37 / 106
第二章 魔王の待つアヴァロニア王国に向けて旅立ちます
11 さあ、魔王の城に突入ですわ! ②
しおりを挟む
私はいったん町を出ると、身を隠せる程度の灌木の茂みを見つけ、そこで身支度を調えることにした。
1ヶ月、慣れ親しんだ庶民の服を脱ぎ捨て、令嬢らしいドレスに久しぶりに袖を通す。
髪を一人で結い上げるのは、一苦労だったが、これもなんとか、前世の記憶を使いクリアした。
侍女に身の回りの世話をされた経験しかない、ごくふつうの令嬢なら、無理だったろう。
完璧に結い上げることはさすがに難しかったが、今回の設定なら、多少、髪が崩れていた方が、よりリアリティが出るはずだ。
次に、私は、城の主門を守る門衛のステータスを確認した。
はったりにごまかされるような知性の持ち主でないと難しい。
さらに、はったりが通じなかった時のため、できるだけ体力や筋力の低い者がいい。
理想的なステータスを持つ門衛が現れるまで、私はしばらく、門の近くで待つことにした。
ずっと、門に貼り付いていては怪しまれてしまう。
単なる市民の振りをして、街路を歩きながら、各門に配置された門衛たちのステータスを確認して回る。
三日間、城の主門の近くで様子をうかがっていた私は、理想的な門衛を見つけることができた。
知性は7だ。
これなら、私の作り話にも騙されてくれることだろう。
彼が当番として交替したのを見はからって、私はいよいよ突入を決めた。
作り話の状況にリアリティを出すために、ドレスと顔に土で汚れをつけてから、私は衛兵の前に進み出る。
元公爵令嬢として、これまで身に付けてきた所作の限りを尽くして、とっておきの礼をした。
さらに、これまたとっておきの令嬢スマイルを浮かべ、はったりをかます。
「突然失礼いたします。私、聖カトミアル王国から参りました。エレイン・ド・サヴァティエと申します。聖堂騎士団長ジャン・ノエル・ド・ベルナールの婚約者でございます」
門衛は、急に現れた身分の高い他国の貴婦人に対し、緊張で張り詰めたような表情を浮かべつつ、敬礼をした。
優雅ではあるが、状況のリアリティを演出するため、途中、息が上がったような演技も入れつつ、私は話を続ける。
「国を代表する友好使節団の代表として、貴国まで参ったのですが、……ハァ……途中、盗賊の一味に襲われてしまいまして……、私一人だけ……なんとかここまで辿り着くことができたのです。使節団として持参した、王からの親書も、宝物も、すべて賊に奪われてしまいました……!」
私は、そこで大袈裟に泣き崩れて見せる。
「ああ、きっと、私以外の者は、皆、賊に殺されてしまったに違いないわ!」
両手で顔を覆いながら、指の隙間からそっと衛兵の様子を窺う。
──大丈夫。いける。
案の定、知性7の彼はこちらの話を信じたのか、同情の色を、その顔に浮かべている。
「このような体たらく、ヴィネ陛下に合わせる顔など持ち合わせてはおりませんが、せめてお詫びだけでも伝えていただきたく……」
「お、お嬢様、私が事情を上の者に報告して参りますから……」
(報告なんてされて、その上司が頭の回る人物だったらまずいでしょ!)
一呼吸置いて、私はまた泣き崩れて見せる。
「ああ、アンナ、私を庇って、盗賊の刃に……!」
(勝手に殺してごめんなさい、アンナ)
嘆きながら、私はその場で派手に卒倒して見せた。
(さあ、頼むわ。城門の前で倒れた身分ある貴婦人を、城内に入れないなんてことないわよね? 私を城の中に入れて頂戴!)
1ヶ月、慣れ親しんだ庶民の服を脱ぎ捨て、令嬢らしいドレスに久しぶりに袖を通す。
髪を一人で結い上げるのは、一苦労だったが、これもなんとか、前世の記憶を使いクリアした。
侍女に身の回りの世話をされた経験しかない、ごくふつうの令嬢なら、無理だったろう。
完璧に結い上げることはさすがに難しかったが、今回の設定なら、多少、髪が崩れていた方が、よりリアリティが出るはずだ。
次に、私は、城の主門を守る門衛のステータスを確認した。
はったりにごまかされるような知性の持ち主でないと難しい。
さらに、はったりが通じなかった時のため、できるだけ体力や筋力の低い者がいい。
理想的なステータスを持つ門衛が現れるまで、私はしばらく、門の近くで待つことにした。
ずっと、門に貼り付いていては怪しまれてしまう。
単なる市民の振りをして、街路を歩きながら、各門に配置された門衛たちのステータスを確認して回る。
三日間、城の主門の近くで様子をうかがっていた私は、理想的な門衛を見つけることができた。
知性は7だ。
これなら、私の作り話にも騙されてくれることだろう。
彼が当番として交替したのを見はからって、私はいよいよ突入を決めた。
作り話の状況にリアリティを出すために、ドレスと顔に土で汚れをつけてから、私は衛兵の前に進み出る。
元公爵令嬢として、これまで身に付けてきた所作の限りを尽くして、とっておきの礼をした。
さらに、これまたとっておきの令嬢スマイルを浮かべ、はったりをかます。
「突然失礼いたします。私、聖カトミアル王国から参りました。エレイン・ド・サヴァティエと申します。聖堂騎士団長ジャン・ノエル・ド・ベルナールの婚約者でございます」
門衛は、急に現れた身分の高い他国の貴婦人に対し、緊張で張り詰めたような表情を浮かべつつ、敬礼をした。
優雅ではあるが、状況のリアリティを演出するため、途中、息が上がったような演技も入れつつ、私は話を続ける。
「国を代表する友好使節団の代表として、貴国まで参ったのですが、……ハァ……途中、盗賊の一味に襲われてしまいまして……、私一人だけ……なんとかここまで辿り着くことができたのです。使節団として持参した、王からの親書も、宝物も、すべて賊に奪われてしまいました……!」
私は、そこで大袈裟に泣き崩れて見せる。
「ああ、きっと、私以外の者は、皆、賊に殺されてしまったに違いないわ!」
両手で顔を覆いながら、指の隙間からそっと衛兵の様子を窺う。
──大丈夫。いける。
案の定、知性7の彼はこちらの話を信じたのか、同情の色を、その顔に浮かべている。
「このような体たらく、ヴィネ陛下に合わせる顔など持ち合わせてはおりませんが、せめてお詫びだけでも伝えていただきたく……」
「お、お嬢様、私が事情を上の者に報告して参りますから……」
(報告なんてされて、その上司が頭の回る人物だったらまずいでしょ!)
一呼吸置いて、私はまた泣き崩れて見せる。
「ああ、アンナ、私を庇って、盗賊の刃に……!」
(勝手に殺してごめんなさい、アンナ)
嘆きながら、私はその場で派手に卒倒して見せた。
(さあ、頼むわ。城門の前で倒れた身分ある貴婦人を、城内に入れないなんてことないわよね? 私を城の中に入れて頂戴!)
0
あなたにおすすめの小説
王子よ、貴方が責任取りなさい
天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」
王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。
それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。
だけど、私の答えは……
皆さんに知ってほしい。
今代の聖女がどんな人物なのか。
それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる