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第二章『奴隷王国ドーレル滅亡』
12話
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最後に残った魔族はこの場からの撤退を決めると
「ふん、中々やるではないか。この場は見逃してやる」
そう言ってどこかへと転移して行った。
「ん~、どうやらもう生き残っている魔族はさっきのやつとこの玉座の間っぽい所から一歩も動かないこの魔族だけみたいだね。……ん? 」
丁度その時、もぬけの殻となった各重要施設を捜索していたシャナルたちから連絡が入った。
『どうしたの。まさかベロニカの家族のことで何かわかったの』
『うん。良かったのか悪かったのかわからないけど~、有益な情報が入って来たよ~』
『そうか、それじゃあ早速聞かせてくれるか』
『了解だよ~』
シャナルからもたらされた情報はクロード達にとって決して喜ばしい物ではなかった。
『そうか、ありがとう。引き続き情報収集を頼む』
『了解だよ~』
シャナルはそう言って念話を切った。
シャナルからの報告によるとベロニカの家族は既に奴隷としてこの国から更に北上した先にある魔族領に連れて行かれたらしい。
家族全員の安否が確認できたことは良かったが、魔族領についてしまったら何をされるかわかったものではない。
幸いこの国を出たのが二十日ほど前だと言うことで魔族領に着くまでには恐らく後十日ほどの猶予があるはずだ。
クロードはシャナルからもたらされた情報を皆に伝える。
皆、少しホッとした様な顔をしていたが、やはりベロニカだけは何か浮かない顔をしていた。
「これは早くここを片付けて輸送車を追わないといけないね」
クロード達は新たに気持ちを強く引き締めて大階段を上がって行く。
この王城は三階建てで生き残りの魔族達が集まっている玉座の間は三階の一番奥にある。
何の障害もなく玉座の間の大扉の前までたどり着くと、クロードは勢いよくその大扉を蹴り飛ばして盛大に大扉をこじ開けた。
「…………ほお、人間如きが随分と大胆な登場の仕方だな。して、どの様な用件かな人間殿!! 」
「……どの様なもなにも俺達の要件なんて聞くまでもないだろ。お前達を倒しに来たんだよ!!これからお前体が魔族領に送った輸送車を追わないといけないんだ。無駄話をしている暇はない。さっさと戦いを始めようか」
こうして奴隷王国ドーレルでの最後の戦いが幕を開けた。
***
退魔結界から生き残った魔族達との最後の戦いが始まって一時間程が経った。
もう相手の魔族で残っているのは今クロード達の前で肩から青紫色の血を流している今回の件のボス魔族だけである。
他の魔族達は主にベロニカやケイトを中心とした人間組が殲滅した。
今回マールやレイアなどのモンスター組は不測の事態が起きらない限り待機である。
「くそ、まさかここまでやるとは思わなかったぞ人間。だがこれで終わりだと思うなよ!! 」
最後の魔族がそう言うと、その魔族から感じられていた魔力の質が急激に変化していくのを感じた。
(なんだ。このいやな感覚は)
クロードはいつかのキラーボアとの戦闘で感じた危機感を覚えて魔族の様子を注視する。
突如、魔族の魔力が急激に膨れ上がり、それに伴い魔族の外見も変化を見せ始めた。
「何なのよあれは」
アイリの疑問の声に隣で聞いていたマルティが答える。
「あれはおそらく魔族固有の能力『魔力暴走』だと思います。私も見るのは初めてですので定かではありませんが。…………マールさん、あれは『魔力暴走』で間違いありませんでしょうか」
マルティの問いにマールは
