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第二部【ミーガン子爵家再興編】 第一章 『フェンドラム山脈のドラゴン族とクラン設立』

3話

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 発光が治まるとそこには一人の男と二人の女が立っていた。

 三人は暫く辺りを見回すと男が三人を代表して質問をぶつけて来る。

「……少しよろしいか。あなたが我々を召還した召喚主だろうか」

「ああ、俺がお前達を召還した。でもなんで俺が召喚主だとわかった?」

 クロードの問いかけを聞いた男は(フンッ)っと顔を少しほころばせると――――

「あなたの纏っている魔力が我々を召喚した神聖な力と酷似していたからですね。あの神聖な力あなたは一体何者なのですか。あの様な力人間には絶対纏うことなど出来るはずもない。……そう、出来るとすれば神か神に準ずる者くらいしかいませんからね。だとすれば我々がお仕えするにあたいする物なのではないかと思い召喚に応じてみたのですが、まさか我ら悪魔族だけでなく天族と精霊族まで来ているとは……少し計算外でしたねぇ」

 悪魔族の男が少しおどけながら話すとそれを聞いていた天族と精霊族の女が――――

「何が『これは少し計算外でしたねぇ』なんですか。普通はこんな神聖な力にあなた達悪魔族は見向きもしないですよね。ルシファー、あなた直属の変わり者集団以外はですが」

「その通りだよ。ミカエルや僕みたいな天族や精霊族ならわかるけど、なんで君まで来てるんだい?」

(…………ん?この三人はもしかして知り合いなんだろうか。まあ良い。このまま言い争わせてると一向に話が進まなそうだし中断させるか)

 
 クロードに口喧嘩を中断させられた三人は今クロード達の前に正座させられている。

 三人から聞き出したところどうやら悪魔族、天族、精霊族は仲が悪いらしく特に悪魔族と他二種族は犬猿の仲らしく顔を合わせる度に口論や酷い時は小競り合いを引き起こしているらしい。

(しかし、悪魔族のこの男ルシファーと配下の悪魔族だけは他の悪魔族とは違い悪魔界隈では異端者扱いされているらしいけど、あ、そう言えば三人の階級は一体どれ位なんだろ)

「まあ良い。それで……君たち三人は俺と召喚契約してくれるのか。してくれるのならさっさと済ませたいんだけど」

「はい。あなたの様な素晴らしい召喚主と契約が出来るなんて至高の喜びですわ。あなた達もそうよね」

「ええ、私も是非あなた様と召喚契約させて頂きたいと思います」

「僕も同じくね~」

「そうか、じゃあ契約しちゃうか。契約は君達に名前を付ければ良いんだよな」

「ええ、その通りです。ですが我々には既に名前がありますのでそのまま付けて頂ければと」

「わかった。それじゃあ悪魔族の君はルシファー、天族の君はミカエル、それで精霊族の君は…………」

「僕の名前はシャリナだよ」

「シャリナな。これからよろしくな。お前達これから色々と仕事を頼むことになるけど、よろしく頼む」

 クロードが三人にそれぞれ名前を付けると各自の足元に魔法陣が現れ次第に三人の中へと溶け込んで行く。

「よし、これで契約完了だな。それじゃあ、早速仕事を頼みたいんだけど大丈夫か?」

 クロードがそう尋ねると三人はうやうやしくひざまずき「「「何なりとお申し付けください」」」と言って頭を下げる。

「ああ、では先ず、三種族にわかれて管理、警備、伝達、諜報の仕事をやってもらいたい。種族ごとに適性のある仕事をやってもらいたいんだが、お前達の意見を聞かせてくれ」

 召喚組の三人と話し合った結果、ここの屋敷やネックにこれから出来るクランハウス等の管理は天族が、それら屋敷やクランハウスの警備は悪魔族が、伝達や諜報は精霊族を中心に各種族で適性のある者がおこなう事になった。

 召喚組の役割分担を終えたクロードは早速三人に仕事をしてもらう事にする。

「とりあえず今のところは管理と警備はこの屋敷だけで良いかな。クランハウスが出来次第そっちの方も頼むよ。次に伝達だけど、早速この国の国王陛下の所まで行って伝達役として顔合わせをしてきてくれ。問題は諜報だけど、彼女、ベロニカの家族の情報を集めて来てくれないか。具体的に何処にいるとかは今のところわかっていないんだけど、大丈夫そうかシャリナ?」

「うん。大丈夫だと思うけど何処にいるかわからないと大分時間が掛かると思うけどそれでも良いの主?」

「ああ、時間の事はあまり気にせず信憑性の高い確かな情報を集めて来てくれ。期待しているぞシャリナ」

「わかった~~。まあ実際に情報を探って来るのは僕じゃなくて僕の配下の者達だけどね。しっかり情報を手に入れて来るように言っておくよ」

「よし、俺達はネックに帰るとするか。ルシファーとミカエル、シャリナは俺達に付いて来てくれ。各自ここを任せる配下達と何時でも連絡できるようにしておいてくれ」

 クロードは召喚組の三人に配下の者を数人呼び寄せさせる屋敷の管理と警備そして国王への伝言を任せると、屋敷を出て王都の冒険者ギルドへ向かい緊急転移陣でネックへと帰還した。

