鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《修羅と化した鬼道丸》

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「お前っ、母さんを殺す気かっ!???」
「殺すもなにも、こいつは俺を冤罪に追い込んだ人間の末裔だからな。ムカつくから殺すだけよ」
 小枝は危険な状態になっているというのに動く気配がない。うとうととしていた様子から、もしかしたら薬でも打たれているかもしれないなとよーじは考えた。
 福禄は憑依している涼が重症の怪我もあるので動けない。しかもきじが動いてしまえば小枝はすぐにあの世行きだ。
(考えろ……。――考えろ、俺っ!)
 よーじは考えることに努めるが鬼道丸は引き笑いのような笑みを浮かべて「条件を変えようか」そう言い放った。
「今あるお前の朱印をこちらへ寄越せ。そうすればお前の母親、いや、百済宗という馬鹿げた巫女には一切手を付けない」
「でも、母さんが助かってもほかの人はどうする」
 意表を突いたよーじの言葉に鬼道丸は肩を震わせて笑ったかと思えば言い放った。「そんなの、――殺すに決まっている。でも安心しろ。死体など残さない。俺がこの世界を恨んでいることを証明する為の道具だ」
 よーじもきじも鬼道丸の言葉に反感を受けた。福禄はただ佇んで様子をうかがっている。それは早太も同じであった。
 きじがわなわなと肩を震わせて紡いでいく。
「兄者……。兄者は修羅と化している。そのままじゃこの世界を血に染めたって、兄者の心はぼっかりと空いたままじゃないか」
「……なに?」
 きじはさらに言葉を続けた。「兄者は飢えているんだ。同じ人間たちに殺された恐怖で、自分の恐怖を上書きしようとしている」
「…………やめろ」
「兄者はその飢えを塗り替えただけなんだ。本当はあったけぇ、おらが体験したようなことをしたいだけで」
「――――やめろって言ってんだろうがぁっっっっーーーー!!!!」
 鬼道丸が小枝へ小刀を突き刺そうとした。「母さんっっ!!!!」
 よーじはすぐさま駆け寄るが間に合わない。このまま小枝は死んでしまうかもしれないと思った時、ふと予兆がした。
 その予兆は白いウサギが短刀を跳ねのける姿であった。その映像が浮かんだ瞬間、鬼道丸はうめき声を上げていた。
「なぁっ、んだっ、こいつっ! この邪魔なウサギはぁっっ!!??」
「……弥生。どうして?」
 なんと数珠であった弥生が顕現したかと思えば小枝と短刀の間に入り、鬼道丸へ噛みついたのだ。その間によーじは眠っている小枝を安全な場所へ避難させようとした。そこで福禄へ尋ねる。
「母さんをどこかへ移動させたい! どこが良いと思う?」
「えっ、えっと……。みっさんの病室はオートロックだけど……」
「そこだ。そこにしよう。きじ、お前も行くぞ!」
 だがきじは動くことはなかった。しかし、その代わりに弥生に手を出そうとしている鬼道丸の頬にビンタをしたのだ。
 パッチィィンッッーーーー!!!
「……な、んだ?」
 鬼道丸は唖然呆然とした顔をしていたが構わずにきじは白兎の弥生を抱えて二人の元へ向かう。「……行こう」
 よーじと福禄が小枝を抱えてきじが弥生を抱えて病室へ向かう時には、鬼道丸は怒りで顔を染めていた。
 早太が餓鬼であるきじが兄で尊敬しているはずの鬼道丸に手を出した瞬間を見てしまったので、こちらも憤りで満ち溢れている。「鬼道丸様。あのよーじ、百済 葉治を殺せば朱印のほとんどは我が手中です。殺してしまいましょう」
「わかっている。……あのくだらねぇ弟に手を出されたんだ。――仕置きしねぇとな」
 赤く腫れた右頬を擦りつつも鬼道丸はあくどい笑みを浮かべていた。しかしそれは彼だけではない。早太もだ。
 早太は看護師の姿から武器となる。それは少し小さめの斧であった。しかし怒りに染まったどす黒い斧は禍々しさと憎しみで作られていた。
 鬼道丸は手に取って四方八方に斧で窓ガラスなどを破って飛散させた。喧騒な音で看護師たちが何事かとなり、それから警報が鳴って警備員たちが来る。
「来たか、人間ども。……俺の力の源となるがいいっ!!」
 修羅と化した鬼道丸は警備員を斧で切り裂いた。血しぶきが上がり悲鳴が、阿鼻叫喚の声が聞こえる。
 多くの警備員で鬼道丸を取り押さえようとしても鬼道丸の俊敏な動きで抑えられずに、ものの見事に殺される。
「はっ、はは……。はははははっっっっ!!!!」
 鬼道丸は凄惨なる現場を見て自分の心が満たされるような気がした。そしてその現場は斧になった早太が吸収してあらかたもなくなくなる。
「さぁて。人間を殺しまくろう。それで、餓鬼に力の差を見せつけてやるんだ」
 鬼道丸は凄惨だった現場を見て笑みを零していたのだ。
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