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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます
15 ジャンと一緒にヴァレリーまで乗り込んで来ていました①
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「お待たせいたしました」
サロンに足を踏み入れた私は、ドレスの両端をつまみながら、深々と礼をする。
「随分と待たせたな。公爵令嬢ともなると、我々を待たせても何とも思わぬらしい。まったく……、この俺様をこんなに待たせるのは、国内では、そなたぐらいのものだぞ」
(相変わらずの俺様っぷりね……)
私は床を見つめたまま、心の中でそっと溜息を吐く。
「仕方がありませんわ、ジャン様。女性は身支度に時間がかかるものです」
突如、ヴァレリー嬢の声が聞こえてきて、私は一瞬、度肝を抜かれた。
ただの、男爵令嬢がなぜ、ジャンのコバンザメのように、のこのこと我が館まで付いて来ているのか。
常識的に考えればありえない。
しかし、ここは乙女ゲームの中であったことをすぐに思い出す。
ヒロインはどこにでも、やって来るのである。
なぜなら、当事者として、重要なイベントを目撃しなければならないからだ。
私がこのイベントについて記憶しているのも、ヒロインであるヴァレリー嬢の視点でこのイベントを経験したことがあるからである。
「ヴァレリーがそう言うのなら、まあ、仕方がないか。ヴァレリーに免じて許してやろう」
「ジャン様、そのような言い方はいけませんわ」
「ヴァレリーのことをいじめていたエレインのことを庇うだなんて、ヴァレリーは、相変わらず優しいな」
「そんなことはございませんわ、ジャン様」
「いや、本当に優しい。さすが聖女様だ」
「いやですわ、ジャン様」
(こんのぉ、バカップルども……! いったい、いつまでそのくだりを繰り返すのよっ!! おまえらは、満員電車の中で周囲の冷たい視線もものともせず、イチャイチャし続ける高校生かっ! 少しは気にしろ、周囲を気にしろ! この世はあんたたちだけの世界じゃないのよっ! ――って、ちょっと前世の意識が……、アラフォーを目の前にしたおばちゃんの小言が入ってしまいましたわ。でも、本当に、いい加減にしなさいよっ! このクソ女とバカ男っ!)
私は、ドレスの端をつまんだ中腰の姿勢で、いつまでこのイチャイチャを聞かされ続けねばならないのだろう。
この礼の姿勢も、筋トレになるのではないかというぐらい、なかなかキツいものなのであるが、私はそんなツラい姿勢を先ほどからずっと強いられたままである。
いい加減、足がプルプルしてきたところで、ようやくジャンの声が聞こえてきた。
「面を上げるがいい」
ジャンの声に、顔を上げた私は、中腰の姿勢を通常の立位の姿勢へと戻す。
ジャンの周囲には、ジャンだけではなく、側近のダミアンやアンリも揃っていた。
これもこのイベントをクリアしたことのある一プレイヤーとしては、想定の範囲内である。
二人は、攻略キャラでもあるのだ。
そして、案の定、彼らすべてのキャラの前に、パラメーターの数値がかぶさって見えていた。
サロンに足を踏み入れた私は、ドレスの両端をつまみながら、深々と礼をする。
「随分と待たせたな。公爵令嬢ともなると、我々を待たせても何とも思わぬらしい。まったく……、この俺様をこんなに待たせるのは、国内では、そなたぐらいのものだぞ」
(相変わらずの俺様っぷりね……)
私は床を見つめたまま、心の中でそっと溜息を吐く。
「仕方がありませんわ、ジャン様。女性は身支度に時間がかかるものです」
突如、ヴァレリー嬢の声が聞こえてきて、私は一瞬、度肝を抜かれた。
ただの、男爵令嬢がなぜ、ジャンのコバンザメのように、のこのこと我が館まで付いて来ているのか。
常識的に考えればありえない。
しかし、ここは乙女ゲームの中であったことをすぐに思い出す。
ヒロインはどこにでも、やって来るのである。
なぜなら、当事者として、重要なイベントを目撃しなければならないからだ。
私がこのイベントについて記憶しているのも、ヒロインであるヴァレリー嬢の視点でこのイベントを経験したことがあるからである。
「ヴァレリーがそう言うのなら、まあ、仕方がないか。ヴァレリーに免じて許してやろう」
「ジャン様、そのような言い方はいけませんわ」
「ヴァレリーのことをいじめていたエレインのことを庇うだなんて、ヴァレリーは、相変わらず優しいな」
「そんなことはございませんわ、ジャン様」
「いや、本当に優しい。さすが聖女様だ」
「いやですわ、ジャン様」
(こんのぉ、バカップルども……! いったい、いつまでそのくだりを繰り返すのよっ!! おまえらは、満員電車の中で周囲の冷たい視線もものともせず、イチャイチャし続ける高校生かっ! 少しは気にしろ、周囲を気にしろ! この世はあんたたちだけの世界じゃないのよっ! ――って、ちょっと前世の意識が……、アラフォーを目の前にしたおばちゃんの小言が入ってしまいましたわ。でも、本当に、いい加減にしなさいよっ! このクソ女とバカ男っ!)
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