鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《妖艶な女、八岐大蛇》

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 蛇の集合体から固まって現れたのは白髪の美しい女であった。見惚れてしまうほどの妖艶さによーじはたじろいでしまう。しかし、その妖艶さは不気味でもあった。
 女は愕然としている夜空に向けてにこりと笑んだ。「夜空、その男はおぬしのなんじゃ? あの者は?」女の言葉に夜空はためらいつつ答える。
「えっと……、この小さな男の子は知りませんけどよーじは僕の親友です」
 すると女は微かによーじに向けて笑んだまま自己紹介をする。「我が大蛇じゃ。またの名を八岐大蛇という。鬼道丸様のみ使いとして生きていたものじゃ」
 だが、と言って大蛇はきじを見てまた軽やかに笑う。その笑いは不気味でもあった。「そなたは鬼道丸様の出来損ないだな。弟だろう。やはり粗末で小さい坊主じゃ」
 するときじは白い短刀の弥生を収めたかと思えばよーじに近づいた。その行動を見て大蛇は高笑いをする。「そうかっ。おぬしっ、兄に勝てないから人間を頼るのだなっ! ははっ、これは面白い。自分が五体満足でなくなるのを、その男が背負うのだろうな!」
 その言葉に今度はよーじが驚いた。すると目の前に居た睦月が瞬時に長刀を手にして大蛇へ向かって窓の外へ投げ出す。大蛇と共に睦月は校舎から真っ逆さまに落ちていくのでよーじが目を閉じた、瞬間にきじが目の前に現れる。「ごめん、……よーじ」するとよーじの視界が暗転して意識を失ってしまった。
 夜空は親友であるよーじの身体の中に少年がすり抜けるように入っていく姿を見て唖然としていた。カメラを持っていないのが残念であった。
 しかも驚くべきことに少年に取り込まれたよーじの髪は長くなり、服装も変化していく。あの少年が着ていた黒と白の菊の紋様の羽織になり下駄を履いていたのだ。
 夜空は驚いて口を開けたまま目を見開く。「……よーじ。よーじな、の?」
 するとよーじは振り向いたかと思えばつかつかと夜空の元へ向かう。夜空は恐怖で苛まれた。すると引き寄せられるように指輪がぽろりと外れてしまった。「あっ……。指輪が……!」装着していた指輪を嵌めようとするとそれをよーじのような青年が阻んで奪ってしまう。
 さすがの夜空もこれには怒って返せと言い放つ。「返してよっ! それは僕の願いが叶う指輪だ。よーじにはいらないだろう」そんな夜空によーじのような青年は寂しげな顔をして呟く。
「……いる。これは兄者の怒りを治める為に必要なのだから」
「兄者って……、どういうこと?」
「いずれ話す。それじゃあおらは大蛇を倒しに行く」
 そう言って長い髪の青年は破られた窓から飛び出してしまった。その俊敏な動きと華麗な姿のよーじに夜空は見惚れてしまう。しかし、あの美女である大蛇のことも気になった。大蛇はいったいどうなってしまうのだろうか。あの可憐で美しい女性はどうなってしまうのだろう。
「……僕も行かなきゃ」
 そして夜空も血だらけで窓が破られた教室を去るのであった。その後、いい意味でも悪い意味でも教室が封鎖されるのはその数分後であった。
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