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《早太との再会》
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福禄と一緒に会社を出る頃には小枝が居なかった。もう時間的に遅い。帰ってくれた方がこちらとしても安心するから良かったなと涼はふと思う。
福禄が迎えの車にどっかりと乗り込んだ。その隣を涼は座るのだが福禄を強制的に歯磨きさせたとはいえ、ニンニクとにらの匂いがした。「窓を開けてくれ」
運転手がバックミラーを少し開ける。秋と冬の入り混じった匂いがした。そんな中で運転手に目的地を伝える。
運転手は一瞬だけ呆気に取られたが構わないと言った様子で目的地をカーナビに合わせた。そして車を発進させた。
黒いボディの車は国産車だ。下手に外国車なんかに乗って気取って盗難でもされたら困ると考え、敢えて国産車にした。
鹿目株式会社コンサルティングの息子として生まれ、最初は平社員として下積みをして培ったことがある。それは自分の足元を見ない者は弱者にさえもその地位を奪われるということだ。
それは涼が経験して学んで若くして副社長として築いてきた教訓であった。社長の七光りだと陰口を叩かれながらクールに振舞って強者のお膳立てをして逆に勝ち取ったことも多々ある。だから今の地位があるのだ。
「うわぁ~。ほんとうっに田舎道だねぇ。同じ都内だとは思えないよ」
それでも自分にはなにかが欠けていた。欠けていたからこそ福禄と出会う前は部長の地位で止まっていたのだ。そんなときに出会ったのが、シカの仏像から現れた福禄であった。
福禄は涼のことをなんとでもないように考えているだろうが、涼は違う。福禄は涼にとってまさに福の神であった。
福禄は経営が破綻しかけた会社を立ち直らせる力があった。そのお目付け役として福禄と初めて接触した涼が任命されて今の地位がある。
福禄は本人も気づいている富の継承を司っていた。話しか聞かないが鬼道丸という人物が自分の財力を福禄に渡したらしい。そのおかげで福禄は富も地位も築くことができるのだ。
しかし、福禄は彼の弟である鬼治丸という双子の弟が大嫌いである。なぜかと言うと、自分に片足しか捧げなくてひもじい思いをしたからだと本人が憎たらしげに話していた。
田舎の山林を抜けて車が停車した。そこには大きな門があった。運転手が涼へ伺うような視線を向ける。
涼は咳ばらいをしてから「開けてくれ」と言い放った。するとドアが開かれた。涼が先に出てインターホンがないかを探そうとすると福禄も一緒に出てくる。
「俺も行くよぉ。運転手さんには待っててって言っておいたからさ」
「へぇ~。お前の割には気が利くな」
「だって久しぶりに早太と会うもん。あいつ、でかくてデブだけど怪力なイノシシでさぁ。俺、神のみ使いになって解き放たれてから一度も会ってないもんなぁ」
「久しぶりだなぁ~」などと歌うように話す福禄に涼は少し口端を綻ばせた。福禄は人間の金に執着する醜さというものがないからどこか気心が知れている。
食欲は人以上にあるが金に対する欲がまったくないのが福禄という存在なのだ。そんな風に思っていると門から人が現れた。
メイド服を着ているショートの女であった。「お待ちしておりました。主人があなた様を呼んでおります」
涼は首を捻る。「主人……? すみません。製薬会社の新薬開発本部の方ではありませんか?」
しかし女は首をさらに捻ってから横に振る。切れ長の瞳がどこか自分を威嚇させるような雰囲気で満たしていた。
そんな二人に福禄がなにかを嗅ぎ出すように女の前に出た。すんすんと犬のように嗅ぐ姿に涼は叱ろうとした瞬間、――福禄はニヒルな笑みを浮かべた。
「よぉ、早太。そんな女の格好をして俺に何の用?」
早太……それは、神のみ使いであるイノシシを司る一体である。だが福禄に車内で聞いていた存在とは違った。
