62 / 65
《睦月とクシナ》
しおりを挟む
睦月はあくどく笑んでいる鬼道丸と対峙する。するとクシナの声がしたのだ。
『睦月様。あなたに力を授けます。先ほどの力を使ってください』
「姉貴……。良いんですか?」
『えぇ。本来は夜空様に取っておいた力ですが、今は緊急事態。――あなたの力が頼りです。お願いしますよ?』
クシナの言葉に睦月はふっと笑ったかと思えば、指輪を変化させて余雫剣を作り出す。今回は槍であった。
「ふ~ん。槍か。睦月がどんな攻撃をしてくるのかは、さっきの攻撃を見たら大体はわかる」
鬼道丸が首を撥ねた火だるまの男は血を流して頭部が転がっていた。しかしその頭部や身体ごと、血までも鬼道丸の持っている斧に吸い込まれていく。
禍々しい臭気であった。血なまぐさく、憎しみと怒りで作り上げられた斧で会った。しかしその斧と共に小柄な少年であった鬼道丸の姿が変化する。
斧は幅が大きく太く大きくなり、大ぶりな剣となった。そして鬼道丸は禍々しい臭気を纏って、――青年へと変化していったのだ。
その青年の髪も真紅に染まっていた。そして長い髪で瞳は黒いが刀のような鋭い瞳であった。青年は背がそこまで高くはないがガタイが良く、足腰もしっかりとしている。そしてなによりも羽織っている赤いパーカーと黒のデニムは戦慄さと荒々しさを感じさせた。
睦月とクシナが目を見張る。睦月が言葉を紡いだ。「あなたは……、鬼道丸、様……」
「あぁ。時間はかかっちまったけど、この姿で居られることができた。まっ、人間たちを殺せばあっという間よ」
「……人間を、――殺したんですか」
鬼道丸はニヒルな笑みを浮かべて言い放つ。「そうだ。俺を敬わずに、逆に恐れて冤罪で殺されたんだ。この憎しみは晴れない。だから俺はこの現代に舞い戻った」
巨大な斧を担ぎ上げた鬼道丸はまずは一振り横へ振り上げた。俊敏な風がなびいて睦月は目を閉じる。その瞬間であった。
「――――くらえっっ!!」
馬鹿でかい斧が睦月の首を狩ろうとしていた。睦月は瞬時に床へと伏せて転がってから態勢を立て直し、余雫剣を変化させて槍や弓矢や長刀を飛ばした。
無数の武器たちは鬼道丸の攻撃を阻んだ。しかし鬼道丸は負けない。鬼道丸は巨大で禍々しい斧を一振りしただけで放っていた武器の軌道を変えてしまう。
しかし、その刹那――
「夜空様は負けません! 余雫剣よ。私の手足となってあの者を捕縛なさいっ!」
今度はクシナが夜空の意識下に入った。余雫剣は今度は大太刀などといった巨大な剣となって鬼道丸の巨大な斧を壊そうと試みる。
「――チッ! 今度はクシナか。……ならばこれでどうだっ!」
鬼道丸は遠距離攻撃を仕掛けるクシナへ斧を携えて突進した。長くて太い大太刀をまるで自分の手足のように巨大な斧を振り上げて地面へと墜落させる。
そして間合いを詰めてクシナへ斬りかかろうと仕掛けた。その瞬間に意識が変わる。「姉貴を殺させるかよ! あんたにはこれで十分だっ!」
今度は睦月が余雫剣を集結させて槍で斬り込んだ。鋭い槍は鬼道丸を貫きかけたが斧で弾かれてしまう。しかし睦月には秘策がある。
睦月は跳躍したかと思えば鬼道丸の懐へ入り、斧を含めて無数の槍を放った。無数の槍は今度こそ鬼道丸を貫いた、……はずだった。
「はぁ~……。良かったぜ。あやかしもたらふく食っておいてよ。あやかしたちが俺の力となるからな」
