不幸ヤンキー、”狼”に狩られる。〜助走〜

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

文字の大きさ
47 / 75
”狼”の舞台挨拶

不幸ヤンキー、”狼”に興味を持つ。【3】

しおりを挟む
その週の日曜日。心との面会がてら取材にて哉太が行こうとした…はずの予定であった。

「はっはっは!!!…もう一度言ってみろ?場磁石?」

笑ってはいるがかなり怒っている様子の撫子など気にもせずに哉太は喫煙室にて煙草を吸いながらごねていた。

「やっぱ無理だって言ってんの~。だって取材とは言えさ?あんな小さな子に俺のあんな過去やそんな過去までバレるんでしょ?…嫌に決まってんじゃん~。」

「…お前は自分が嫌だったら担当編集を困らせても良いと思ってんな?」

「うん。良いと思ってる。自分を大切にしないと人は大切に出来ないじゃん?」

吐き出した煙に哉太がにこりと笑えば撫子は盛大な溜息を吐いてから大きく笑って煙草を取り出して火を付ける。吐き出された煙から紡ぎ出された言葉はわがままな哉太には容易に分かり切っていた。

「はっはっは!!!まあお前がそう言うと思ったからな~!秘密兵器を2つ持ってきたぞ?」

にこにこと元気よく笑っている撫子に哉太は煙草の火を消してから首を傾げる。

「???秘密兵器って躑躅のことでしょ?あと1つは何よ?」

疑問を浮かべている哉太に撫子はにっこりと笑うのだ。

「それはお楽しみだ!…いやぁ!あの少女に取材できるなんてな~!」

「???…まあいいや。俺はどっかでブラついてるから。」

この時の哉太は知りもしない。撫子が日頃の恨みをとある人物に言って説教を受けさせようとしているという事実に。


哉太は現在、自身の人嫌いをここまで呪ったことは無いほどの後悔を感じながら正座をしている。その視線の先には普段からギラついてる瞳をさらに鋭くさせた赤髪の青年…彼岸花 幸と言う名の恋人に説教を受けているからだ。

「あんた俺に言ったよな?ちゃんと仕事してくるって。それなのになんで今、30分は正座させて足を痺れさせてでも俺がこんなに怒ってんのか…あんた分かってんのか?」

「…大体はワカッテいます。」

明らかに怒っている様子の幸はそこらの不良がちびりだすほどの鬼の形相をしている。普段であれば本人も気にしているので笑顔の練習をよくしている苦労者ではあるのだが…今回はその表情筋は怒りの方へと向いていた。

「その割には、撫子さんやら躑躅さんを困らせて?挙句の果てにはどこかへ遊びに行こうと…?撫子さんから聞いたぞ?あんた人嫌いだけど性欲は人並み異常なもんだから、面倒なことは躑躅さんや撫子さんに押し付けて、遊んでいたらしいな?」

年下ではあるもののさすがに怒気を孕ませたヤンキーに哉太は少々たじろいでいる。そんな彼の心情などつゆ知らず幸は仁王立ちをしてから言い放つのだ。

「あんたはまずは周囲の人間に感謝すべきだ。あんたみたいにワガママで横暴で身勝手な奴を真摯に面倒見てくれている人にちゃんと感謝をしろ。」

「し…真摯だなんて言葉、よく使えたね~。お兄さん驚いて」

「話は逸らすな。バかなた。」

冷たい言葉に哉太が静かになれば幸は哉太に近づいて少し悲しそうな顔をする。

「俺と初めて会った時だって…本当は仕事かなんかがあったけど、それを放ったらかしにして俺に…あんなことしたんだろ?あの時は死ぬかと思ったから本当に助かったし感謝もしてるけど…。結局は俺ってそれだけの人間だったんだな~って思ったら…なんか悲しいな。」

「それは!!!それは少し違うって!って!痛っ!!」

正座から足を崩そうとすれば慣れない正座によって足が痺れて滑稽なこけ方をしてしまう哉太ではあるが彼はそれでも弁解をしたかった。

「確かにあの時は…そういう気持ちが無かったかってなったら嘘になるけど。…でも。人間嫌いな俺にこんな気持ち…”好き”とか”独り占めしたい”とか!そんな気持ちをくれたのは花ちゃんだけだよ!花ちゃんを傷つけたこともあったし今も傷付いたと思うけど…それでも、俺、花ちゃんが…幸がこの世で一番好き。一生好き。…愛してる…から。」

最後の言葉は哉太自身も言い慣れていなかったようで口ごもってしまった発言になってしまうがそれでも幸は嬉しかった。自身が胸にかけているリングネックレスを取り出して哉太におもむろに見せてから…足を崩して未だに立てないでいる哉太の額にそっとキスを落とす。少し恥ずかしがるようにはにかんだ笑顔に哉太が呆然と見れば幸は言葉を掛けるのだ。

「俺さ。哉太さんのおかげで少し自分の将来に希望が持てたんだ。…今までずっと1人だったから。俺を愛してくれた人はもうこの世に居ないから。…どうでもいいやっていう俺の将来に光を与えてくれたのは…哉太さんだけだよ?」

「…花ちゃん。」

哉太が痺れる足を抑えながら立ち上がろうとすれば先ほどまで鋭い目つきになっていた幸がいつの間にか顔を綻ばせて手を差し出す。哉太にとって今の幸はまるで天使のように錯覚してしまうほど優しげな笑みを見せる幸ではあるが哉太の手を取ってから立ち上がらせて肩を貸してからお願いをするのだ。

「だから哉太さんも、ちゃんと撫子さんや躑躅さんにお礼を言わないとな?…せっかく恵まれた環境に居るんだから。…あと春夏冬さんにもな?」

赤髪の天使の言いつけに堕落した狼は大きく頷くことしか出来なかったのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

処理中です...