なぜならば早太はまさしく女の姿であるのだから。声も女だし胸の膨らみもくびれもある。だが福禄が笑っていると女は嫌な笑みを見せた。「久しぶりだな、シカ野郎」
福禄が迎えの車にどっかりと乗り込んだ。その隣を涼は座るのだが福禄を強制的に歯磨きさせたとはいえ、ニンニクとにらの匂いがした。「窓を開けてくれ」
運転手がバックミラーを少し開ける。秋と冬の入り混じった匂いがした。そんな中で運転手に目的地を伝える。
運転手は一瞬だけ呆気に取られたが構わないと言った様子で目的地をカーナビに合わせた。そして車を発進させた。
黒いボディの車は国産車だ。下手に外国車なんかに乗って気取って盗難でもされたら困ると考え、敢えて国産車にした。
鹿目株式会社コンサルティングの息子として生まれ、最初は平社員として下積みをして培ったことがある。それは自分の足元を見ない者は弱者にさえもその地位を奪われるということだ。
それは涼が経験して学んで若くして副社長として築いてきた教訓であった。社長の七光りだと陰口を叩かれながらクールに振舞って強者のお膳立てをして逆に勝ち取ったことも多々ある。だから今の地位があるのだ。
「うわぁ~。ほんとうっに田舎道だねぇ。同じ都内だとは思えないよ」
それでも自分にはなにかが欠けていた。欠けていたからこそ福禄と出会う前は部長の地位で止まっていたのだ。そんなときに出会ったのが、シカの仏像から現れた福禄であった。
福禄は涼のことをなんとでもないように考えているだろうが、涼は違う。福禄は涼にとってまさに福の神であった。
福禄は経営が破綻しかけた会社を立ち直らせる力があった。そのお目付け役として福禄と初めて接触した涼が任命されて今の地位がある。
福禄は本人も気づいている富の継承を司っていた。話しか聞かないが鬼道丸という人物が自分の財力を福禄に渡したらしい。そのおかげで福禄は富も地位も築くことができるのだ。
しかし、福禄は彼の弟である鬼治丸という双子の弟が大嫌いである。なぜかと言うと、自分に片足しか捧げなくてひもじい思いをしたからだと本人が憎たらしげに話していた。
田舎の山林を抜けて車が停車した。そこには大きな門があった。運転手が涼へ伺うような視線を向ける。
涼は咳ばらいをしてから「開けてくれ」と言い放った。するとドアが開かれた。涼が先に出てインターホンがないかを探そうとすると福禄も一緒に出てくる。
「俺も行くよぉ。運転手さんには待っててって言っておいたからさ」
「へぇ~。お前の割には気が利くな」
「だって久しぶりに早太と会うもん。あいつ、でかくてデブだけど怪力なイノシシでさぁ。俺、神のみ使いになって解き放たれてから一度も会ってないもんなぁ」
「久しぶりだなぁ~」などと歌うように話す福禄に涼は少し口端を綻ばせた。福禄は人間の金に執着する醜さというものがないからどこか気心が知れている。
食欲は人以上にあるが金に対する欲がまったくないのが福禄という存在なのだ。そんな風に思っていると門から人が現れた。
メイド服を着ているショートの女であった。「お待ちしておりました。主人があなた様を呼んでおります」
涼は首を捻る。「主人……? すみません。製薬会社の新薬開発本部の方ではありませんか?」
しかし女は首をさらに捻ってから横に振る。切れ長の瞳がどこか自分を威嚇させるような雰囲気で満たしていた。
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早太……それは、神のみ使いであるイノシシを司る一体である。だが福禄に車内で聞いていた存在とは違った。
なぜならば早太はまさしく女の姿であるのだから。声も女だし胸の膨らみもくびれもある。だが福禄が笑っていると女は嫌な笑みを見せた。「久しぶりだな、シカ野郎」
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