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《お前はそれだけの存在じゃない》
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窓ガラスを開け放てば飛び出した黄金色のカラスが水しぶきを上げて羽を震わせていた。するとよーじがリュックに入っていたタオルを取り出してカラスの身体を拭う。懸命に拭いたので水滴はタオルに吸収されたようだ。「ほらっ、これで水滴がなくなったぞ?」
カラスが鳴いたかと思えば、シャツにデニムを履いた青年の姿になった。睦月である。「いやぁ、兄貴。ありがとうございます! 助かりました!」
「いや。こっちもごめんな。気づくのが遅くて……」
「大丈夫ですよ。”偵察”は慣れていますから!」
「……偵察?」
その言葉に反応を示したよーじにカステラを下げているきじは睦月へカステラを渡した。ついでによーじにもあげている。二人は礼を言って食べるときじが話を紡ぐ。
「睦月には偵察の願いをしてもらったんだ。おらは守衛さんに止められていたからさ」
「確かに止められていたな。でも、なんの偵察だ?」
「草薙剣と十拳剣の気配とその正体だ」
「……なにそれ?」
そう言い放ったきじは睦月に「案内してくれ」と言って案内を求める。すると睦月は頷いて訳も分かっていないよーじも急いで連れてある場所へ向かう。
そこはよーじの教室であった。そしてそこには窓に佇んでいる夜空の姿があった。夜空が首を傾げる。「どうしたの、よーじに……そこの二人は?」しかしよーじが答えるのではなくきじがなにかを呟いたかと思えばよーじのキーホルダーとして付けていた弥生が姿を変えて白兎になった。
しかしそれから白く美しい短刀の姿となる。きじは夜空に向けて短刀を向ける。
「その禍々しい指輪、外してもらえる? 聖なる十拳剣の聖力が弱まっている。これじゃあ邪気の力である草薙剣が圧倒的に勝つ」
「えっ、なにを……言って――?」
「外さないなら、――無理やり返してもらう」
するときじは瞬時に夜空の元へ向かって短刀を突き出した。さすがにこれにはよーじも驚愕する。「やめろっ、きじっ!」
呼びかけた途端、夜空の親指に嵌めていた指輪が輝きだした。そしてそこから無数の大きな蛇たちが現れる。睦月が叫ぶ。「草薙剣が強くなっていますっ、鬼治丸様っ!」
「なんのこれしきっ!」
きじは無数の蛇たちの開いた口元を狙って弥生を差し向けた。すらりと切り開かれる蛇たちに夜空は悲鳴を上げる。
しかしそれはよーじもそうであった。鮮血に彩る窓と蛇たちの骸によーじは恐怖で彩られる。そこへ睦月がよーじの前に立ち塞いで目元を隠した。「怖くありません。これは鬼治丸様の宿命です。鬼を穿つ鬼道丸様の怒りを治めるのが、鬼治丸様なんです」
しかしそれでも、あの小さくて可愛らしい姿のきじが真紅に染まる魔がましい世界に行ってしまいそうなのが怖かった。
そしてそれは自分がきじと憑依されていた時にも、睦月と対峙していた時にもそうであったのだと思うときじの強さがわかったような気がした。
鬼を治める者として名前を与えられる前には”餓鬼”と名付けられ、奴隷のように扱われていた双子の片割れで弱い少年は、今は強く生きている。この世を恨むように今を生きていたのだ。
でもそれでも戻ってきて欲しい。醜く淀んだ世界だけではない、光り輝いた世界を見て欲しくて戻って欲しくて堪らない。「……やめてくれよ」
無数の蛇たちが飛び交いきじの身体に噛みつく。きじは負傷してしまった。頬に紅が染まる。だが構わずに刀を振るおうとした。しかし、それでもよーじは怒鳴るように祈るように言い放ったのだ。
「お前はそれだけの存在じゃないだろうっ! 鬼治丸っ!!!」
きじはぴたりと止まった。すると蛇たちは指輪の中へ集約していったかと思えば、女の姿になった。「……よくぞ止めたな、人間?」
カラスが鳴いたかと思えば、シャツにデニムを履いた青年の姿になった。睦月である。「いやぁ、兄貴。ありがとうございます! 助かりました!」
「いや。こっちもごめんな。気づくのが遅くて……」
「大丈夫ですよ。”偵察”は慣れていますから!」
「……偵察?」
その言葉に反応を示したよーじにカステラを下げているきじは睦月へカステラを渡した。ついでによーじにもあげている。二人は礼を言って食べるときじが話を紡ぐ。
「睦月には偵察の願いをしてもらったんだ。おらは守衛さんに止められていたからさ」
「確かに止められていたな。でも、なんの偵察だ?」
「草薙剣と十拳剣の気配とその正体だ」
「……なにそれ?」
そう言い放ったきじは睦月に「案内してくれ」と言って案内を求める。すると睦月は頷いて訳も分かっていないよーじも急いで連れてある場所へ向かう。
そこはよーじの教室であった。そしてそこには窓に佇んでいる夜空の姿があった。夜空が首を傾げる。「どうしたの、よーじに……そこの二人は?」しかしよーじが答えるのではなくきじがなにかを呟いたかと思えばよーじのキーホルダーとして付けていた弥生が姿を変えて白兎になった。
しかしそれから白く美しい短刀の姿となる。きじは夜空に向けて短刀を向ける。
「その禍々しい指輪、外してもらえる? 聖なる十拳剣の聖力が弱まっている。これじゃあ邪気の力である草薙剣が圧倒的に勝つ」
「えっ、なにを……言って――?」
「外さないなら、――無理やり返してもらう」
するときじは瞬時に夜空の元へ向かって短刀を突き出した。さすがにこれにはよーじも驚愕する。「やめろっ、きじっ!」
呼びかけた途端、夜空の親指に嵌めていた指輪が輝きだした。そしてそこから無数の大きな蛇たちが現れる。睦月が叫ぶ。「草薙剣が強くなっていますっ、鬼治丸様っ!」
「なんのこれしきっ!」
きじは無数の蛇たちの開いた口元を狙って弥生を差し向けた。すらりと切り開かれる蛇たちに夜空は悲鳴を上げる。
しかしそれはよーじもそうであった。鮮血に彩る窓と蛇たちの骸によーじは恐怖で彩られる。そこへ睦月がよーじの前に立ち塞いで目元を隠した。「怖くありません。これは鬼治丸様の宿命です。鬼を穿つ鬼道丸様の怒りを治めるのが、鬼治丸様なんです」
しかしそれでも、あの小さくて可愛らしい姿のきじが真紅に染まる魔がましい世界に行ってしまいそうなのが怖かった。
そしてそれは自分がきじと憑依されていた時にも、睦月と対峙していた時にもそうであったのだと思うときじの強さがわかったような気がした。
鬼を治める者として名前を与えられる前には”餓鬼”と名付けられ、奴隷のように扱われていた双子の片割れで弱い少年は、今は強く生きている。この世を恨むように今を生きていたのだ。
でもそれでも戻ってきて欲しい。醜く淀んだ世界だけではない、光り輝いた世界を見て欲しくて戻って欲しくて堪らない。「……やめてくれよ」
無数の蛇たちが飛び交いきじの身体に噛みつく。きじは負傷してしまった。頬に紅が染まる。だが構わずに刀を振るおうとした。しかし、それでもよーじは怒鳴るように祈るように言い放ったのだ。
「お前はそれだけの存在じゃないだろうっ! 鬼治丸っ!!!」
きじはぴたりと止まった。すると蛇たちは指輪の中へ集約していったかと思えば、女の姿になった。「……よくぞ止めたな、人間?」
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