方が良かったか?」
「からかうなよ。3年連続はごめんだぜ。」
安田守。(やすだまもる)今年26歳の男性教師だ。バレー部の副顧問を務め、3年生の担任を持つのは初めてだ。生徒からの人望は厚く、少しオドオドとしている感じが印象的である。
ライトと誉が教室に入ると、間もなくして他のクラスメイト達も続々と教室へ戻ってきた。
そして、新クラス特有のぎごちない空気感が漂い始める。
「なんか緊張感あるな。」
ライトがポツリと呟いた。
今まで他クラス同士で仲が良くても、いざ同じクラスになると少し緊張というか、ムズムズとした違和感を感じてしまうものである。
「は、はーい皆席着いてー」
ガララという音と共にぎこちなさ丸出しで安田先生が教室へと入ってきた。
「お、やすっち来たぞやすっち。」
と、いきなり今まで定着してもいないあだ名で笑田が先制パンチを浴びせるとクラス中が笑いに包まれた。先程のライトとは大違いである。
「さぁープリント配ったら早速自己紹介してもらうからなー!」
ゲッとライトは想定外の出来事に動揺した。
3年にもなって自己紹介やるのかよ...
明日までに提出しなければいけないプリントや、恐らくやすっちが個人的に作成したであろう学級通信をぼんやり眺めながら、このクラスでの自分のポジションとやらについて考えてみる。
自分で言うのもなんだが、昨年までだったら陽キャの部類にいただろう。
だから今年は陽キャと陰キャの境界線を行ったり来たりする中途半端なポジションといったところか。きっと、卒業する頃にはクラス内でカップルも出来ているのだろう。
自分には無縁の話だとライトは思っていた。
恋は人を良くも悪くも変えてしまう、一種の薬物の様な物。そうでなければ今の自分はもう少しマシだったのかも知れない、とため息をついた。
「よーし、自己紹介始めるぞー。一中からだな。」
やすっちの呼びかけでハッとし、ライトは我に返った。
しまった。名前の順的に俺が1番最初か...やべぇ、何言おう。
「朝日麻衣です。趣味は料理をする事です。」
おぉ~という声と共に拍手が起こった。
「麻衣の奴、男子の視線浴びまくりじゃない。ねー絵里?」
明音が恨めしそうに、斜め前の席に座る絵里に賛同を求める。
絵里はふふ、と笑いながら、
「高宮先生も中々男子にモテそうじゃない?」
と問いかけた
1組担任の高宮美里(たかみやみのり)は、24歳とやすっちよりも更に1つ若い新米教師でありながら、3年生の担任を任された女性教師である。しかしその経験の浅さ故に、かなりアガりまくっていた。
「はは、はいっ、朝日さんありがとうございましゅた。次は芦早君ですね!」
「今、ましゅたって言ったよね。」
「言った。明音も時々言う時あるけど。」
「ちょっと!?言ってないんですけど!」
ふーっと自身の紹介を終え、麻衣は深く息をついた。よし、今日はこれで終わり。
それにしても明音達席近くて良いなー、などそんな事を考えていると、芦早の自己紹介が終わったらしくクラスは再び大きな拍手に包まれた。中でも一際大きな拍手を浴びせているのが芦早の彼女である藤崎桃であった。
桃はポニーテールが良く似合う麻衣の仲の良い友人の一人である。
一方で芦早爽(あしはやそう)もサッカー部のキャプテンを務め、更にイケメン。
学業成績も常にトップクラスというハイスペック。
「朝日さん、料理が趣味なんだ!家庭的だなぁ。」
「あ、ありがとう...」
「あっ、いきなり気持ち悪かったかな、ごめんごめん。」
おまけに性格も良い。正に桃と芦早は学年を代表する美男美女のカップルである。
麻衣は全然大丈夫だよと芦早を気遣いつつ、自分は恋愛とか縁はないかなぁ...だって男の子苦手だもん。と少し桃と芦早が羨ましく思えた。
絵里も少し前に彼氏が出来たし、私と明音だけじゃん。独り身なの。
皆大人になっていくなぁと黄昏ながら、周囲に合わせるように淡々と拍手を続けていた。
隣、3年2組内でも同様に自己紹介が始まっていた。トップバッターはもちろんライトである。
「一中来飛。好きな食べ物はラーメンです。」
よしよしこれで良い。変にボケてみろ。たちまち滑るか笑田による悪意のある1人大爆笑で終わるのがオチだ。これでミッション成功。
と何か凄い事でもやってのけたかの様にライトは椅子にゆっくりの腰掛けた。
「よーし一中。授業中はさっきみたいに寝ちゃダメだからなー。ハハハ...」
終わった...
やすっちの笑い声以外、この空間で聞こえる笑い声はおろか、物音さえも聞こえないのが分かると、ライトは静かに机に顔を突っ伏した。
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