***

 ここは、クリエール王国王都クエールの王城、王の執務室、国王バージェスは今回のスタンピード関連で溜まりに溜まった書類の処理に手をやいていた。

「この国の一大事が無事に去ったのは実にめでたい事だが…………何なんだ!!……この書類の山は!!処理しても処理しても全く減る気配がない!?」

「失礼するぞ?」

「……うお!?だだだ、誰だお前は?一体どこから入って来た?」

「フンッ、そんなことはどうでも良い。……が、一応教えてやるか。オレは自然の精霊王シャリナ様の眷属、大樹の最上位精霊だ。名はまだない。今日は自然の精霊神シャリナ様の主であるクロード様の伝言を伝えに来た」

「精霊神に最上位精霊だって!!あのバカ者、こんな大物を寄こしおって…………それでクロード男爵からの伝言とは?」

「うむ、今からネックに帰るとのことだ。それと今後のやり取りは自分が王都にいる時以外はオレかオレの配下の者を介してやるからよろしくとのことだ」

「成程、承知した。して男爵に伝言を頼みたい時はそなたとどの様に連絡を取ればよいなだ」

「それは――――――」

 大樹の最上位精霊が連絡方法を言おうとした時、突然執務室の扉が開かれる。

「お父様!!クロード様について聞きたい事が――――あらお客様がいらしてたんですのね。ではわたくしは出直してまいりますわ」

「いや、よい。ルーチェこっちに来なさい。こちらの方にお前を紹介したい。クロード男爵の関係者だ」

 国王はルーチェを応接用のソファーに座らせると大樹の精霊に紹介する。

「最上位精霊殿この子は我が娘ルーチェと言います。まだ確定ではありませんが、ほぼ間違いなく将来クロード男爵に嫁ぐことになる娘です」

「よろしくお願いしますわ。最上位精霊様?……あの失礼とは存じますけどお名前はございませんのかしら?」

 ルーチェにぶしつけな発言に国王バージェスは戦々恐々とし精霊の様子を伺う。

「……ふふ…………ふははは、これは愉快。このオレが最上位精霊と知ってもその様な話し方をするか。…………ん、オレはこの娘が気に入ったぞ。国王、オレがこの娘、ルーチェと契約してやろう。先程のオレとの連絡手段だが、クロード様に何か伝えたい事がある時は、この娘を呼べ」

「む、娘と契約をしてくれると言うのか。それは、正直とてもありがたい。是非頼む」

「うむ、では娘、オレに触れて魔力を少し流しオレに名を付けろ。それで契約完了だ」

 ルーチェは精霊に言われた通り精霊の額に触れると魔力を少し流し「今日からあなたの名前はパルですわ」と言い精霊にパルと名を付ける。

「……フンッ、パルか。……可もなく不可もなくと言った感じの名だがまあ良いだろう。娘、国王、これで契約完了だ。オレは何時でも娘の中にいるから用が出来たら呼べ。ではな」

 大樹の最上位精霊改めルーチェの契約精霊パルはそう言うとルーチェの中に飛び込む。

 パルを体に宿したルーチェは「わたくしは娘ではなくルーチェですわ。ちゃんと名前で呼んでください」と胸をギュッと抑えながら言い父の国王バージェスに一言もなく執務室を出て行った。

「…………この半日で色んな事が置き過ぎてドッと疲れたな」

 バージェスは疲労で急激に老け込んだ顔を覆いながら指の間から未だ処理されていない書類の山を見て「……この書類今日中に処理しないと駄目なのか?…………って言うかルーチェのやつここに一体何の用で来たんだ?」とため息を吐きながら言いノロノロと書類の処理を始めた。

***

 ここは迷宮都市ネックの冒険者ギルドネック支部ギルド長室、クロード達は緊急転移陣でネックの冒険者ギルドに戻って来ると、転移陣を管理していた職員に話を通しギルド長室まで連れて来てもらっていた。

「ん!!先ずは王都の緊急依頼無事達成ご苦労だった。王都のギルマスと王国からも報告が来ている。早速お前達のギルドランクの昇級と報奨金の用意をするから少しここで待っていてくれ」

 ギルマスはそう言うと執務机の上に置いてある大き目の呼び鈴を鳴らして人を呼ぶ。

 暫くすると扉をノックする音が鳴り「ギルドマスターお呼びでしょうか」と言いながらミレイが部屋に入って来る。

「おお、クロード達のランク昇級の手続きと今回の緊急依頼の報奨金を用意してくれ。…………ん?おい、話を聞いているのか。おい!ミレイ聞いているのか」

 ギルマスの二度の呼びかけも虚しくミレイは両眼からボロボロと大粒の涙を流し嗚咽を漏らすと膝から崩れ落ち「うぅぅぅ……よ、よっかったぁぁぁ。み、みんな生きててよかったよぉぉぉぉ」と号泣していた。





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