見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

最終章 王城パーティーとスタンピード襲来

４９話

　マールがデスギガントナイトを全て排除した時、アイリと別れた地からモンスターの群れに駆け出して行ったイリアとレイは眼前に立ちはだかるサイクロプス種の上位種であるサイクロプスナイトやガードナー、ファイターなどと相対していた。

『私は左から攻めます。レイは右から攻めて行って下さい。攻撃方法はレイの好きにしていいですよ』

『え――えぇぇぇ、好きに攻撃していいの？それじゃあ、また後でねぇ～』　

　レイはイリアの言う事を聞くと直ぐに眼前に広がっているモンスターの群れの右側へ駆け出して行った。

『全く、レイは落ち着きが無いですねぇ。まあ良いでしょう。では、私もレイに後れは取りたくないですからね。行くとしましょう』

　イリアはそう言うとモンスターの群れの左側へ向かって走り出した。

　モンスターの群れの右側から攻めることになったレイはモンスター達をどうやって倒すかを考えていた。　

『う～～ん、どうしようかな。あ、そうだ折角だし盛大に派手な攻撃がしたいよね。……となるとやっぱりあれしかないかな』

　レイはモンスターの群れに突撃しながら全身に赤黒い炎を纏わせ始めた。次第にレイの体そのものが炎と化していく。

『うちの炎は地獄の業火だからねぇ～。みんなもの凄く熱いと思うけどさ。……でもねあまり心配しないで大丈夫だからね。うちの地獄の業火は一味違くてもの凄く熱々だから直ぐに溶けてなくなっちゃうからさ』

　レイは完全に炎と化してモンスターの群れに突っ込む。

　左側に陣取っていたイリアはレイの大胆で派手過ぎる攻撃の手段に呆れかえり頭を横に何度か振る。

『全くもう。レイは後先を考えずにスキルを使い過ぎです。どうするんですか全く、あれではモンスターの素材が全て台無しではないですか。あ～～、――素材どころか魔石まで燃やし尽くしているじゃないですか、これは素材と魔石確保のためにも私が頑張るしか無いですね。……後でちゃんと注意しないと』

　イリアはレイの戦闘の様子を一通り見るとレイが燃やし尽くした素材や魔石の分も自分が回収しようとモンスターの群れへ向い種族が進化して新しく覚えたスキル風化で体を風へと変える。そして、次々とモンスター達の首だけを切り落とし一瞬で倒して行く。


　十数分後、アイリによって千数百体まで減らされていたモンスターの群れは一体残らずマールとイリア、レイによって全滅させられていた。

　モンスターの群れを全滅させたマール達は後方で戦闘の成り行きを見守っていたアイリとマルティそして王都東の防衛を任された騎士団と合流してモンスターの素材と魔石の回収を始める。

「それにしても本当に凄い数の素材と魔石ね。レイが前方にいた約半分のモンスターを素材や魔石ごと消し炭にしたときはどうなるかと思ったけど、流石一万体を超えてた大群だけはあるわね。レイが消し炭にしたモンスターを差し引いても凄い数の素材と魔石だわ」

　アイリがオーガ種やサイクロプス種の素材や魔石を回収しながら今回のスタンピードで東門に向かって来たモンスターの数が尋常では無かった事を改めて嚙みしめながら呟くと数百体のモンスターを消し炭にした張本人であるレイが狼ミミを垂らして言う。

「調子に乗っちゃってごめんなさい。……進化した時に新しいスキルを覚えて……それで、どうしても使ってみたくて……本当にごめんなさい」

　アイリは自分のすぐ傍まで来てミミを垂らしながらあやまり意気消沈しているレイを見ると、レイの方を向き屈むと、レイと目線を合わせ頭を撫でながら微笑みを浮かべて話しかける。

「大丈夫だよレイ。私は別に怒ってるわけじゃないからでもね、今度からは例えやってみたい事が出来たとしても直ぐに行動に移さないこと、行動に移す前に自分でこの行動をしたらその後どうなるのか考えてから行動するのよ。いい約束できる？あ、でも考えるのはその余裕がある時だけで良いからね。ピンチの時にそんな悠長に考えていたら危険だからね」

「うん。約束できる」

「そう、約束出来てレイはとっても偉いわね。――ほらこの話はこれで終わりさっさと素材と魔石を回収して一度王城に戻りましょう」

　そして王都の東側を守護していたマール達とそこに合流したイリアとアイリは素材と魔石の回収を終え、騎士団と一緒に一度王城へ戻ることにする。