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第二部【ミーガン子爵家再興編】 第一章 『フェンドラム山脈のドラゴン族とクラン設立』

2話

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 サブマスが退室するのを見届けた国王はこちらに向き直り話し始める。

「……ではクロード男爵今度はこちらの話なのだが、その前に君達は全員男爵とそういう関係なのだろうか」

「そういう関係と言うと?」

「……えい!!婚約関係にあるのかと聞いておるのだ!!」

「……!?あ、/////コホン、ええ、俺達は全員婚約関係にあります!!それで、何故その様な事を?」

「うむ、……そ、その娘が……娘がお主に一目惚れしたからお主のもとに嫁ぎたいと言ってこちらの話を一切聞かないんだ。第二王女のルーチェが嫁ぐには本人の年齢が十六歳になるまで無理だし、第一あの子が惚れているお主の爵位が低すぎるのだ。到底上手く行くものではない。そう本人に話したら……話したらな!!「そんなこと言うなんてお父様なんて嫌いになるから」なんて!!言うんだぞ!!もう俺どうしたらいいんだよ!?あの子を誰にも嫁がせたくないが、あの子に嫌われるのはもっと嫌だ!!……よってお主をなんとしてでも伯爵以上まで爵位を上げさせることにした。絶っ対に…………娶ってもらうからな!!」

「…………え~~!!…………それって決定事項なんですか」

「…………当たり前だ。……さて、本題に入るが、昨夜、極悪人シリウスが地下監獄を脱獄しているのが発覚した。見張りに立っていた兵達が軒並み刺殺されていたため何者かが監獄に侵入し極悪人シリウスを連れ去ったと考えられる。……一応お前達には知らせておいた方がいいと思ってな。後ミーガン家の再興だが借金奴隷として売られてしまった子爵と夫人を見つけてからになるからそれまでこの件は保留とする。私からの話は以上だ。これから褒美の件で宰相に宝物庫へと案内させる。……あ、男爵、お主の屋敷を王都の貴族区に用意することになったからな。屋敷の鍵は明日渡すから一日は王都に滞在するように。ではな」

 国王はそう言うと不機嫌そうにムスッとした顔で応接室を出て行った。

「……と言うことなのでここからは私が貴殿らを宝物庫まで案内させていただく。では付いて来てくれ」

 宰相の後に続いて応接室を出てそのまま少し歩き王城の地下一階にある宝物庫に着いたクロード達は宝物庫前で宰相と別れると宝物庫の警備をしている兵士と中に入る。

「……色々な高価な品が保管されているんですね」

「ええ、何しろ王国の宝物庫なので国王陛下や王族の方々に毎年貴族の方達や商人から届けられる高価な品や珍しい品が納められています」

「成程」

 クロードは兵士の話を聞きながら宝物庫に納められている品々を鑑定して行った。

(ん~、ケイ姉達が王国に返却した武器や防具以上の物は無いかぁ。俺がベロニカとナビーの新装備を作ろうと思っていたし、ケイ姉達の装備も俺が作るか)

「ねぇ、ケイ姉達の装備も俺が作って良いかな。良いのなら今回の褒美は三人の新装備までのつなぎの武器で良いと思うんだけど。どうかな」

 クロードとケイト、アイリ、マルティの議論の結果三人の武器と防具もクロードが作ることになり、三人はそれぞれ炎魔剣フリート、グレートフレイムリザードの尾を使った火炎杖、エルダートレントの枝を使った大樹杖を選んだ。

 宝物庫を後にしたクロード達は王城を出ると夕食まで自由時間とし各自思い思いに過ごす。

 クロードはナビーを連れてケイト達が宿泊している宿に向かい宿変更の手伝いをする。

「みんなこれで荷物は全部なの」

「ええ、シリウスと離れてからは色んな街を巡って依頼を受けていたから、私達案外荷物が少ないのよね」

「成程ね。通りで最後に会った時より大幅に強くなっていた訳だ。……とは言え、荷物は少ないと言ってもマルティさん以外の二人は相変わらず整理整頓がなってないなぁ。これはひどい。特にケイ姉、これを見たらおじさんとおばさんが何って言うか」

