鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

文字の大きさ
19 / 65

《無数の蛇たち》

しおりを挟む
 睦月に地面へ落とされた大蛇は受け身など取らずに頭を打ってしまう。しかし鮮血の血は流れるが雨に打たれて再び立ち上がった。「貴様……おのれぇっ!」
 襲い掛かる大蛇に睦月は長刀を携えて振りかかって斬りかかる。大蛇は右肩を裂かれるものの無数の蛇たちが右肩を塞いで止血する。そして再生をした。「なんだと……?」睦月は驚きで目を見開いた。
 「ふははっ! はははっっ!!!」大蛇は不敵に笑いながら紫の着物から蛇たちをばらまいた。睦月は蛇を切り裂いた。鮮血に染まる赤い雫は雨に打たれて薄まっていく。
 外は曇天の空で大雨が降っていた。睦月は動きやすい服を借りてなお服が重くて動きづらさを感じさせる。「くっそっ……!」
 無数の蛇が睦月に噛みついた。睦月は払いのけた。しかし噛まれた左腕から痛みと共に痺れを感じた。「なんだ、これは……?」
 ぐらつく頭の中で睦月はふと考えた。あぁ、これは毒蛇だと。そう思ってからどうしようかと考えた。はじめに浮かんだのは毒が全身に回らないうちに左腕を切り落としてしまおうかと考えた。
 不便ではあろう。痛かろう。でもそうしなければ自分は助からない。だから鞭木は左腕に長刀を振りかざそうとした。しかしその刹那。――長刀は弾かれた。白く美しい刀に。そして長い髪の青年に阻まれたのだ。
「やめろ睦月。腕があるだけでもありがたいと思え。なんとかおらがする」
「……鬼治丸様。でもっ」
 するとよーじの身体に憑依したきじは指輪を手にして願う。「かの者の毒を打ち消せっ!」その言葉を紡いだ途端、睦月の重くだるかった身体は軽くなっていく。
 しかし青い光の結晶は八つのうち五つになってしまった。すると大蛇の身体が呻いた。呻いたかと思えばおどろおどろしく笑って身体を変えていく。
 身体が巨大になったかと思えば無数の蛇の首を持った忌々しい大きな蛇の姿となった。その姿は八岐大蛇に近い。違うのは首が五つということぐらいか。
 現在、きじと睦月は雨に濡れた学校の校門前に居る。さてどうすべきかと考えた睦月ではあるが、きじは短刀を向けて睦月へ視線を投げる。「ここで仕留めるぞっ、睦月っ!」それから勇猛に果敢に走り出して八岐大蛇の首を裂いていった。
 八岐大蛇の首が割れたかと思えば、無数の首がきじへ襲い掛かる。そこを睦月が加勢して切り裂いていく。
 そしてその鮮血なる二人の姿を見ていた夜空は恐ろしくて、でも果敢な二人の姿に見惚れてしまう。自分もあんな風に強くなりたいと願うばかりだ。
 しかし自分が付け入る隙はない。どうするべきかと、どうしたら良いかと夜空は考えていた時、弱っていく八岐大蛇は呻きながら話していく。「お前は、お前は我になにを……差し出す。我になにを差し出すんだ?」
 するとよーじに扮した青年が自分の身を差し出した。「おらの一部を差し出す。おらが兄者の怒りを治める」
 夜空はその言葉に目を見開いた。自分の親友が化け物に身を捧げようとしている。そんなのは嫌だった。
 よーじの身体が透けていく。よーじがどこかへ行ってしまうかもしれない。そう思ってはいられない夜空は走り出す。「やめろぉぉぉぉ!! 僕が代わりに、代わりに差し出すっ!」
 消えそうになるよーじの手を取って、引き上げて外へ打ち上げた。それから夜空は八岐大蛇の中へ入っていったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...