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《気になったら話すべき》
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「早く電話に出ろ」というような受話器の子機を掲げる門野に朔太郎は慌てて、子機を取り、ドアを開け放って電話に出る。電話越しからは愉快そうな声が聞こえた。
『よぉてんしくんか。お前の上司に天使さんと話したいって言ったら、な~んか間が空いて嫌そうっな声でお前と変わったけど、……なんか言ったのか?』
声色は明るいがどこか真剣みを帯びている來斗に朔太郎は息を呑んだかと思えば、白状した。この男には通用しないと直感的に感じたのだ。
「勘ぐられましたよ、施設長に。僕と瀬川さんが何かしらの関係があるんじゃないかって」
『あるじゃねぇか。――ヒトサマには言えないような、ヒミツ、が』
鼓動を弾ませた。なんて色っぽい声を出すのだろうかという思いに耽った。そんなことなど知っているのか、顔を赤らめて黙ってしまう朔太郎に來斗は軽く笑う。
『ははっ。そう照れるなって。茶化すと可愛いなぁ、てんしくんは』
「う、うるさいっ、ですっ。あの、それで? どうして俺の職場に依頼掛けたんですか? まぁ、こちらとしては利用者さんの仕事が増えるから嬉しいですけど……」
『まぁ、名刺抜き取って調べた時にも気になっていた、というのもあるけどな。……一番はてんしくん、かな』
「――……へっ?」
『じゃあ、来週の水曜に空いてないか確かめといて。あと、今日この前行ったあの、女将が居る居酒屋に20時に来い。それからお前の家な?』
「へ、あ、あのっっ、話が進みすぎじゃっ――――」
『来なかったら、明日、施設長にお前の醜態をぜーんぶバラす。――じゃっ!』
矢継ぎ早に話されて切られてしまった電話に朔太郎は疲弊感をさらに醸し出した。まさかの週半ばで飲みに誘われるとは思いも依らなかったし、しかもその相手は最近、避けている相手の人間だ。脅迫めいた言葉を紡ぐ掴みどころのない彼のニヒルな笑みが思い起こされる。
朔太郎は子機を戻し、施設長の門野へ伝える前に考え込んだ。
(……あの人、一体何を考えているんだろう? 俺なんか誘ったって、意味ないのに……)
ふぅと息を吐き出して両頬を叩き、叱咤した朔太郎は午後の仕事に取り掛かる。ちなみに来週の水曜日に責任者の來斗が来るという手はずは整えておくと門野は浮足立ったように報告していた。
利用者との作業も終わり、職員会議をしたので普段よりも遅くなってしまった。20時過ぎにはこの前行った、品の良い居酒屋に行けるだろうが……あまり気乗りはしない。
「……はぁ~」
ため息を零し席を立ちあがる朔太郎に、その姿を見た角田が声を掛ける。
「平気? なんかあった?」
珍しく人の心配をする角田に朔太郎は迷いつつも言わないことにした。「なんでもないです」そう告げれば、角田はこんなことを言い出した。
「私じゃなくても気になったことを伝えた方が天使くんのためになるよ、きっと」
「……あ、はい。ありがとう、ございます」
「うん。まぁお疲れ様。私ももう帰るから」
意味深で冷静な角田の言葉に朔太郎は自身の心に留めておいたのだ。
『よぉてんしくんか。お前の上司に天使さんと話したいって言ったら、な~んか間が空いて嫌そうっな声でお前と変わったけど、……なんか言ったのか?』
声色は明るいがどこか真剣みを帯びている來斗に朔太郎は息を呑んだかと思えば、白状した。この男には通用しないと直感的に感じたのだ。
「勘ぐられましたよ、施設長に。僕と瀬川さんが何かしらの関係があるんじゃないかって」
『あるじゃねぇか。――ヒトサマには言えないような、ヒミツ、が』
鼓動を弾ませた。なんて色っぽい声を出すのだろうかという思いに耽った。そんなことなど知っているのか、顔を赤らめて黙ってしまう朔太郎に來斗は軽く笑う。
『ははっ。そう照れるなって。茶化すと可愛いなぁ、てんしくんは』
「う、うるさいっ、ですっ。あの、それで? どうして俺の職場に依頼掛けたんですか? まぁ、こちらとしては利用者さんの仕事が増えるから嬉しいですけど……」
『まぁ、名刺抜き取って調べた時にも気になっていた、というのもあるけどな。……一番はてんしくん、かな』
「――……へっ?」
『じゃあ、来週の水曜に空いてないか確かめといて。あと、今日この前行ったあの、女将が居る居酒屋に20時に来い。それからお前の家な?』
「へ、あ、あのっっ、話が進みすぎじゃっ――――」
『来なかったら、明日、施設長にお前の醜態をぜーんぶバラす。――じゃっ!』
矢継ぎ早に話されて切られてしまった電話に朔太郎は疲弊感をさらに醸し出した。まさかの週半ばで飲みに誘われるとは思いも依らなかったし、しかもその相手は最近、避けている相手の人間だ。脅迫めいた言葉を紡ぐ掴みどころのない彼のニヒルな笑みが思い起こされる。
朔太郎は子機を戻し、施設長の門野へ伝える前に考え込んだ。
(……あの人、一体何を考えているんだろう? 俺なんか誘ったって、意味ないのに……)
ふぅと息を吐き出して両頬を叩き、叱咤した朔太郎は午後の仕事に取り掛かる。ちなみに来週の水曜日に責任者の來斗が来るという手はずは整えておくと門野は浮足立ったように報告していた。
利用者との作業も終わり、職員会議をしたので普段よりも遅くなってしまった。20時過ぎにはこの前行った、品の良い居酒屋に行けるだろうが……あまり気乗りはしない。
「……はぁ~」
ため息を零し席を立ちあがる朔太郎に、その姿を見た角田が声を掛ける。
「平気? なんかあった?」
珍しく人の心配をする角田に朔太郎は迷いつつも言わないことにした。「なんでもないです」そう告げれば、角田はこんなことを言い出した。
「私じゃなくても気になったことを伝えた方が天使くんのためになるよ、きっと」
「……あ、はい。ありがとう、ございます」
「うん。まぁお疲れ様。私ももう帰るから」
意味深で冷静な角田の言葉に朔太郎は自身の心に留めておいたのだ。
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