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《始まりと再会》
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「早太って誰だ? きじ、お前の知り合いか?」
「知り合いもなにも、――神のみ使いの一体だ。イノシシのな」
「えっ、イノシシの……か?」
目を見開いているよーじに看護師の女は肩を小刻みに震わせたかと思えば、勝手に笑いだしていた。「あっはははっっ! 餓鬼は気が付かずにシカ野郎が気づいたかっ! 馬鹿な餓鬼で助かった!」
高笑いする女に餓鬼と呼ばれたきじに彼を馬鹿にされてムカついているよーじは苛立ちを見せた。さすがに馬鹿にされるのはお互いにムカついた。
きじは看護師姿の早太へむっとした声で言い放つ。
「お前は未練もなにもないな。表に出ろ。すぐにおらの弥生と仲間の狼煙で首を切り裂いて朱印にしてやる」
しかし早太はあくどく笑うだけできじの言葉に耳など傾けない。きじは初めて人前で舌打ちをする。きじが苛立つ姿を見るのは初めてかもしれないとよーじはふと思った。
早太は舌なめずりして企んだ笑みを見せる。「ここで暴れても良いんだぞ、餓鬼よ。まぁ、そうしたら俺の臭気やら殺気で死人が出るな」
「……なんだと?」
「あぁ、言い忘れてた。鬼道丸様がな、福禄の宿り主の会社を乗っ取っているんだ。あの方は素晴らしい。弱者を切り捨てて、強者だけ会社に残すようにと社長にも命令を下ださっている。あぁ、さすが鬼道丸様っ。神に等しい存在だ!」
鬼道丸を称え、そして崇める姿にきじは悔しげな表情をするがよーじは違った。百済宗で主人公扱いされ、本尊としても君臨している鬼道丸ではあるが弟のきじだって負けてはいない。
きじは兄の鬼道丸の怒りを鎮める為に自分のすべてを神のみ使いに捧げて怨霊として彷徨ったのだ。
兄の鬼道丸も凄惨な死を遂げたが弟のきじも凄惨で無残な死を遂げた。身体が脆弱であったせいで大きくなれなかったきじ。だが、今は信頼の置ける仲間と桃葉や小枝の作るご飯のおかげで幸せに過ごしている。
それでなにが悪い。不憫で悲壮な死を遂げた人間が幸せになってなにが悪いんだ。
「きじ。……憑依してくれ。俺に考えがある」
「よーじ。でもここは室内だぞ? 甚大な被害が出る。どこかで早太と離さないと……」
「わかってる。――だからこうする」
よーじはズボンの尻ポケットに入っているスマホを手に電話を掛けた。掛けた先は夜空であった。「もしもし、夜空か? 今から戦闘だ。睦月を連れて訓練した公園に出てくれ」
『えっ、い、いきなり言われてもっ――』
「お前の力が頼みなんだ。敵はかなり強いと思う。だから力を貸してくれ」
数秒の間があったかと思えば夜空はふふっと笑う。それから『睦月さーん、電話です!』などと話して相手を変えたのだ。
『兄貴っ、今から出陣ですか? こっちは準備運動をしてきましたから大丈夫ですっ』
呑み込みの早い睦月に笑いつつよーじはスマホに力を込めた。「……生きて帰るぞ」
『はいっ! じゃあヨルっ。指定の場所に行くぞ!』
『了解しました! じゃあよーじ。またあとでね!』
電話はそこで切れてしまった。しかし頼もしい電話であった。しかしそれでも早太の企んだような笑みは福禄でさえも戦慄させる。
広場には違和感を覚えた患者が退散してしまった。しかしそこで真紅の髪の毛をした小柄な少年が現れる。小柄な体躯ではあるが現代風なシャツを着て、パーカーを羽織、黒いジーパンを履いていた。そしてその少年は軽々と小枝を姫様抱っこしていたのだ。よーじは赤い髪をした異様な少年を見て首を傾げる。
「母さん……? それに、――――お前は?」
真紅の髪の少年はどこかきじを想起させる雰囲気がした。しかし殺気と沸き立つ血なまぐさい匂いはきじでさえも、よーじでさえも気づく。
ぎらついた瞳をしたその少年はきじを見て大輪の笑みを見せた。
「久しぶりだな、餓鬼。俺は畜生……いや、鬼道丸だよ」
「……兄者、か? ……どういうこと、だ?」
