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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます
14 我が館にジャンがやって来ました
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寝台の中、うとうととまどろんでいたところに、アンナの慌てふためいた声が聞こえてくる。
「お嬢様、お嬢様、大変です! ジャン様がお見えになりました!」
このイベントの顛末を知っている私は、たいして驚きもせず、
(来たわね)
と、心の中で呟き、寝台の中でギュッと拳を握った。
いよいよ、この婚約破棄・断罪イベントも佳境に入ってきたようだ。
私、公爵令嬢エレインは、魔女として断罪される。
父は爵位を奪われるから、私は何の身分も持たない、ただの一文無しとして、国を追われることになるはずだ。
「わかったわ、アンナ、支度をお願いね」
いくら伏せっているとはいえ、寝巻きのまま、聖堂騎士団の団長殿の前に出るわけにはいかない。
婚約者の間柄なら、まだそれも許されたかもしれないが、今のジャンと私は、何の関係もない、赤の他人だ。
公爵令嬢として、その身分に相応しい装いが必要である。
私は、アンナをはじめとする侍女たちの手を借りて、入念に身支度を整えた。
侍女たちは、コルセットで私のウエストをギュウギュウに締め上げる。
背骨が折れそうだ。
朝食に食べたものを戻してしまいそうなぐらい渾身の力で締め上げられると、私のウエストは、前世で見たグラビア・アイドルのごとき細さになった。
前世の成人式で着た振袖の、10倍は苦しい。いや、100倍か。
前世の記憶が蘇ってみて、あらためて思う。
昨日までよく、このような窮屈な装いに、毎日、平然と身を包んできたものである。
それに比べて、前世の世界で身に付けていた服装の何と楽だったことか……。
ジャージにスウェット、フリースにパーカー。着心地楽々で、ぬくぬくだった当時の装いが、今となっては懐かしい。
(レイヤーさんの写真、SNSで綺麗だなぁ、と眺めていたけれど。彼女たちも、こんなに苦しい思いをしていたのね)
前世の私は、ゲームと言えばもっぱらプレイするばかりだった。
『聖なる乙女と光の騎士たち』に関しては、ヴィネ様愛のあまり、少しばかりとち狂って同人誌を作ってしまった黒歴史は、ある……が、コスプレの経験はいまだかつてない。
ゲームをプレイする立場だった時にはまったく気付いていなかった。
綺麗な装いの裏には、このように人知れぬ努力が必要なのである。
ウエストが細くなったところで、とっておきの絹のドレスを身につける。
髪も結い上げてもらい、唇には丁寧に紅を刷く。
騎士たちが甲冑で戦支度をするのと同じ。
これが、公爵令嬢としての戦支度だ。
今の私は、前世の世界の記憶や自我と、これまで生きてきた公爵令嬢エレインとしての記憶や自我が混じり合った状態にある。
かつての世界を懐かしみ思い出しつつも、今の世界の常識も習慣も礼儀も理解できるのだ。
我ながら不思議な感覚である。
鏡の前で、身支度の最終チェックをした私は、ジャンの待つサロンへと向かった。
「お嬢様、お嬢様、大変です! ジャン様がお見えになりました!」
このイベントの顛末を知っている私は、たいして驚きもせず、
(来たわね)
と、心の中で呟き、寝台の中でギュッと拳を握った。
いよいよ、この婚約破棄・断罪イベントも佳境に入ってきたようだ。
私、公爵令嬢エレインは、魔女として断罪される。
父は爵位を奪われるから、私は何の身分も持たない、ただの一文無しとして、国を追われることになるはずだ。
「わかったわ、アンナ、支度をお願いね」
いくら伏せっているとはいえ、寝巻きのまま、聖堂騎士団の団長殿の前に出るわけにはいかない。
婚約者の間柄なら、まだそれも許されたかもしれないが、今のジャンと私は、何の関係もない、赤の他人だ。
公爵令嬢として、その身分に相応しい装いが必要である。
私は、アンナをはじめとする侍女たちの手を借りて、入念に身支度を整えた。
侍女たちは、コルセットで私のウエストをギュウギュウに締め上げる。
背骨が折れそうだ。
朝食に食べたものを戻してしまいそうなぐらい渾身の力で締め上げられると、私のウエストは、前世で見たグラビア・アイドルのごとき細さになった。
前世の成人式で着た振袖の、10倍は苦しい。いや、100倍か。
前世の記憶が蘇ってみて、あらためて思う。
昨日までよく、このような窮屈な装いに、毎日、平然と身を包んできたものである。
それに比べて、前世の世界で身に付けていた服装の何と楽だったことか……。
ジャージにスウェット、フリースにパーカー。着心地楽々で、ぬくぬくだった当時の装いが、今となっては懐かしい。
(レイヤーさんの写真、SNSで綺麗だなぁ、と眺めていたけれど。彼女たちも、こんなに苦しい思いをしていたのね)
前世の私は、ゲームと言えばもっぱらプレイするばかりだった。
『聖なる乙女と光の騎士たち』に関しては、ヴィネ様愛のあまり、少しばかりとち狂って同人誌を作ってしまった黒歴史は、ある……が、コスプレの経験はいまだかつてない。
ゲームをプレイする立場だった時にはまったく気付いていなかった。
綺麗な装いの裏には、このように人知れぬ努力が必要なのである。
ウエストが細くなったところで、とっておきの絹のドレスを身につける。
髪も結い上げてもらい、唇には丁寧に紅を刷く。
騎士たちが甲冑で戦支度をするのと同じ。
これが、公爵令嬢としての戦支度だ。
今の私は、前世の世界の記憶や自我と、これまで生きてきた公爵令嬢エレインとしての記憶や自我が混じり合った状態にある。
かつての世界を懐かしみ思い出しつつも、今の世界の常識も習慣も礼儀も理解できるのだ。
我ながら不思議な感覚である。
鏡の前で、身支度の最終チェックをした私は、ジャンの待つサロンへと向かった。
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