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《親父の生まれ変わり》
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夜空とクシナが二人で帰っていった。そして睦月とよーじと弥生と共に風呂へ入ってからきじは寝床へ着く。ふかふかの布団は定年退職して今は神職をしている桃葉が雨が止んだ空へ手早く干して夕方には取り込んだものだ。
太陽の匂いはしないが温かい匂いと気持ちが入った布団であった。きじはすぐにカラスの状態で眠ってしまった睦月と白兎の弥生、そして、朝が早いよーじを置いて夜空を見上げていた。「……少し、散歩に出るか」
ここに生命を受けて二日目だが、睦月のおかげで大体のことは把握できた。睦月とクシナと共に現代っ子のよーじと夜空、そして桃葉に色々聞いたおかげでもある。
窓辺から出ていこうとすると髪を引っ張られた。誰だろうかと思って振り返ると、よーじであった。傍に弥生も赤い瞳で話しかけている。「どこ行こうとするんだ? 散歩か?」
「あ、あぁ……。散歩だ。でも平気だよ。おらは一人でも平気だ」
「そんなわけないだろ。こんな夜中に小学一年生ぐらいの子供が歩いていたら警察に補導されて捕まるぞ?」
補導という言葉に首を傾げているきじではあるが、今度は弥生が懐へ飛び込んできた。弥生はそのままきじの懐へ飛び込んで首を揺らす。どうやら置いていって欲しくないようだ。
きじはそんなよーじと弥生にふふっと軽く笑う。「睦月には内緒だぞ?」そして玄関からよーじときじに抱かれている弥生はそっと出ていくのだ。
カラン、カランと下駄を鳴らして現在時刻は夜の十一時だ。よーじは明日は起きられるかな、などと思いつつ夜の散歩に馳せる。
「きじ、お前は眠くないのか?」
「そこまで眠くないよ。まぁおらが居た世界は毎日、戦が起こっていた。休む暇なんてなかった」
まずいことを聞いてしまったかなと思ったよーじではあるがきじは話を進める。
「それに自分が死ぬかもしれないって考えながら生きてきたからなぁ。こんな平穏な夜はいつぶりかな。……なんだか感慨深いよ」
「そっか……」
少し切なくなる話をさせてしまったなとよーじは自分を恥じた。しかしそれでもきじは雨上がりの夜空を見上げる。今日は鋭利な三日月であった。
「でも今は、こうやって生き永らえていることができた。終わったはずの人生なのに、どこかやり直しているような気がしているんだ。できなかったこと、食べられなかったもの、体験できなかったことが今、――生まれて初めてできることができる」
それからよーじへ振り返ったかと思えば、にこっときじは微笑んだ。その笑みは少年らしい笑顔であった。その笑みに不覚にも安心してしまうよーじではあったが次の言葉で衝撃を受けた。
「おらが神のみ使いを封じるたびに、おらの身体が欠損するのをどこで知ったんだ?」
少年のような笑みとは裏腹な言葉によーじは心臓を悪い意味で掴まれた。しかしそれでもきじはよーじが気づいていたのをわかっていた様子だ。
よーじは立ち止まり息を吐いてから「なんとなく、かな……」なんて話す。そう、なんとなくなのだ。よーじはきじの悲痛な顔を見て、察してしまったのだ。よーじにはそういう才能があった。明確に言えば予兆のような予期のようなことがわかるのである。
しかしその予兆に今までは抗うことはなかった。予兆があっても仕方がないと飲み込んでいた。だが、父親が鬼治丸の祠で事故に遭った時に変わったことがある。
「なぁ、きじ。俺さ、きじの生まれ変わりが父さんだと思うんだ」
「よーじの父上が、……おら?」
なんとなくそう思ったのだ。そしてまた父親の生まれ変わりがきじだとふと感じた。これも予兆だが。
「あぁ、だから今度こそ守りたいんだ。今度こそ親父を守りたい。生まれ変わりの親父を、……きじを守りたいんだ」
よーじときじが歩道で立ち止まる。そこに一台の車が停車した。停車したかと思えば、車のウィンドウが徐々に開く。窓が開いて男の声が聞こえた。
「そいつは無理だよ、兄ちゃん。その忌み子は俺ら神のみ使いに捧げられる貧相な化け物だ」
よーじときじは振り返る。弥生も真紅の瞳を開ける。車内のドアから開け放たれて出てきたのは眼鏡の男と茶髪の男であった。声を掛けたのは猫背気味の男の方であった。
「餓鬼みっけ」その表情は冷徹極まりなかった。
太陽の匂いはしないが温かい匂いと気持ちが入った布団であった。きじはすぐにカラスの状態で眠ってしまった睦月と白兎の弥生、そして、朝が早いよーじを置いて夜空を見上げていた。「……少し、散歩に出るか」
ここに生命を受けて二日目だが、睦月のおかげで大体のことは把握できた。睦月とクシナと共に現代っ子のよーじと夜空、そして桃葉に色々聞いたおかげでもある。
窓辺から出ていこうとすると髪を引っ張られた。誰だろうかと思って振り返ると、よーじであった。傍に弥生も赤い瞳で話しかけている。「どこ行こうとするんだ? 散歩か?」
「あ、あぁ……。散歩だ。でも平気だよ。おらは一人でも平気だ」
「そんなわけないだろ。こんな夜中に小学一年生ぐらいの子供が歩いていたら警察に補導されて捕まるぞ?」
補導という言葉に首を傾げているきじではあるが、今度は弥生が懐へ飛び込んできた。弥生はそのままきじの懐へ飛び込んで首を揺らす。どうやら置いていって欲しくないようだ。
きじはそんなよーじと弥生にふふっと軽く笑う。「睦月には内緒だぞ?」そして玄関からよーじときじに抱かれている弥生はそっと出ていくのだ。
カラン、カランと下駄を鳴らして現在時刻は夜の十一時だ。よーじは明日は起きられるかな、などと思いつつ夜の散歩に馳せる。
「きじ、お前は眠くないのか?」
「そこまで眠くないよ。まぁおらが居た世界は毎日、戦が起こっていた。休む暇なんてなかった」
まずいことを聞いてしまったかなと思ったよーじではあるがきじは話を進める。
「それに自分が死ぬかもしれないって考えながら生きてきたからなぁ。こんな平穏な夜はいつぶりかな。……なんだか感慨深いよ」
「そっか……」
少し切なくなる話をさせてしまったなとよーじは自分を恥じた。しかしそれでもきじは雨上がりの夜空を見上げる。今日は鋭利な三日月であった。
「でも今は、こうやって生き永らえていることができた。終わったはずの人生なのに、どこかやり直しているような気がしているんだ。できなかったこと、食べられなかったもの、体験できなかったことが今、――生まれて初めてできることができる」
それからよーじへ振り返ったかと思えば、にこっときじは微笑んだ。その笑みは少年らしい笑顔であった。その笑みに不覚にも安心してしまうよーじではあったが次の言葉で衝撃を受けた。
「おらが神のみ使いを封じるたびに、おらの身体が欠損するのをどこで知ったんだ?」
少年のような笑みとは裏腹な言葉によーじは心臓を悪い意味で掴まれた。しかしそれでもきじはよーじが気づいていたのをわかっていた様子だ。
よーじは立ち止まり息を吐いてから「なんとなく、かな……」なんて話す。そう、なんとなくなのだ。よーじはきじの悲痛な顔を見て、察してしまったのだ。よーじにはそういう才能があった。明確に言えば予兆のような予期のようなことがわかるのである。
しかしその予兆に今までは抗うことはなかった。予兆があっても仕方がないと飲み込んでいた。だが、父親が鬼治丸の祠で事故に遭った時に変わったことがある。
「なぁ、きじ。俺さ、きじの生まれ変わりが父さんだと思うんだ」
「よーじの父上が、……おら?」
なんとなくそう思ったのだ。そしてまた父親の生まれ変わりがきじだとふと感じた。これも予兆だが。
「あぁ、だから今度こそ守りたいんだ。今度こそ親父を守りたい。生まれ変わりの親父を、……きじを守りたいんだ」
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「そいつは無理だよ、兄ちゃん。その忌み子は俺ら神のみ使いに捧げられる貧相な化け物だ」
よーじときじは振り返る。弥生も真紅の瞳を開ける。車内のドアから開け放たれて出てきたのは眼鏡の男と茶髪の男であった。声を掛けたのは猫背気味の男の方であった。
「餓鬼みっけ」その表情は冷徹極まりなかった。
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