「いや、あれは『魔力暴走』とは似て非なるものじゃな。『魔力暴走』は一度発動すると、もう二度と元に戻ることは出来ないが、この体の変化の仕方を見るにこれは『魔力暴走』ではなく『狂化』じゃな。一部の魔族、上級魔族だけが使うことの出来る固有能力じゃ。じゃが我が主に掛かればあのような物どうとでもなるのじゃ」
「……ほお、そこの人間。『狂化』を知っているのか。しかし、……どうとでも成るだと、…………この私をなめるんやない!!私は上級魔族だぞ。人間如きが知ったような口をきくな!! 」
魔族はそう叫ぶと体の変化が終わったのか、すっかり様変わりした屈強な肉体と持ち前のスピードを活かしてこちらに突っ込んで来る。
しかしクロードは魔族の渾身の突進をいとも簡単に回避してみせる。
「な!?何いいい!!どうしてこの私の渾身の一撃を回避することができる!?私は上級魔族だぞ!!人間如きが回避など出来るはずがない。………………お、お前、お前はいったい何者なのだ!!…………う、うわああああ。く、来るなぁぁぁ!!こっちに来るんじゃなぁぁぁい!! 」
魔族は情けなく叫び散らかすと、魔法で天井を打ち抜き外へと逃げようとする。
「あ、外に逃げちゃったよ。まあでも『イージス』を張ってあるからどこにも逃げられないんだけどな」
クロードの言葉の通りに外へと逃げたはずの魔族が今度は空から落ちて来た。
「な……なぜ……あのような……強力な……退魔結界が……上空に……展開してあるのだ。あれではもうどこにも逃げる事が出来ないではないか。…………クソ……クソ……クソ!! 」
「それはそうするでしょ普通。一度目の退魔結界の時は結界を調整し過ぎたせいで君達、結構生き残っちゃったからさ。上空に貼ってあった退魔結界は再調整して強力にしておきました。魔族君、残念だったね」
クロードは魔族にそう言うと、退魔属性の魔力で作った極小の魔力弾を満身創痍で床に力なく倒れ伏している魔族に向かって打ち出す。
ゆっくりと魔族に近づいて行く極小魔力弾は遂に魔族の胸に当たり吸い込まれて行く。
次第に魔族は苦しみだし、1分もしない内に黒い塵となって消滅した。
「ふん、中々やるではないか。この場は見逃してやる」
そう言ってどこかへと転移して行った。
「ん~、どうやらもう生き残っている魔族はさっきのやつとこの玉座の間っぽい所から一歩も動かないこの魔族だけみたいだね。……ん? 」
丁度その時、もぬけの殻となった各重要施設を捜索していたシャナルたちから連絡が入った。
『どうしたの。まさかベロニカの家族のことで何かわかったの』
『うん。良かったのか悪かったのかわからないけど~、有益な情報が入って来たよ~』
『そうか、それじゃあ早速聞かせてくれるか』
『了解だよ~』
シャナルからもたらされた情報はクロード達にとって決して喜ばしい物ではなかった。
『そうか、ありがとう。引き続き情報収集を頼む』
『了解だよ~』
シャナルはそう言って念話を切った。
シャナルからの報告によるとベロニカの家族は既に奴隷としてこの国から更に北上した先にある魔族領に連れて行かれたらしい。
家族全員の安否が確認できたことは良かったが、魔族領についてしまったら何をされるかわかったものではない。
幸いこの国を出たのが二十日ほど前だと言うことで魔族領に着くまでには恐らく後十日ほどの猶予があるはずだ。
クロードはシャナルからもたらされた情報を皆に伝える。
皆、少しホッとした様な顔をしていたが、やはりベロニカだけは何か浮かない顔をしていた。
「これは早くここを片付けて輸送車を追わないといけないね」
クロード達は新たに気持ちを強く引き締めて大階段を上がって行く。
この王城は三階建てで生き残りの魔族達が集まっている玉座の間は三階の一番奥にある。
何の障害もなく玉座の間の大扉の前までたどり着くと、クロードは勢いよくその大扉を蹴り飛ばして盛大に大扉をこじ開けた。
