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最終章 王城パーティーとスタンピード襲来

52話

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 王城を出たマール達はクロード達がいる南門の最前線へ向かいながら話していた。

「……のう。あまりにも失礼じゃったから結構きつめに言ってしまったがさっきのあの男は一体誰じゃったんじゃ。……万が一にも無いとは思うが……もし主の知り合いじゃったら後で主があの男に色々と言われるんじゃないかのう」

「ああ、その事でしたら心配いりませんよマールさん。私はマスターのナビゲーターとして生まれたのでマスターが見た物聞いた物など色々とマスターと共有しているのですが……あの男はマスター達が配属された南門の戦場の指揮を任されていた第一騎士団の団長で、マスター達に『南門に配属された冒険者の助力は必要ない。お前達はママのオッパイでも飲んでいろ』と言って自分達だけでモンスターの群れに挑んで一瞬で敗北して退場してただの無能ですから私達は気にしなくて良いですよ」

「なに!あのす巻きクロード達にそんなこと言ったの。絶対に許せないわね。王城に戻ったら言葉だけじゃなくて軽くど突いてやろうかしら」

「なんじゃ。それじゃあ何も悩む必要もないのじゃ。……さて、そろそろ最前線のようじゃな。向こうから戦闘音が聞こえてくるのじゃ」

 マールはそう言うとドラゴン形態になり広大な空へと飛びあがり、まだ遠くにある最前線の方を見据える。

『うむ、ここから主達の所まで行くのはちと時間が掛かるのう。……よし、子供達よお主達は体の大きさを小さくすることは出来るかのう』

 マールの質問に代表してイリアが答える。

『はい。私達はみんな体を小さくすることが出来ます。大体五十センチ位でしょうか』

『うむみな、妾の背に乗るのじゃ。子供達はナビー達に抱えてもらうといいのじゃ。……うむみな、ちゃんと妾の背に乗ったのう。では、主達の下へ向かうのじゃ』

***

 クロード達がドラゴンの群れの相手をし始めて一体どれ程の時間が経っただろうか。

 永遠にも思える程の濃密な数十分、ドラゴンを倒し続けたクロード達は徐々に終わりの見えて来たドラゴンの群れに胸をなでおろす様な気持ちになる。そして、自分達がいる戦場から遠く離れた場所からこちらの様子を監視している複数の者達の存在を気にかけていた。

「ふんっ、今のところ手を出す気はない様だけど、俺達としては不意打ちをされる可能性が少しでもあるのは無視できないからな…………」

 クロードは目の前のSランク下位のロックドラゴンを切り伏せつつ、少し離れた所で一緒に戦っているレイアとボロの様子をうかがう。

「流石にこの場をあの二人だけに任せるにはまだモンスターの数が多すぎるか…………」

 クロードが自分の気配察知のスキルに引っ掛かっている五人程の怪しげな者の気配を警戒しながら自分に寄って来るモンスターを片っ端から切り捨てていると、気配察知の範囲に王城の方からこの戦場に近づいて来る複数の気配を感知する。

「……この気配はマール達か。……と言う事は他の戦場のスタンピードは無事に終息したのか?……まあ何にしてもここに来て頼もしい援軍が来てくれたな。……レイア、ボロ、一度後方に引いてマール達と合流するから魔法で近場にいるモンスターを攻撃して牽制しながら引くよ」

『はい。わかりました主様。ボロ行きますよ』

『わかったよママ』

 後方に引くことにしたクロードとレイア、ボロは各自近くまで近づいて来るモンスター目がけて範囲魔法のウィンドストーム、ブリザードストーム、影剣山を放ち後方に後退する。

***

 クロード達が後方へ後退するのを一番後方から見ていた魔王軍四天王補佐の男は、自身の伝達魔法で近くで自分と同じく戦場を観察している四人の部下に自分はこの場を離れ本国へ戻る事と、部下達にはこの場に残りこのスタンピード作戦を最後まで見届けてから戻って来るように伝えてその場を離れた。

 四天王補佐の男は本国に戻る前に敵国であるクリエール王国の本拠地である王城に密かに侵入し王城の地下にある地下牢獄へと向かっていた。

「……全くたまたま我々魔族の血を少し引いていただけの雑種のくせに大罪の一つ『色欲』をその身に宿すとは……私個人としてはあの者を我が魔王国に引き抜くのは反対ですが四天王筆頭のあの方に命じられては致し方ありませんしね。…………はぁ~、あの者が囚われている牢は……こちらですか」

 四天王補佐の男は自身の魔力を辺りに広げこの地下牢獄に囚われているシリウスの魔力を感知するとその場所に向かって歩き出す。

***

 ここはクリエール王国王都クエールの王城地下牢獄の最深部にあるとある独房。

 国家反逆の大罪人であるシリウスはこの独房にスキル封じの鎖にがんじがらめにされた状態で収監されている。

「くそっ、何故この俺がこんな目にあわないといけないんだ。……絶対に……絶対に……絶対絶対絶対絶対……絶対に許さないぞ。……どんな手を使ってでもクロードとその仲間達、そしてあの女共を殺してやる。……クク……クク……クヒ……クヒヒ……」

「……そうか、そんなにあの者が許せないのならば……我々が貴方に力を貸してあげなくもありませんよ」

「……ん?何だお前は……どうやってここまで来た」

「………………」

「……ふん、何も語る気は無しか。……まあ良い。それで……どうやってこの俺に力を貸すと言うんだ?」

「……ええ、それについてはこの牢獄を出てからにしましょか」

 四天王補佐の男はそう言うと鉄格子に手をかけへし折ると、独房の中に入り懐から球体の物を取り出しその球体をシリウスに絡みついているスキル封じの鎖に近づける。

 するとたちまちスキル封じの鎖がジャラジャラとその力を失い崩れ落ちて行く。

「……では行きましょうか。シリウスさん」

 四天王補佐の男とシリウスはこうして誰にも気付かれることなく静かに王都クエールを去って行った。


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