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《仕掛ける奴》
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「セックスしたことないんだぁ。へぇ~~……」
「あ、そ、そういうわけではっ! 付き合ったことはある……し、」
「でも、ヤる前にフラれたってか。滑稽なこった」
マグロの中トロを醤油に付けて食べてから瀬川がにやけた。先ほどから挑発的な言葉の繰り返しに朔太郎も苛立っていた。しかも彼は酒に弱い。それが相まって、――ぶつけてしまう。
「なにが悪いんですかっ! 俺はその人のことが大事だからこそ、逆に手が出せないんです! 大切だと思っているからこそ、手が出せないんです!」
「……ふ~ん。ヤっちまえば関係ねぇと思うけど?」
「あなたそれでも人間ですか? そんなの誠実な態度で相手に接して……あっ――」
ついに言ってしまったと朔太郎は激しく後悔した。やけになってビールを飲もうにも、先ほど飲みほしたせいで空であった。
瀬川が飲みかけのウーロン茶を手渡す。
「ほら、興奮するからだよ。落ち着け」
「す、みま、せん……」
小さくお辞儀して氷が溶けかけたウーロン茶を飲んだ。それから礼を告げて渡そうとする。――小指と小指が触れ合う。
瀬川がウーロン茶をグイッと飲んでニヒルに笑んだ。
「間接チューだな。てんしくんの間接チューに、……指が触れ合った」
「へ、え、あっ……――――」
どういうことなのかわかってしまった朔太郎に瀬川は再びマグロを食べて、ポテトサラダを食べていく。するとまた襖が開いた。
「失礼します。タコと甘エビの唐揚げに名物のチャーハンです。今日は特別サービスでチャーシューが多めですよ」
「ありがとな、女将。それと、生一つに、……じゃあウーロン茶でいいや。それ追加で」
「はい。わかりました」
襖が閉じられたので朔太郎は誰がビールで誰がウーロン茶だと考えた。だが効く方が早いと感じたのでマグロを食べながら声を掛ける。
「誰がビールで、誰がウーロン茶ですか?」
「俺がビールで、てんしくんはウーロン茶」
「えっ!? なんでっ!?」
マグロに下に敷いてあるツマや大葉までも食べている律儀な朔太郎に感心しつつ、タコの唐揚げを食べていく瀬川は愉快そうな顔をした。
「まぁ飲ませてから頂くのもいいけど、てんしくんは飲ませすぎたら吐きそうだな~って。それもそれでムード台無しじゃん?」
「頂くって、なにか食べるんですか? 俺はもう、この量だったらこれでお腹いっぱいですよ?」
「……まぁ、そういう純情さにも惹かれたのかもな、俺も」
「????」
不思議そうな顔をする朔太郎に瀬川がふっと笑んだ。それから、襖が開いたと思えば女将がよく冷えたビールとウーロン茶を渡してくれた。
そのまま襖が閉まり、去ってしまう女将。ここは二人っきりの世界だ。料理と飲み物はあるが、……ただ、それだけ。
にやけていた瀬川が急に真剣な顔になった。
「なぁ、お前。このままで良いのかよ?」
「なにが、ですか?」
突然の問いかけに朔太郎は不思議な表情を見せて傾げる。すると途端に瀬川が息を吐き出した。それから急に、立ち上がり……隣に腰掛ける。
真剣な顔とどこか悪戯めいた瞳に引き込まれそうになる。
「こんなどうしようもない奴におちょくられて悔しくないのかって言ってんだ。いいのか? あんた、社会に見離れそうな人間を助けている仕事に就いていんだろ?」
言葉は違えど、どうして知っているのかを朔太郎はふと考える。……二人の距離は縮まりつつある。
「あ、そ、そういうわけではっ! 付き合ったことはある……し、」
「でも、ヤる前にフラれたってか。滑稽なこった」
マグロの中トロを醤油に付けて食べてから瀬川がにやけた。先ほどから挑発的な言葉の繰り返しに朔太郎も苛立っていた。しかも彼は酒に弱い。それが相まって、――ぶつけてしまう。
「なにが悪いんですかっ! 俺はその人のことが大事だからこそ、逆に手が出せないんです! 大切だと思っているからこそ、手が出せないんです!」
「……ふ~ん。ヤっちまえば関係ねぇと思うけど?」
「あなたそれでも人間ですか? そんなの誠実な態度で相手に接して……あっ――」
ついに言ってしまったと朔太郎は激しく後悔した。やけになってビールを飲もうにも、先ほど飲みほしたせいで空であった。
瀬川が飲みかけのウーロン茶を手渡す。
「ほら、興奮するからだよ。落ち着け」
「す、みま、せん……」
小さくお辞儀して氷が溶けかけたウーロン茶を飲んだ。それから礼を告げて渡そうとする。――小指と小指が触れ合う。
瀬川がウーロン茶をグイッと飲んでニヒルに笑んだ。
「間接チューだな。てんしくんの間接チューに、……指が触れ合った」
「へ、え、あっ……――――」
どういうことなのかわかってしまった朔太郎に瀬川は再びマグロを食べて、ポテトサラダを食べていく。するとまた襖が開いた。
「失礼します。タコと甘エビの唐揚げに名物のチャーハンです。今日は特別サービスでチャーシューが多めですよ」
「ありがとな、女将。それと、生一つに、……じゃあウーロン茶でいいや。それ追加で」
「はい。わかりました」
襖が閉じられたので朔太郎は誰がビールで誰がウーロン茶だと考えた。だが効く方が早いと感じたのでマグロを食べながら声を掛ける。
「誰がビールで、誰がウーロン茶ですか?」
「俺がビールで、てんしくんはウーロン茶」
「えっ!? なんでっ!?」
マグロに下に敷いてあるツマや大葉までも食べている律儀な朔太郎に感心しつつ、タコの唐揚げを食べていく瀬川は愉快そうな顔をした。
「まぁ飲ませてから頂くのもいいけど、てんしくんは飲ませすぎたら吐きそうだな~って。それもそれでムード台無しじゃん?」
「頂くって、なにか食べるんですか? 俺はもう、この量だったらこれでお腹いっぱいですよ?」
「……まぁ、そういう純情さにも惹かれたのかもな、俺も」
「????」
不思議そうな顔をする朔太郎に瀬川がふっと笑んだ。それから、襖が開いたと思えば女将がよく冷えたビールとウーロン茶を渡してくれた。
そのまま襖が閉まり、去ってしまう女将。ここは二人っきりの世界だ。料理と飲み物はあるが、……ただ、それだけ。
にやけていた瀬川が急に真剣な顔になった。
「なぁ、お前。このままで良いのかよ?」
「なにが、ですか?」
突然の問いかけに朔太郎は不思議な表情を見せて傾げる。すると途端に瀬川が息を吐き出した。それから急に、立ち上がり……隣に腰掛ける。
真剣な顔とどこか悪戯めいた瞳に引き込まれそうになる。
「こんなどうしようもない奴におちょくられて悔しくないのかって言ってんだ。いいのか? あんた、社会に見離れそうな人間を助けている仕事に就いていんだろ?」
言葉は違えど、どうして知っているのかを朔太郎はふと考える。……二人の距離は縮まりつつある。
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