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《福禄と再会》
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よーじの胸倉を今にも掴みかかりそうな涼ではあったが、身体に痛みが走ったのか動きを止めて床にひれ伏した。
看護師が涼へ冷静な声を掛ける。「駄目ではありませんか、光石さん。この方々は光石さんの為に、わざわざ見舞いに来てくれたんですよ?」
「俺の、見舞いに……ですか? どうして?」
涼は首にギプスを嵌めているので上を向いたままであった。しかしその視線は虚空を彷徨っている。しかしその終着点はよーじときじに向けられる。
きじは涼へ態勢までも向けたかと思えば直角九十度並みにお辞儀していた。それから明瞭な言葉を放った。
「すまなかったっ! おらのせいで……兄さんの、福禄を、その……」
きじは小さな身体で必死に謝罪して懺悔をした。きじは自分も弥生を失った悲しみを知っている。だからこそ、涼が金銭目的で福禄をしたわけではないことをわかっていたのだ。しかし、たとえ金銭目的であってもきじは涼に謝っただろう。
涼は小さな男の子が自分に向けて頭を下げている姿を人々に見られて辱めを受けていた。プライドの高い涼にはうってつけの攻撃だったかもしれない。
よーじはなんとなく涼が可哀そうだと思いきじの肩に手を乗せた。
「顔上げなって。この人が恥ずかしがってる。光石……さんだったかな。さすがにお前には謝られるのは恥ずかしがっている様子だぞ?」
きじがその言葉を聞いて首を傾げていた。どうしてだかわからないようだ。
「どうしてだ? 素直に謝るのは良いことだぞ。兄者は謝らなかったけど」
兄貴は謝らなかったのかいとよーじは内心でツッコミを入れた。それから一つ咳ばらいをする。
「いや。さすがに小さな子供に謝らせる大人はみっともないだろう。えっと~……、光石さんで合っていますよね?」
すると涼は頬をりんごのように赤らめてから頷こうとするがギプスで動かせないので身体全体が動いた。よーじはさらに涼が可哀そうに見えてきてしまったので立ち上がろうとする涼へ手を差し伸べた。
「ここではなんなので、どこかで話せませんか? たとえば光石さんの病室とかいかがですか?」
「あ……それは、まぁ……」
「お待ちください。さすがに未就学の子供は病室には入れられませんよ。……騒がれたら困りますし」
よーじと涼の間を遮ったのは先ほどの看護師であった。ショートの髪を揺らして身を乗り出して話に入り込んでくる。小枝は彼女によって奥のソファで横になっている。少しうとうとしていてどこか危なげであった。疲れていたかもしれないなとよーじはふと思った。
そんな中できじが頬を膨らませて怒り出した。「違うっ! おらはこれでも、十二歳だぞっ! 当時の食い物が悪かったし病気もしていたから背が伸びなかったんだっ」
「えっ、きじって小学六年生ぐらいあったの? ……わからないなぁ。いやぁ、目からうろこだ」
「おいっ、よーじ! お前もそんなことを言うのかっ。そんなことよりも、福禄をこの兄さんに渡してやれっ!」
福禄という単語に反応を示した涼は自分の力で立ち上がる。負けず嫌いで大人げない涼によーじは息を吐きつつもポケットの中から小さな箱を取り出した。
「これが福禄の依代です。これがあれば福禄と心の中で話せるはずです。……俺たちは無理でしたけど」
よーじが涼に手渡した。涼は箱を開けると金色の雫のような石がそこにある。それから感じ取ったのだ。鼓動のような、心臓のように刻んで脈打つ音が。
「……福禄。――待っていたぞ」
金色の雫が光り輝いたかと思えば涼の中に入り込む。すると涼は急に気怠そうな顔つきになった。その顔を見てきじは気が付いたようだ。「恥ずかしがることはないんじゃないか、――福禄?」
「うっせぇなぁ、餓鬼は。こちとら勝手に首を取られて、朱印にもされて、……勝手に、みっさんと離れ離れに、なって……」
先ほどのプライドの高そうな顔をしていた涼は今、福禄が乗り移っている。福禄に憑依されている涼は泣き出しそう表情を浮かべていた。
きじが福禄へ歩み寄り身体に触れる。背が小さいので肩や頭に触れられないのだ。「ごめん、福禄。……辛かったよな。本当に、ごめんな」
素直に謝るきじに福禄は目を見張ったかと思えば一筋の涙を流した。しかし拭い去って鼻で笑う。
「はっ、そ、そんなことで許すかっつ~の。まぁでも、また……こうやって、みっさんと会わせてくれてありがとう」
「……じゃあ、おらの仲間になってくれるか?」
