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《不穏で仕方がない》
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それからドンペリを飲んだり、ビールを飲んだりしているうちに、朔太郎はほどよく酔っぱらってきた。細心の注意を払ったが、やはり酒が弱いのだと痛感する。
ふらふらと立ち上がると豪快に飲んでいる來斗が声を掛けて来た。
「お、もうダウンかぁ?」
「……違いますよ。ちょっとトイレに行ってきます」
「――――ゲロか?」
「違いますぅっっ!!!!」
それでも悪戯に笑み、悪気のない様子の來斗に憤慨しつつも朔太郎はトイレに向かう。ウロチョロとして男性トイレに入り、用を足し、出ると……女性が立っていた。猫背気味の少し背の高い、ルックスの良い女性は妖しく朔太郎を見やる。朔太郎はぼんやりとしながら、奇麗だなぁなどと無自覚に思っていた。
女が不敵に笑んだ。
「あんたが瀬川さんのお気に入りなんだ。やめときなよ。あいつ、捨てる時は捨てるよ」
「――――えっ、なに急に?」
「だってあたし、肉体関係っていうの? セックスしたことあるもん。でも捨てられた。ミアって言えば、わかると思うけど?」
朔太郎は唾を飲んだ。出会って間もないミアという女性にはどこか自信に満たされたようなそんな雰囲気を感じたからだ。だが、なにを企んでいるのか不明だ。自分に脅しをかけてどうするのか。
ミアはウェーブのかかった髪を耳に掛けて小声で囁いた。
「あたしたちでさ、――あいつを地獄に堕とそうよ。あんなクズ、居たって意味ないよ」
「なぁっっ!???」
驚きで満ち溢れる朔太郎にミアは悪気のないように笑んでその場を立ち去った。
一人、トイレの前で佇んでいた朔太郎はミアの言葉を繰り返す。”あんなクズ”、”居ても意味ない”……本当だろうか。
藍斗も確かに來斗のことを敵視していた。藍斗も現に彼女を寝取られそうになったという。――本当にそうなのだろうか。
「……俺は、どっちの言葉を信じればいいんだろう?」
朔太郎はどうしてだが泣き出したい気持ちになった。それは來斗を信じたい気持ちと、クズであったとしたら自分が捨てられるかどうか……というものだ。
互いを天秤にかけてしまいたい。でも、かけてしまったら現実が目に見えてしまいそうで怖い。
「……俺、帰ろうかな」
一人呟き、朔太郎は先ほどの部屋に向かった。相変わらず奇麗で美麗な女性陣と來斗は楽しく飲んでいる。――自分が惨めに思えるほどに。
それでも朔太郎は作り笑いを浮かべた。
「瀬川さん、ごめんなさい。ちょっと俺、酔いすぎちゃって気持ちが悪いのでお先失礼します。あと……これ」
朔太郎は財布からなけなしの三万円を渡した。給料日が先なので痛い出費だが仕方がない。だが、払っておかないとなんとなく気持ちの整理がつかなかった。
しかし來斗は戸惑いの色を見せたかと思えば、三万円を突き返した。
「いいよ。今日は俺が奢るって決めていたんだから。お前ら、わりぃな。朔送って帰るから――」
「良いんですっ、放っておいてください!」
はっとすれば、來斗はひどく傷ついたような顔をしていた。だから朔太郎は逃げ出すように突き返された三万円を奪い取り、そのままタクシーで帰ったのであった。
あの時のひどく傷ついた顔をした來斗が脳裏に焼き付いていた。
ふらふらと立ち上がると豪快に飲んでいる來斗が声を掛けて来た。
「お、もうダウンかぁ?」
「……違いますよ。ちょっとトイレに行ってきます」
「――――ゲロか?」
「違いますぅっっ!!!!」
それでも悪戯に笑み、悪気のない様子の來斗に憤慨しつつも朔太郎はトイレに向かう。ウロチョロとして男性トイレに入り、用を足し、出ると……女性が立っていた。猫背気味の少し背の高い、ルックスの良い女性は妖しく朔太郎を見やる。朔太郎はぼんやりとしながら、奇麗だなぁなどと無自覚に思っていた。
女が不敵に笑んだ。
「あんたが瀬川さんのお気に入りなんだ。やめときなよ。あいつ、捨てる時は捨てるよ」
「――――えっ、なに急に?」
「だってあたし、肉体関係っていうの? セックスしたことあるもん。でも捨てられた。ミアって言えば、わかると思うけど?」
朔太郎は唾を飲んだ。出会って間もないミアという女性にはどこか自信に満たされたようなそんな雰囲気を感じたからだ。だが、なにを企んでいるのか不明だ。自分に脅しをかけてどうするのか。
ミアはウェーブのかかった髪を耳に掛けて小声で囁いた。
「あたしたちでさ、――あいつを地獄に堕とそうよ。あんなクズ、居たって意味ないよ」
「なぁっっ!???」
驚きで満ち溢れる朔太郎にミアは悪気のないように笑んでその場を立ち去った。
一人、トイレの前で佇んでいた朔太郎はミアの言葉を繰り返す。”あんなクズ”、”居ても意味ない”……本当だろうか。
藍斗も確かに來斗のことを敵視していた。藍斗も現に彼女を寝取られそうになったという。――本当にそうなのだろうか。
「……俺は、どっちの言葉を信じればいいんだろう?」
朔太郎はどうしてだが泣き出したい気持ちになった。それは來斗を信じたい気持ちと、クズであったとしたら自分が捨てられるかどうか……というものだ。
互いを天秤にかけてしまいたい。でも、かけてしまったら現実が目に見えてしまいそうで怖い。
「……俺、帰ろうかな」
一人呟き、朔太郎は先ほどの部屋に向かった。相変わらず奇麗で美麗な女性陣と來斗は楽しく飲んでいる。――自分が惨めに思えるほどに。
それでも朔太郎は作り笑いを浮かべた。
「瀬川さん、ごめんなさい。ちょっと俺、酔いすぎちゃって気持ちが悪いのでお先失礼します。あと……これ」
朔太郎は財布からなけなしの三万円を渡した。給料日が先なので痛い出費だが仕方がない。だが、払っておかないとなんとなく気持ちの整理がつかなかった。
しかし來斗は戸惑いの色を見せたかと思えば、三万円を突き返した。
「いいよ。今日は俺が奢るって決めていたんだから。お前ら、わりぃな。朔送って帰るから――」
「良いんですっ、放っておいてください!」
はっとすれば、來斗はひどく傷ついたような顔をしていた。だから朔太郎は逃げ出すように突き返された三万円を奪い取り、そのままタクシーで帰ったのであった。
あの時のひどく傷ついた顔をした來斗が脳裏に焼き付いていた。
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