鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《怨霊でも良いじゃないか》

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 睦月が元気よく声を上げてから二人は居間に戻る。そこには豪華な夕飯が並べられていた。今日はそばと天ぷら各種であるらしい。
 桃葉が二人へ声を掛ける。「鬼治丸様っ、睦月様! 夕飯が出来上がりましたので、さぁどうぞ!」桃葉は二人を座布団に座らせた。そして全員がそろったので皆は手を合わせていただきますをする。
 夜空がそばを啜って嬉しそうな顔をした。「うんっ! 美味しいですね~、おそばにコシがあって美味しい!」
「夜空様、このエビの天ぷらも美味です。さぁ、お口を開けてくださいまし」
「あっ、ありがとうございます……」
 夜空がクシナにエビの天ぷらを食べさせてもらっている横で、かぼちゃの天ぷらを食べていたきじはそばを啜っているよーじを見やる。よーじはその視線に気が付いたようで「どうした?」などとそばを咀嚼しながら話しかけた。
 するときじは少し話しにくそうな顔をして言葉を紡いでいく。「……立ち聞きをしたんだ。百済宗の由来を聞いたんだな」
 よーじが少し驚いたような顔をしたかと思えば今度は桃葉が深々と謝罪した。
「鬼治丸様っ、話してはいけませんでしたか……。わしはもう、鬼治丸様が話しているのかと思っておりまして……」
「あぁ、じいちゃんは悪くないんだ。いずれ話そうとはしていたし」
 そう言って切そばを食べている弥生を見やる。弥生は赤い瞳を爛々としていてそばを咀嚼していた。桃葉が作ってくれたそばがよほど美味いようだ。切そばを盛っていた器をきじへ差し出す。その爛々とした真紅の瞳にきじはふっと笑う。
「弥生、天ぷらは駄目だぞ。胃もたれしちゃうから」
 そう言ってからきじはそばを少量盛って弥生へ差し出した。弥生は嬉しそうにもさもさと食べている中でよーじへ話をする。
「おらが怨霊の類でこの百済宗が生まれたってことを、……おらはあまり知られたくなかった」
「……きじ」
「まっ、じいちゃんは悪くないし睦月にもいずれ知られるだろうって話されたしな。だからもういい。お前はおらのことを気味悪がっても仕方ないって、そう思うから」
 それからピーマンの天ぷらを食べて「……苦い」などと子供らしく言うものの、きちんと食べるきじの姿によーじはなんとも言えない気持ちになった。
 本当であればエビなどを食べたいのではないかとか、そばを食べたいのではないかと思うのだがエビもそばも人気が高い。
 「うまいっ、うまいっです!」などと睦月がエビの天ぷらもそばも啜っている。きじが本当は食べたいのではないかとあって、よーじは自分が取ったエビの天ぷらを分け与え、そばをきじの器に入れた。
 きじが驚いた顔を見せる。「……よーじ、どうした急に?」
 するとよーじはこんな話をしだした。「我慢することはないよ。それはお前が怨霊だからじゃない。怨霊であったとしても、祠を建てられるほどの力や悪行を起こしたとしても、――それはお前の心の叫びだ」
 よーじは呆然とするきじの小さな口元へエビの天ぷらを差し出した。それから笑いかける。「美味いぞ。じいちゃんが作る料理は格別に美味しいんだ」
 きじは恐る恐るエビの天ぷらを食べて咀嚼する。すると目を見張った。
「おい……しい……。こんな天ぷらは初めてだ」
「だろ? じいちゃんは料理も上手いんだ。まっ、俺に対しては厳しいけどな」
「葉治っ! そんなはしたない真似をするんじゃないっ!」
 桃葉に怒られたよーじは「は~いっ」などと言いつつ、きじへエビの天ぷらを食べさせていた。その姿を睦月が「いいな……」などと羨ましがっていたのを夜空とクシナは見ていたのであったとさ。
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