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最終章 王城パーティーとスタンピード襲来

51話

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 大会議室に足を踏み入れたケイトはナビーを同行させてベロニカ達を大会議室の隣に設けられている休憩室に向かわせると大会議室内を見回した。

 すると王国上層部のお偉いさん達が大テーブルを囲んで話し合っている中にアイリとマルティを見つける。

 ケイトとナビーは大会議室の近くを通りかかった兵士を捕まえ、国王に繋いでくれる様に頼み会議室の入り口の前で少しの間待機する。

「剣聖ケイト様、ナビー様お待たせしました。国王陛下が話を聞くとのことです。こちらにどうぞ」

 ケイト達二人は先程国王への繋ぎを頼んだ兵士の案内のもと大会議室へ入り国王陛下など国の重鎮達とアイリ、マルティがいる席へと連れて行かれる。

「国王陛下、剣聖ケイト様ならびにナビー様をお連れしました」

「うむ、ご苦労であった。仕事に戻ってくれ」

「はっ」

「……さて、話を聞かせてくれるか。ケイト殿にナビー殿」

 国王に報告するようにうながされたケイトとナビーは先程王都の西門に迫って来ていたモンスターの群れを殲滅したことを伝た。そして、国王とその場にいる軍や騎士団の重鎮達に隣の休憩室で少し休んでから南門に向かう事を伝え、その場で合流したアイリ、マルティと共に仲間達の待つ休憩室へと向う。

***

 ケイト達が大会議室の隣にある休憩室に入ると中から男の弱弱しくも騒々しい声が聞こえて来る。

 休憩室に入ったケイト達はその男の声を一旦無視して部屋の中を見回す。

「……あ、みんな戻って来たか。こっちだこっち」

 ケイト達が部屋の中を見回していると部屋の奥の方から自分達を呼ぶベロニカの声が聞こえてくる。

「……やっと戻ってきたか。……それで今後の方針は、軍議はどのように纏まったんだ」

「ああ、現状最もかれつな戦場である王都南門を死守しつつ、今も南門の最前線で奮闘しているクロード達を全力で援護することになった。後は現場の判断で臨機応変に対処してくれとのことだ」

 ケイトの話を聞いて一番窓際のベッドで横になり休んでいたマールが体を起し話し出した。

「うむ、妾達ももう少し休んだら主達の応援に向かった方が良いかも知れんのう。……どうやらあの戦場には主達が相手にしているモンスター以外にも少し面倒くさい輩が居るみたいのう」

「え!?モンスターの他にもまだ何か居るのか!?」

 ベロニカの疑問にマールは頷きながらその疑問に答える。

「うむ、まだお前達の魔力察知には引っかからない距離にそ奴らは居ると言う事じゃ。……うむ、この魔力の感じは……どうやらこ奴らは魔族のようじゃな。それにそ奴らよりも強い魔力を待った奴が少し離れた所におるのう。これは悪魔族か!!」

「な!なに!急に大きな声を出してどうしたのよ?……そ、その悪魔族がいると何か不味い訳でもあるの?」

 突然大声を出して立ち上がったマールにびっくりしたアイリが少し不安げに聞いてみるとマールは

「うむ……正直に言うととても不味いのじゃ。この悪魔族の階級にもよるのじゃが兎に角注意するべきは奴らの固有能力じゃ。悪魔族は必ず一人につき一つ固有能力を持っていてのう。その固有能力が一つ一つ強力なのじゃよ。じゃから素の戦闘能力が弱い下級の悪魔族でも侮ってはならぬのじゃ。……下級の悪魔族でも相当に厄介なのじゃ……もしこの魔力の持ち主が下級以上中級や上級、更にその上の七つの大罪クラスの悪魔族だとしたらまだ成長中の主達だけでは荷が重いかも知れぬ」

「え、ちょっちょっと待って下さい。わ、わたくしは自身のジョブの関係上幼い頃から教会で育ちましたが悪魔族などと言う種族は一度も聞いた事がありません。……悪魔族とは魔族の事ではないのですか?」

「うむ、妾も三百年以上生きているがこの目で悪魔族を見たことは一度もない。……じゃが妾の故郷である龍王国には古から残る数々の伝承や古文書の類が多く残っているのじゃが、その全てに魔族は悪魔族の手下であると記されている。そして悪魔族の恐ろしさもじゃ。……そしてお主らの認識も改めさせてもらうが元来魔王とは魔族の王の事ではなく悪魔族の王の事を指すのじゃ。そして、その王の下には何時も七つの大罪と言う強力な力を持つ七人の最上位の悪魔族が侍っている。その強力な力の一つがお主達も良く知る『魅了の魔眼』じゃ」

「……!!『魅了の魔眼』ってシリウスさんの」

「うむ、主からその者に付いては効いておるのじゃ。……しかし、そこが妾はげせぬのじゃ。七つの大罪シリーズの固有能力は本来悪魔族の者にしか発現することがないはずなんじゃが、なぜそのシリウスとやらに発現したのか。全く持って謎なのじゃ」

「……まあ、そのシリウスのことは後で本人にでも聞き出せばいいだろ。今はこの城の地下牢に収監されてるわけだし、あたい達はとりあえずクロード達の救援に行こうじゃないか」

「うむ、そうじゃなそろそろ妾達も南門の最前線に向かうとするかのう」

 マールはそう言うと仲間達を連れて戦場に向かおうとしたが、そこで待ったをかける男の声がした。

「ま、待てお前達まさか今から南門の戦場へ行く気なのか。……ははは、は、は、は、あんな奴のためにあんな危険な所に行くのは止めておけ。……は、は、そんな事より俺のしもべにならないか、あのクロードとかいう奴にモンスター共を命を懸けて倒させてあいつが死んで残ったモンスターを俺様の隊が殲滅すればその功績で子爵くらいにはなれるからな。お前達には楽な暮らしをさせてやるし可愛がってやるぞ。どうだこの話乗るか。いや乗るに決まっているなにせ第一騎士団団長である俺の提案だからな。なあそうだろ。だからさっさと俺と俺の部下の怪我をお前達の魔法で直せ」

 マール達が集まっていた窓際のベッドから少し離れたベッドで横になっている四肢を失くし包帯で体全体をす巻きにされていた男が息も絶え絶えながらもそうまくし立てて来る。

 第一騎士団長のとんでもない言葉を聞いたマールは一歩その男が横になっているベッドに近づくと腰に左手を当て右手を騎士団長に(ビシッ)と指して鋭い目で睨みつけ

「寝言は寝て言うのじゃ小童。確か第一騎士団の団長だったのう。この戦いが終わったらこの国の王に報告するから一応顔だけは覚えておいてやるのじゃ。じゃがなこれ以上その薄汚い口を開いたら色々な意味で再起不能にしてやるから覚悟するのじゃいいな。では皆……主の下へ向かうとするかのう」

 マールは最後に軽く殺気を騎士団長に放って気絶させ黙らせると皆を連れて休憩室を出て行く。


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