上 下
75 / 98
第二部【ミーガン子爵家再興編】 第一章 『フェンドラム山脈のドラゴン族とクラン設立』

10話

しおりを挟む
 クロードは樽型貯水タンクを畑と牧場の端に運び、マモンから受け取った取説を開き一つ一つ操作をしていった。

「えっと、先ずはタンクの蓋部分に付いている魔石に満タンまで魔力を注ぐ。か、ルシファーにミカエル、悪いけど魔石に魔力を注いでくれるか」

「「承知しました」」

 二人はクロードの指示で二つの樽型貯水タンクの魔石に魔力を注ぎ始める。

 魔力を注ぎ終わり魔石が緑色に光るのを確認したクロードはタンクの接続口に筒型の魔道具を接続すると、ルシファーにミカエルと手分けして筒型の魔道具どうしを繋げて畑の範囲を囲い、牧場は後で牛舎や鶏小屋などを建てる範囲に筒型魔道具を通し、畑や牧場で水を使うための下準備を終わらせた。

「後はマモンが川まで通す下水用の筒に繋げれば浄化された水が下水用の筒で合流して再び川に戻って行く訳だ」

 クロードがマモンの作業が終わるのを今か今かと待っていると、街の方からクランの受付用の物件を購入しに行っていたミレイが帰って来た。

「クロード~、結構いい物件買って来たわよ~」

「お!ミレイ。ご苦労さま。それで良い物件って一体どんな物件を購入して来たの?」

「それがさ~聞いてよ~。とってもいい立地の物件を見つけて来たんだから。場所は丁度ギルドと迷宮、そして街の中心広場の中間にあってね。元は雑貨屋さんだったみたいだけど、店主さんが高齢で他の街で商売をしている親類の所に引っ越したみたいなの」

「確かに、ミレイの話を聞くに結構いい物件だな。で、その物件は一階建てかそれとも二階建て?それ以上なのか」

「二階建て。しかも元が雑貨屋だったからカウンターの奥に結構広いスペースがあるし、二階もある。それにカウンター前には雑貨屋時代に品物を陳列してたスペースもあるの。私的にはこの品物の陳列スペースに将来的にポーションなんかの回復アイテムなんかの品物を置くのも面白いんじゃないかと思うんだけど。どうかしら」

「なるほどな。…………うん。確かに面白そうだな。置く品はその時考えるとして、そのアイディアは良いと思うよ。…………お!」

 ミレイと話をしているとクランハウスからマモンがいかにも大満足!!みたいな顔でこっちにやって来る。

「上下水道と水道、設置し終わったわよ。後はあな、クロード様達が設置した畑と牧場の水道をクランハウスから川まで伸ばした下水道に繋げば完成よ」

「ちょっとクロード、この子はどこの誰なの?」

「ああ、ミレイはマモンとは初めましてだったな。紹介するよ。ルシファーが魔界から連れて来た魔道具研究家のマモンだ。この少女の見た目に反して結構強いんだ」

「そう。マモンさんって言うのね。私はミレイ、このクランの受付兼経理を統轄することになっているわ。よろしくね」

「うむ。ミレイと言うのか。…………うむうむ。戦闘能力はそこまで高くなさそうだが、事務能力はなかなか高そうね。……文官向きってとこかしら。まあ良いわ。さっさと最後の仕上げに取り掛かりましょう」

 マモンはそう言うと一人で畑と牧場の水道を地下を通る下水道に接続させた。

***

 翌日、クロード達は、各自の武器と防具を揃えるために朝食後、必要素材を取りに希少な鉱石や木材が取れる穴場で有名なフェンドラム山脈へ行くこととなった。

「しかし、マモンさんの魔道具は本当に助かりますね。この魔道コンロのお陰でかまどに薪を入れて自分で火を点けるという面倒な作業をしなくて済みますし、大浴場も筒の魔道具のお陰で浴槽に水を入れてから温める必要が無くなりました。しかも浴槽に保温効果のある魔道具まで付けてくれるなんて昨日は本っ当に助かりましたよ」

 ナビーは朝食の後かたずけをしながら言う。

「確かに。マモンの魔道具にはこの二日だけで随分と助けられているな」


 朝食の後片付けを終えてナビーと共にラウンジに向かう。

 するとラウンジには既に全員集まっており各々、装備の点検をしたり、一時のティータイムを楽しんでいた。

「お! みんなもう準備は出来てるみたいだな」

「ああ、クロード、私達はいつでも行けるぞ」

 ケイトがそう言うと残りのみんなも強く頷く。

「よし!それじゃあ、行こうか!!」

***

 ここは迷宮都市ネックから馬車で三日の場所にある辺境都市バスフェン、クロード達の今回の目的地であるフェンドラム山脈の麓にある冒険者で賑わう冒険都市である。

 この辺境都市バスフェンは、最初冒険者達が高ランクのモンスターの巣窟である魔境フェンドラム山脈に挑む為に作り出した開拓村で当時はフェンと呼ばれていた。

 その開拓村が時を経て冒険者達によって発展したのが今の辺境都市バスフェンである。

 クロードは辺境都市バスフェンまでレイアと子供達には走ってもらい、残りのメンバーはマール(龍形態)の背に載せてもらって移動した。

 クロード達はバスフェンでも一番美味しいと有名なレストラン(従魔同伴可)で昼食を済ませるとバスフェンを出て魔境フェンドラム山脈へと登り始める。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,487pt お気に入り:1,135

梓山神社のみこ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:489pt お気に入り:0

社長、バレてますよ!

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,085

ラグナロク・ノア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:3

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:11,283pt お気に入り:4,146

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。