「それは別。俺の仲間は、相棒はみっさんだけだから。――でもこれだけは言える」
福禄はその場に立ち尽くしている看護師へ鋭い視線を向けた。「早太。お前、なに企んでいるの?」
きじはその言葉に唖然として目を疑っていたが、聞き覚えのないよーじは首を傾げていたのだ。
看護師が涼へ冷静な声を掛ける。「駄目ではありませんか、光石さん。この方々は光石さんの為に、わざわざ見舞いに来てくれたんですよ?」
「俺の、見舞いに……ですか? どうして?」
涼は首にギプスを嵌めているので上を向いたままであった。しかしその視線は虚空を彷徨っている。しかしその終着点はよーじときじに向けられる。
きじは涼へ態勢までも向けたかと思えば直角九十度並みにお辞儀していた。それから明瞭な言葉を放った。
「すまなかったっ! おらのせいで……兄さんの、福禄を、その……」
きじは小さな身体で必死に謝罪して懺悔をした。きじは自分も弥生を失った悲しみを知っている。だからこそ、涼が金銭目的で福禄をしたわけではないことをわかっていたのだ。しかし、たとえ金銭目的であってもきじは涼に謝っただろう。
涼は小さな男の子が自分に向けて頭を下げている姿を人々に見られて辱めを受けていた。プライドの高い涼にはうってつけの攻撃だったかもしれない。
よーじはなんとなく涼が可哀そうだと思いきじの肩に手を乗せた。
「顔上げなって。この人が恥ずかしがってる。光石……さんだったかな。さすがにお前には謝られるのは恥ずかしがっている様子だぞ?」
きじがその言葉を聞いて首を傾げていた。どうしてだかわからないようだ。
「どうしてだ? 素直に謝るのは良いことだぞ。兄者は謝らなかったけど」
兄貴は謝らなかったのかいとよーじは内心でツッコミを入れた。それから一つ咳ばらいをする。
「いや。さすがに小さな子供に謝らせる大人はみっともないだろう。えっと~……、光石さんで合っていますよね?」
すると涼は頬をりんごのように赤らめてから頷こうとするがギプスで動かせないので身体全体が動いた。よーじはさらに涼が可哀そうに見えてきてしまったので立ち上がろうとする涼へ手を差し伸べた。
「ここではなんなので、どこかで話せませんか? たとえば光石さんの病室とかいかがですか?」
「あ……それは、まぁ……」
「お待ちください。さすがに未就学の子供は病室には入れられませんよ。……騒がれたら困りますし」
よーじと涼の間を遮ったのは先ほどの看護師であった。ショートの髪を揺らして身を乗り出して話に入り込んでくる。小枝は彼女によって奥のソファで横になっている。少しうとうとしていてどこか危なげであった。疲れていたかもしれないなとよーじはふと思った。
そんな中できじが頬を膨らませて怒り出した。「違うっ! おらはこれでも、十二歳だぞっ! 当時の食い物が悪かったし病気もしていたから背が伸びなかったんだっ」
「えっ、きじって小学六年生ぐらいあったの? ……わからないなぁ。いやぁ、目からうろこだ」
「おいっ、よーじ! お前もそんなことを言うのかっ。そんなことよりも、福禄をこの兄さんに渡してやれっ!」
福禄という単語に反応を示した涼は自分の力で立ち上がる。負けず嫌いで大人げない涼によーじは息を吐きつつもポケットの中から小さな箱を取り出した。
「これが福禄の依代です。これがあれば福禄と心の中で話せるはずです。……俺たちは無理でしたけど」
よーじが涼に手渡した。涼は箱を開けると金色の雫のような石がそこにある。それから感じ取ったのだ。鼓動のような、心臓のように刻んで脈打つ音が。
「……福禄。――待っていたぞ」
金色の雫が光り輝いたかと思えば涼の中に入り込む。すると涼は急に気怠そうな顔つきになった。その顔を見てきじは気が付いたようだ。「恥ずかしがることはないんじゃないか、――福禄?」
「うっせぇなぁ、餓鬼は。こちとら勝手に首を取られて、朱印にもされて、……勝手に、みっさんと離れ離れに、なって……」
先ほどのプライドの高そうな顔をしていた涼は今、福禄が乗り移っている。福禄に憑依されている涼は泣き出しそう表情を浮かべていた。
きじが福禄へ歩み寄り身体に触れる。背が小さいので肩や頭に触れられないのだ。「ごめん、福禄。……辛かったよな。本当に、ごめんな」
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「はっ、そ、そんなことで許すかっつ~の。まぁでも、また……こうやって、みっさんと会わせてくれてありがとう」
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