「…………ほお、人間如きが随分と大胆な登場の仕方だな。して、どの様な用件かな人間殿!! 」
「……どの様なもなにも俺達の要件なんて聞くまでもないだろ。お前達を倒しに来たんだよ!!これからお前体が魔族領に送った輸送車を追わないといけないんだ。無駄話をしている暇はない。さっさと戦いを始めようか」
こうして奴隷王国ドーレルでの最後の戦いが幕を開けた。
***
退魔結界から生き残った魔族達との最後の戦いが始まって一時間程が経った。
もう相手の魔族で残っているのは今クロード達の前で肩から青紫色の血を流している今回の件のボス魔族だけである。
他の魔族達は主にベロニカやケイトを中心とした人間組が殲滅した。
今回マールやレイアなどのモンスター組は不測の事態が起きらない限り待機である。
「くそ、まさかここまでやるとは思わなかったぞ人間。だがこれで終わりだと思うなよ!! 」
最後の魔族がそう言うと、その魔族から感じられていた魔力の質が急激に変化していくのを感じた。
(なんだ。このいやな感覚は)
クロードはいつかのキラーボアとの戦闘で感じた危機感を覚えて魔族の様子を注視する。
突如、魔族の魔力が急激に膨れ上がり、それに伴い魔族の外見も変化を見せ始めた。
「何なのよあれは」
アイリの疑問の声に隣で聞いていたマルティが答える。
「あれはおそらく魔族固有の能力『魔力暴走』だと思います。私も見るのは初めてですので定かではありませんが。…………マールさん、あれは『魔力暴走』で間違いありませんでしょうか」
マルティの問いにマールは
「いや、あれは『魔力暴走』とは似て非なるものじゃな。『魔力暴走』は一度発動すると、もう二度と元に戻ることは出来ないが、この体の変化の仕方を見るにこれは『魔力暴走』ではなく『狂化』じゃな。一部の魔族、上級魔族だけが使うことの出来る固有能力じゃ。じゃが我が主に掛かればあのような物どうとでもなるのじゃ」
「……ほお、そこの人間。『狂化』を知っているのか。しかし、……どうとでも成るだと、…………この私をなめるんやない!!私は上級魔族だぞ。人間如きが知ったような口をきくな!! 」
魔族はそう叫ぶと体の変化が終わったのか、すっかり様変わりした屈強な肉体と持ち前のスピードを活かしてこちらに突っ込んで来る。
しかしクロードは魔族の渾身の突進をいとも簡単に回避してみせる。
「な!?何いいい!!どうしてこの私の渾身の一撃を回避することができる!?私は上級魔族だぞ!!人間如きが回避など出来るはずがない。………………お、お前、お前はいったい何者なのだ!!…………う、うわああああ。く、来るなぁぁぁ!!こっちに来るんじゃなぁぁぁい!! 」
魔族は情けなく叫び散らかすと、魔法で天井を打ち抜き外へと逃げようとする。
「あ、外に逃げちゃったよ。まあでも『イージス』を張ってあるからどこにも逃げられないんだけどな」
クロードの言葉の通りに外へと逃げたはずの魔族が今度は空から落ちて来た。
「な……なぜ……あのような……強力な……退魔結界が……上空に……展開してあるのだ。あれではもうどこにも逃げる事が出来ないではないか。…………クソ……クソ……クソ!! 」
「それはそうするでしょ普通。一度目の退魔結界の時は結界を調整し過ぎたせいで君達、結構生き残っちゃったからさ。上空に貼ってあった退魔結界は再調整して強力にしておきました。魔族君、残念だったね」
クロードは魔族にそう言うと、退魔属性の魔力で作った極小の魔力弾を満身創痍で床に力なく倒れ伏している魔族に向かって打ち出す。
ゆっくりと魔族に近づいて行く極小魔力弾は遂に魔族の胸に当たり吸い込まれて行く。
次第に魔族は苦しみだし、1分もしない内に黒い塵となって消滅した。
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