海のモグラ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《優しい父親》

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 その日は出張占いを早めに終わらせてモグラと待ち合わせをしてから仁田の家に向かった。仁田の住所と地図は家に訪問する前に聞いておいたのである。
 ちなみに仁田にスマホがないことを伝えれば「……時代遅れだな」とまるで不思議な生き物のように見られたのはどうしてか海月にはわからない。
 家に向かう際、海月は通常通り男性用のチャイナ服を着ていたがモグラはクリーニング仕立てのスーツを着ていた。濃紺をベースにしたスーツにストライプ柄の水色のネクタイを締めてネクタイピンを留めている姿は、普段のだらしなく居座っているモグラとは雲泥の差であった。
 こげ茶の髪もワックスで程よく固めており、しっかりとしている姿は普段よりも精悍な顔立ちが際立って見える。……だが本人は「スーツって久しぶりに着るから、なんか堅苦しいね」などと腑抜けた発言をしていた。そんなモグラに海月はどうしてだが安堵する。 
 バスに一時間ほど揺られて着いた片田舎は歩けば歩くほど田舎さが極まった。こんな田舎があるのだなとも思ったが、田舎だからこそ空気が澄んでいて、時折浮かぶ夜空の星空を眺めて海月は奇麗だなとも感じた。まる自分たちを導く道しるべのようだ。
「きれいだな~、星」
「そうですね……。奇麗ですね」
 モグラと二人して星々を満喫していると、大規模な土地を背に一軒の住宅が見えた。少しぼろそうだが広い感じが伺える住宅にモグラが玄関チャイムを押した。すると一人の青年が顔を出した。端正なイケメンだ。だが彼に負けないぐらいモグラはにっこりスマイルで名刺を掲げた。
「どうもぉ~、占い専門店モグラ店主のモグラですぅ~。仁田さんのお宅で合っていますか?」
「あぁ、馬鹿な弟たちの弁護をしてくれる変わった人……じゃなかった。優しい人たちですよね。初めまして。長男の一馬かずまです。父は今、次男の啓二けいじと一緒に取引先との会議をしているので、俺が対応します」
「あぁそうなんだ。よろしくねぇっ!」
「あの……、――弟たちがお世話になります」
 頭を下げた一馬は海月よりも上に見えた。
「お邪魔しますぅ~」
「……お邪魔します」
 モグラと海月は家に上がらせて頂き、そして粗茶を貰った。本題に入る前に判明したことで一馬は大学で経営学を学んで農業のマーケティングの参謀として尽力しているらしい。次男の啓二が農家を継ぐらしく、大学で学びながら父親の元で修行中なのだそうだ。
 そう思うと息子たちを大学に出している分、仁田はケチではあるが家庭想いの優しい父親だというのがわかる。
 きっとやりくりをして大学に出さしてあげているのだと思うと涙ぐましい限りだ。モグラが茶を啜って飲んだ。
「それで三男と四男の双子の兄弟くんはどこかな? まさかぁ……どこかで油売ってなんかしていないよね?」
「いえっ! さすがに裁判沙汰になったら困るので今は謹慎中にさせています。高校にもそう言われていますし。――今、呼んできますね」
 一馬が立ち上がり二階へと繋がる階段へと呼ぶと二人の青年が恐々としながら現れた。
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