餓鬼が変わり果てた兄の姿を見て背筋がぞくりとして震えた。優しかった兄の姿は今、ここに居ないと直感する。「兄者……、兄者なのか?」
「あぁ。お前の兄貴だ。嬉しいだろう?」
「それ、は……」
きじはかなり困惑していた。そんな兄である鬼道丸は小枝をソファへ不躾に置いたかと思えば肩や首を鳴らしていた。それから満面の笑みを浮かべて小枝へ小刀を向けたのだ。「動くな。動いたらお前の幸せの一つをあの世へ召させる」
きじもよーじも福禄も動けずにいた。しかしきじがぶら下げている赤と白の数珠は怒りで満ち溢れているように震えていたのだ。
「知り合いもなにも、――神のみ使いの一体だ。イノシシのな」
「えっ、イノシシの……か?」
目を見開いているよーじに看護師の女は肩を小刻みに震わせたかと思えば、勝手に笑いだしていた。「あっはははっっ! 餓鬼は気が付かずにシカ野郎が気づいたかっ! 馬鹿な餓鬼で助かった!」
高笑いする女に餓鬼と呼ばれたきじに彼を馬鹿にされてムカついているよーじは苛立ちを見せた。さすがに馬鹿にされるのはお互いにムカついた。
きじは看護師姿の早太へむっとした声で言い放つ。
「お前は未練もなにもないな。表に出ろ。すぐにおらの弥生と仲間の狼煙で首を切り裂いて朱印にしてやる」
しかし早太はあくどく笑うだけできじの言葉に耳など傾けない。きじは初めて人前で舌打ちをする。きじが苛立つ姿を見るのは初めてかもしれないとよーじはふと思った。
早太は舌なめずりして企んだ笑みを見せる。「ここで暴れても良いんだぞ、餓鬼よ。まぁ、そうしたら俺の臭気やら殺気で死人が出るな」
「……なんだと?」
「あぁ、言い忘れてた。鬼道丸様がな、福禄の宿り主の会社を乗っ取っているんだ。あの方は素晴らしい。弱者を切り捨てて、強者だけ会社に残すようにと社長にも命令を下ださっている。あぁ、さすが鬼道丸様っ。神に等しい存在だ!」
鬼道丸を称え、そして崇める姿にきじは悔しげな表情をするがよーじは違った。百済宗で主人公扱いされ、本尊としても君臨している鬼道丸ではあるが弟のきじだって負けてはいない。
きじは兄の鬼道丸の怒りを鎮める為に自分のすべてを神のみ使いに捧げて怨霊として彷徨ったのだ。
兄の鬼道丸も凄惨な死を遂げたが弟のきじも凄惨で無残な死を遂げた。身体が脆弱であったせいで大きくなれなかったきじ。だが、今は信頼の置ける仲間と桃葉や小枝の作るご飯のおかげで幸せに過ごしている。
それでなにが悪い。不憫で悲壮な死を遂げた人間が幸せになってなにが悪いんだ。
「きじ。……憑依してくれ。俺に考えがある」
「よーじ。でもここは室内だぞ? 甚大な被害が出る。どこかで早太と離さないと……」
「わかってる。――だからこうする」
よーじはズボンの尻ポケットに入っているスマホを手に電話を掛けた。掛けた先は夜空であった。「もしもし、夜空か? 今から戦闘だ。睦月を連れて訓練した公園に出てくれ」
『えっ、い、いきなり言われてもっ――』
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数秒の間があったかと思えば夜空はふふっと笑う。それから『睦月さーん、電話です!』などと話して相手を変えたのだ。
『兄貴っ、今から出陣ですか? こっちは準備運動をしてきましたから大丈夫ですっ』
呑み込みの早い睦月に笑いつつよーじはスマホに力を込めた。「……生きて帰るぞ」
『はいっ! じゃあヨルっ。指定の場所に行くぞ!』
『了解しました! じゃあよーじ。またあとでね!』
電話はそこで切れてしまった。しかし頼もしい電話であった。しかしそれでも早太の企んだような笑みは福禄でさえも戦慄させる。
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ぎらついた瞳をしたその少年はきじを見て大輪の笑みを見せた。
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「……兄者、か? ……どういうこと、だ?」
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