「//////!!ク、クロード!!お前は一言多いんだ。全く、私はこれでも少しはましになっているんだ」   

「まあ、ケイ姉とアイリさんの片付け下手は置いといて、それじゃあチェックアウトして早く俺達の泊まっている宿に行こう」

 クロード達が宿泊している宿に着くと既に時刻は夕食時となっており、宿の食堂は食事をしているお客で混雑していた。

「思ったより時間が掛かっちゃったね」

 クロードがケイトとアイリの方をチラッと見ながら言うと――――

「……悪かったな。私とアイリの整理整頓がなっていなくて」

 ケイトはばつが悪そうに言いその言葉を受けてアイリが「私は貴方ほどひどくないわよ」とボソッと呟く。

 するとアイリの言葉を聞いていたマルティが――――

「わたくしから言わせればお二人の整頓の出来なさに殆ど違いはありません」と言う。

 ケイトとアイリはマルティに堂々と貶されていた。

***

 翌日、クロード達は午前中から王城の応接室に来ていた。

 主な目的は国王陛下から屋敷の鍵を受け取るためだ。

「ではこれが屋敷の鍵と屋敷の場所が書かれている地図だ受け取れ。よし、これで当初の予定は終わったな」

「ええ、では俺達はこれで――――――」

「ではこれからある人物と会ってもらう。……ゴホン、ルーチェ入って来なさい」

 国王の言葉に応じる様に部屋の扉が二度ノックされ次いで幼い少女の声で「失礼いたします」と声がし、銀の長髪ツインテールで少し幼さが残るが聡明さを感じさせる顔立ち、そして活発的な性格なのか肌は健康的な小麦色をしている美少女が入って来た。

「……ここに座りなさい」

 国王は自分の隣のソファーに少女を座らせる。

「うむ、男爵、紹介しよう。この者がお主に娶ってもらう予定の第二王女のルーチェだ。ルーチェ、男爵に挨拶しなさい」

「はい。お父様。只今紹介にあずかりました第二王女のルーチェと申します。近い将来男爵に嫁ぐことになっております。不束者ですがどうぞよろしくお願いします。みな様もよろしくお願いしますね」

 ルーチェはクロード達に無難な挨拶をすると「それでは私これから公務がありますのでこれで失礼します」と言って部屋から出て行く。

 入って来て、挨拶して、出て行ったルーチェの瞬間的に吹く突風の様な行動に部屋にいた全員が呆気に取られているとルーチェが去って行った廊下の方から――――

「よっしゃー!! やりましたわ!!大好きなクロード様とお話しできましたわ。しかも、好きなパーティの『天の祝福』と『銀狼の牙』のみな様とも挨拶出来ましたし今日はぐっすり眠れそうですわね!!」と言う声が聞こえて来た。

「……………………ははは、はぁ~、お主達、娘が何だかすまぬな。どうやら緊張しすぎていたようだ。その内また話をする機会を用意するからゆっくり話してやってくれ。……ではそろそろ屋敷を確認して来るといい。」

「……わかりました。では失礼します」

 クロード達は王城を出ると国王から受け取った地図に従って貴族区の一画に建っている屋敷へと向かう。

(ここが陛下からもらった屋敷か。……何か広すぎじゃないか)

 陛下から賜った屋敷は貴族区王城よりの一等地にあり三階建ての屋敷とその屋敷がまるまる四つおさまる広さの庭がついていた。

「なあベロニカ、男爵位の貴族が住む屋敷ってこんなに広い物なのか」

「いや、普通はこの屋敷の十分の一の広さもあれば十分だ。我がミーガン子爵家が王都に所有していた屋敷はこの屋敷の大体六分の一位の広さだった。この広さの屋敷だと少なくとも伯爵下手をすれば侯爵位の貴族が所有している様な屋敷だな」

「マジか。俺の様なやつにこんな屋敷を渡してどうするんだよ。俺……絶対他の貴族に恨みを買うじゃん。こんなしょうもない事でいらん問題を抱えたくないんだけどなぁ」

「仕方ありませんよマスター。マスターはルーチェ様を娶ることは決定事項見たいですし、そうすると必然的に爵位は最低でも伯爵位まで上がることになります。そうしますと爵位が上がった時に屋敷を引っ越すのは面倒ですから、それを考えると今回のこの屋敷はラッキーだと思えば良いと思いますよ」

「まあ、そうだな。それじゃあ屋敷の中でも見てみようか」

 クロード達が屋敷内を見回ったところ一階にはそこそこ広い玄関ホール、パーティー用の大広間、だだっ広い調理場そして家族で食事をすると思われるダイニング、二階には書斎、兎に角大きな図書室らしき物、そして大浴場、三階には部屋が十数部屋あった。

「……兎に角広いな。そしてとても広い庭と言って良いのかわからない物の端っこにあったそこそこ大きい二階建ての建物は使用人用の建物ってことでいいのかな。…………ん。結論から言うと広すぎて俺達だけじゃ管理できないな。どうするか」

「マスター、提案なのですがマスターの召喚魔法で適当な者達を呼び出してこの屋敷の管理と警備をしてもらうのはどうでしょうか。その方が何かと便利だと思うのですが」

「そうだな。召喚してみるか」

 クロードはナビーの提案を採用しだだっ広い庭に移動して召喚魔法を使う。

「我は望む、強く賢き者を、我は望む、我が呼びかけに答えよ。召喚」

 クロードの詠唱と共に庭に巨大な魔法陣が浮かび上がり、魔法陣が次第に発光しながら回転し始める。

 発光が治まるとそこには一人の男と二人の女が立っていた。






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