26 / 44
《プレゼント》
しおりを挟む
來斗のメッセージには既読スルーか未読にしたまま時を過ごした。電話も掛かってきたが、無視をした。そんな不穏な関係のまま一週間が続いた。
「よしっ、行くぞっ!」
朔太郎は自分に叱咤して職場に向かう。職場ではなるべく笑顔をたくさん見せた。利用者とも会話をして気を紛らわせた。そうすれば自分のちっぽけな悩みなど解決すると思ったから。
軽作業である資材を運びながらパソコンを弄っていると、施設長の門野が朔太郎へ声を掛ける。どうやら仕事の用事らしい。
「天使くん、君宛ての仕事でこういうのが届いたんだけど……」
職員室でパソコンのメールを開けば、出てきたのがハンドメイドアクセサリーのダイレクトメールの願いであった。文面を見る限り、どうやら障がい者の方の手を借りてダイレクトメールの封入の手伝いを伺う内容であった。しかし差出人には――――
「瀬川……來斗さん、ですか。門野さんはこのことを気にしているんですか?」
「うーん、気にしているとは違うなぁ。気になった、というのが本心かな。この前のパソコンメールと同じ人だったしね。だから気になった……というか」
歯切れの悪そうな、でも、射抜くような視線に朔太郎は逸らしてしまう。だが沈黙に耐えられなかったのは門野の方らしい。息を吐き出したかと思えば、パソコンの電源を落とした。
「まっ、こんな大手の仕事と組めるのなら別に良いんだけどね。利用者さんの工賃も上がるし」
「は、はぁ……」
それから朔太郎の右肩を軽く叩いて軽く笑んだのだ。
「じゃあ天使くんのこと、今回はお咎めなしにしておくからね。さて。これから仕事に励むよぉ!」
「……はい」
朔太郎はどうして來斗が朔太郎の会社を通じて来たのかが不明かつ不思議であった。來斗はなにを企んでいるのだろうかと思いつつ、朔太郎は利用者の作業を見守りつつ自分の業務に励んだ。
昼時。朔太郎は昼食に唐揚げサラダパスタとスポーツドリンクを持ち込んで席に着いた。すると横から、矢谷がなにか紙袋を持ってこちらへやって来る。
それから矢谷は朔太郎へ内緒話をするように声掛けた。
「あの……、天使さん、――これっ」
「へっ……、って、これなに?」
矢谷は辺りを見渡してから朔太郎の傍に寄った。
「これ、この前言っていた子が作ったキーホルダーです。本当はいけないのはわかっているんですけど、良かったら、ぜひっ」
そう。医療関係や福祉などの人間に物をあげるのはタブーに近いのだ。その施設にもよるが、朔太郎が働いている利用者施設は緩い方であった。
だから朔太郎もおずおずとしながら小さな紙袋を手に取る。すると矢谷はとても嬉しそうな顔をしていた。
「良かった、友達も喜びます。でも、なんでかな~? な~んか、普段よりも熱心に作っていたんだよなぁ」
「へぇ~、どうしてなんだろうね? あとで開けてみるけど、その子にお礼言ってくれると嬉しいな」
「はい! ありがとうございます。じゃあ、――私はこれでっ!」
周囲の皆に「お疲れ様でした~」そう告げて矢谷は帰ってしまった。あとで袋から開けようとしたが、話を聞いていた利用者たちが声を上げて開けろという。
「はいはい。わかりましたって……」
それから、紙袋を開いた。
「よしっ、行くぞっ!」
朔太郎は自分に叱咤して職場に向かう。職場ではなるべく笑顔をたくさん見せた。利用者とも会話をして気を紛らわせた。そうすれば自分のちっぽけな悩みなど解決すると思ったから。
軽作業である資材を運びながらパソコンを弄っていると、施設長の門野が朔太郎へ声を掛ける。どうやら仕事の用事らしい。
「天使くん、君宛ての仕事でこういうのが届いたんだけど……」
職員室でパソコンのメールを開けば、出てきたのがハンドメイドアクセサリーのダイレクトメールの願いであった。文面を見る限り、どうやら障がい者の方の手を借りてダイレクトメールの封入の手伝いを伺う内容であった。しかし差出人には――――
「瀬川……來斗さん、ですか。門野さんはこのことを気にしているんですか?」
「うーん、気にしているとは違うなぁ。気になった、というのが本心かな。この前のパソコンメールと同じ人だったしね。だから気になった……というか」
歯切れの悪そうな、でも、射抜くような視線に朔太郎は逸らしてしまう。だが沈黙に耐えられなかったのは門野の方らしい。息を吐き出したかと思えば、パソコンの電源を落とした。
「まっ、こんな大手の仕事と組めるのなら別に良いんだけどね。利用者さんの工賃も上がるし」
「は、はぁ……」
それから朔太郎の右肩を軽く叩いて軽く笑んだのだ。
「じゃあ天使くんのこと、今回はお咎めなしにしておくからね。さて。これから仕事に励むよぉ!」
「……はい」
朔太郎はどうして來斗が朔太郎の会社を通じて来たのかが不明かつ不思議であった。來斗はなにを企んでいるのだろうかと思いつつ、朔太郎は利用者の作業を見守りつつ自分の業務に励んだ。
昼時。朔太郎は昼食に唐揚げサラダパスタとスポーツドリンクを持ち込んで席に着いた。すると横から、矢谷がなにか紙袋を持ってこちらへやって来る。
それから矢谷は朔太郎へ内緒話をするように声掛けた。
「あの……、天使さん、――これっ」
「へっ……、って、これなに?」
矢谷は辺りを見渡してから朔太郎の傍に寄った。
「これ、この前言っていた子が作ったキーホルダーです。本当はいけないのはわかっているんですけど、良かったら、ぜひっ」
そう。医療関係や福祉などの人間に物をあげるのはタブーに近いのだ。その施設にもよるが、朔太郎が働いている利用者施設は緩い方であった。
だから朔太郎もおずおずとしながら小さな紙袋を手に取る。すると矢谷はとても嬉しそうな顔をしていた。
「良かった、友達も喜びます。でも、なんでかな~? な~んか、普段よりも熱心に作っていたんだよなぁ」
「へぇ~、どうしてなんだろうね? あとで開けてみるけど、その子にお礼言ってくれると嬉しいな」
「はい! ありがとうございます。じゃあ、――私はこれでっ!」
周囲の皆に「お疲れ様でした~」そう告げて矢谷は帰ってしまった。あとで袋から開けようとしたが、話を聞いていた利用者たちが声を上げて開けろという。
「はいはい。わかりましたって……」
それから、紙袋を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
【完結】王子様と一緒。
紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。
ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。
南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。
様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる