鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《危険な状態》

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 夜風に吹かれた茶色の猫毛の髪に猫背気味の風体の男によーじは首を傾げていたがきじはどこか警戒心抱いているような様子であった。きじが弥生をぎゅっと握る。「弥生、――変化しろ」
 きじの突然の言葉であっても弥生は従うように姿かたちを変えて白く輝く小刀へと変化した。それから猫背気味でニヤついている男へ弥生を差し向けた。
 だが状況がわかっていない様子のよーじがきじを止める。「きじ、お前なにやっているんだっ!」それでもきじはポケットに手を突っ込んでいる茶色の男へ警戒心を見せた。それから呟いた。
「福禄……。お前、神のみ使いの中でおらに遠い存在であったはずだ。だからお前は本来であれば人間に加担などしない。それはお前が神のみ使いの中で一番、富も福も継承しているからだ」
 福禄と呼ばれた男はきじの言葉を聞いてもニヤついたままだった。そのままきじは話を続ける。「でも、お前の匂いから邪悪な匂いがする」
 すると福禄は猫毛の髪を耳に掛けた。
「あー、それはね。俺が満腹亭のニンニクマシマシ餃子とレバニラ炒めを食べたからなんじゃないかなぁ?」
「違う。そんな食品の匂いじゃない。お前の身体全体から邪気が匂っているって言っているんだ」
 そしてきじはニヒルな笑みを浮かべる福禄へ弥生で斬りかかろうとする。しかしそれをよーじが羽交い絞めにした。「やめろっ、殺人でも起こす気かっ!」
「ちがうっ! こいつは兄者の神のみ使いの一体だ。鬼を治めるおらとしては見逃せないっ!」
 どういうことだと思っているよーじではあるが福禄はニヒルな笑みを浮かべた。それから「さっさん、俺と憑依して」するとさっさんと呼ばれた黒縁眼鏡の男は息を吐き出した。
「俺は疲れているんだがな。早くしてくれ」
「うん。大丈夫だよ。――俺は餓鬼なんかに負けないよ」
 そしてさっさんの身体に福禄がすり抜けて通っていく。それから福禄に憑依されたさっさんは拳を合わせて一礼した。そして車の操縦士へ「コインパーキングで待っててくれ」などと言って車へ告げてこちらへ向かう。
 黒縁眼鏡を外して胸ポケットに入れたさっさんは先ほどのクールな印象とは打って違った。「俺は光石 涼。なんとでも呼んでくれ、少年っ!」
 自己紹介をした瞬間、涼はすぐさま動いて短刀を片手にしているきじを殴り飛ばそうとしたのだ。
 ――ゴウッッッ!!!
 歩道の壁に穴が開くほどの威力によーじは唖然とした。しかしきじはわかっているかのように小さな身体を反射的に翻した。
「よーじっ! いったん逃げるぞっ、福禄はどうやら大量の邪気を吸い込んだようだっ!」
「どっ、どういうことだよっ!? あの馬鹿力はなんなんだっ!?」
 きじを連れて走って公園へと向かうよーじではあるがわけがわからずにいた。しかし、これだけは言える。
 あの福禄に憑依された男の馬鹿力を受けたら死ぬと。まさしく殺人ゲームだ。そんな福禄は走るよーじに追いついて掴み上げようとした。その間際をきじが短刀の弥生で翻弄させる。「させるかっ、お前っ!」
 それでも福禄はいびつな笑みを浮かべていた。いや、涼という男は走りながらにこにこと笑んでいる。「あははっ~、早く走らないと俺に殺されちゃうぞ。少年たちよっ!」
 よーじときじは逃れるように走っていく。駆けていく。涼はいびつな笑みを浮かべたままだ。
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