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*《捨てられる》
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重たい足取りでバスに乗り、電車に揺られてこの前来た居酒屋にたどり着いた。來斗には遅れてくることは伝えてある。
「はぁ~……」
暖簾の目の前で息を吐き出した朔太郎は扉をガラリと開け放つ。カウンターには女将が何かを書いていた。
だが客が着た途端に笑んだ……かと思えば、朔太郎の顔を覚えていたらしく、嬉しそうな顔をした。
「あぁっ! この前の瀬川さんのお気に入りの方でしたか! あらぁ~、また会えて嬉しいわぁ」
「あはは……、お気に入りって。そんなことないですよ。俺はその……、別に――」
塞ぎ込んでしまう朔太郎に美しい女将は首を傾げたが、瞬時に笑みを見せた。それから、來斗が奥で待っていることを伝えて案内する。
襖に数回ノックし、返事を待つ。
「あいよ。もう来たのか?」
ガラリッ、礼儀正しく女将が開ければ來斗は煙草を燻らせビールを飲んでいた。朔太郎を見てニヒルな笑みを見せ、それから女将へ注文をする。
「生一つに、アユの塩焼きと刺身三点盛り、それから明太子ピザで」
「もう。頼んでくれるのは嬉しいですけど、早すぎません? このお客様のご意見も聞かないと……」
「いいんだよ。なぁ、――てんしくん?」
注がれる熱い視線に朔太郎は鼓動を弾ませた。だが、言葉が蘇ってくる。親友とミアという女性からの言葉だ。
――自分は捨てられる。ただのゴミのように捨てられる。……それは耐えらない。だから朔太郎は來斗の視線に気づかないふりをした。
「あ、はい……。瀬川さんにお任せします」
「かしこまりました。では少々お待ちください」
襖を閉めてビールを注ぎに行く女将を置いて朔太郎は席に座ろとした。しかし、來斗が煙草をもみ消したかと思えば急に立ち上がり、――朔太郎を壁に押し付ける。
朔太郎はかなり動揺した。
「な、なんで……すか?」
「お前、――なんか隠してんだろ?」
隠してる、そんなの自分だってそうではないか。だから朔太郎は睨みつけるように來斗を見やった。
「あなただって、俺に隠しているでしょ? 色んな女や男をとっかえひっかえしたりとか、女の人とエッチしたりとか!」
「それは……――――」
「ほら、なにも言えない! 俺のことだってただの遊びで――」
その瞬間、朔太郎は口を塞がれた。空いた唇に唇を食ませ、貪るようなキスを來斗がしたのだ。
「んぅ……んぅ……、ふぅっ、んぅ、んぅっ……――――!!」
激しいキスに脳内の酸素が奪われ、朔太郎は酩酊した。それから崩れ落ちる。朔太郎が赤面し銀色の糸を端に零していると、襖の外から足音が聞こえた。
座り込んでいる朔太郎を庇うように來斗が前に踊り出る。
「お待たせしました~。突き出しとビールです。料理はお待ちになって……って、あれ? 瀬川さん、先ほどのてんし……さんという方、は?」
「あぁ。ちょっと足崩したみたいなんだ。でも平気だ。料理待っているぜ?」
女将は首を横に傾げたかと思えば上品な笑みを見せて立ち去った。朔太郎は現在、呼吸を整えながら、反応している自身を悔しがる。
すると來斗が座り込んできた。
「はぁ~……」
暖簾の目の前で息を吐き出した朔太郎は扉をガラリと開け放つ。カウンターには女将が何かを書いていた。
だが客が着た途端に笑んだ……かと思えば、朔太郎の顔を覚えていたらしく、嬉しそうな顔をした。
「あぁっ! この前の瀬川さんのお気に入りの方でしたか! あらぁ~、また会えて嬉しいわぁ」
「あはは……、お気に入りって。そんなことないですよ。俺はその……、別に――」
塞ぎ込んでしまう朔太郎に美しい女将は首を傾げたが、瞬時に笑みを見せた。それから、來斗が奥で待っていることを伝えて案内する。
襖に数回ノックし、返事を待つ。
「あいよ。もう来たのか?」
ガラリッ、礼儀正しく女将が開ければ來斗は煙草を燻らせビールを飲んでいた。朔太郎を見てニヒルな笑みを見せ、それから女将へ注文をする。
「生一つに、アユの塩焼きと刺身三点盛り、それから明太子ピザで」
「もう。頼んでくれるのは嬉しいですけど、早すぎません? このお客様のご意見も聞かないと……」
「いいんだよ。なぁ、――てんしくん?」
注がれる熱い視線に朔太郎は鼓動を弾ませた。だが、言葉が蘇ってくる。親友とミアという女性からの言葉だ。
――自分は捨てられる。ただのゴミのように捨てられる。……それは耐えらない。だから朔太郎は來斗の視線に気づかないふりをした。
「あ、はい……。瀬川さんにお任せします」
「かしこまりました。では少々お待ちください」
襖を閉めてビールを注ぎに行く女将を置いて朔太郎は席に座ろとした。しかし、來斗が煙草をもみ消したかと思えば急に立ち上がり、――朔太郎を壁に押し付ける。
朔太郎はかなり動揺した。
「な、なんで……すか?」
「お前、――なんか隠してんだろ?」
隠してる、そんなの自分だってそうではないか。だから朔太郎は睨みつけるように來斗を見やった。
「あなただって、俺に隠しているでしょ? 色んな女や男をとっかえひっかえしたりとか、女の人とエッチしたりとか!」
「それは……――――」
「ほら、なにも言えない! 俺のことだってただの遊びで――」
その瞬間、朔太郎は口を塞がれた。空いた唇に唇を食ませ、貪るようなキスを來斗がしたのだ。
「んぅ……んぅ……、ふぅっ、んぅ、んぅっ……――――!!」
激しいキスに脳内の酸素が奪われ、朔太郎は酩酊した。それから崩れ落ちる。朔太郎が赤面し銀色の糸を端に零していると、襖の外から足音が聞こえた。
座り込んでいる朔太郎を庇うように來斗が前に踊り出る。
「お待たせしました~。突き出しとビールです。料理はお待ちになって……って、あれ? 瀬川さん、先ほどのてんし……さんという方、は?」
「あぁ。ちょっと足崩したみたいなんだ。でも平気だ。料理待っているぜ?」
女将は首を横に傾げたかと思えば上品な笑みを見せて立ち去った。朔太郎は現在、呼吸を整えながら、反応している自身を悔しがる。
すると來斗が座り込んできた。
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