鬼道丸の顔面も身体中も血だらけであったはずなのに見事に修復されていく。睦月も夜空の意識下に引っ込んでいるクシナも驚嘆した。
まさか再生できるとは思いもしなかった。睦月は崩れ落ちていた目玉や臓物が修復されていく姿を見て胃の中にある胃酸が込み上げてくる感覚を覚えた。
そして思う。これはまずいと。本当にこのまま事態が進行したら、――夜空と共に、クシナと共に死ぬと。
足が震えて動けずにいた。助けを呼ぼうにも呼べない自分が居た。だがこれだけは言える。「……きじ、様」
ここに来ては駄目だと伝えたかった瞬間に、睦月の首を鬼道丸が間合いを詰めて撥ねようとした時であった。
「――――避けろっっっ!」
勇敢な少年が鬼道丸の背後に回り、短刀で鬼道丸の腕を切り裂いていたのだ。その瞬間を見ていた睦月はなにもできずにただ尻もちをついていた。
『睦月様。あなたに力を授けます。先ほどの力を使ってください』
「姉貴……。良いんですか?」
『えぇ。本来は夜空様に取っておいた力ですが、今は緊急事態。――あなたの力が頼りです。お願いしますよ?』
クシナの言葉に睦月はふっと笑ったかと思えば、指輪を変化させて余雫剣を作り出す。今回は槍であった。
「ふ~ん。槍か。睦月がどんな攻撃をしてくるのかは、さっきの攻撃を見たら大体はわかる」
鬼道丸が首を撥ねた火だるまの男は血を流して頭部が転がっていた。しかしその頭部や身体ごと、血までも鬼道丸の持っている斧に吸い込まれていく。
禍々しい臭気であった。血なまぐさく、憎しみと怒りで作り上げられた斧で会った。しかしその斧と共に小柄な少年であった鬼道丸の姿が変化する。
斧は幅が大きく太く大きくなり、大ぶりな剣となった。そして鬼道丸は禍々しい臭気を纏って、――青年へと変化していったのだ。
その青年の髪も真紅に染まっていた。そして長い髪で瞳は黒いが刀のような鋭い瞳であった。青年は背がそこまで高くはないがガタイが良く、足腰もしっかりとしている。そしてなによりも羽織っている赤いパーカーと黒のデニムは戦慄さと荒々しさを感じさせた。
睦月とクシナが目を見張る。睦月が言葉を紡いだ。「あなたは……、鬼道丸、様……」
「あぁ。時間はかかっちまったけど、この姿で居られることができた。まっ、人間たちを殺せばあっという間よ」
「……人間を、――殺したんですか」
鬼道丸はニヒルな笑みを浮かべて言い放つ。「そうだ。俺を敬わずに、逆に恐れて冤罪で殺されたんだ。この憎しみは晴れない。だから俺はこの現代に舞い戻った」
巨大な斧を担ぎ上げた鬼道丸はまずは一振り横へ振り上げた。俊敏な風がなびいて睦月は目を閉じる。その瞬間であった。
「――――くらえっっ!!」
馬鹿でかい斧が睦月の首を狩ろうとしていた。睦月は瞬時に床へと伏せて転がってから態勢を立て直し、余雫剣を変化させて槍や弓矢や長刀を飛ばした。
無数の武器たちは鬼道丸の攻撃を阻んだ。しかし鬼道丸は負けない。鬼道丸は巨大で禍々しい斧を一振りしただけで放っていた武器の軌道を変えてしまう。
しかし、その刹那――
「夜空様は負けません! 余雫剣よ。私の手足となってあの者を捕縛なさいっ!」
今度はクシナが夜空の意識下に入った。余雫剣は今度は大太刀などといった巨大な剣となって鬼道丸の巨大な斧を壊そうと試みる。
「――チッ! 今度はクシナか。……ならばこれでどうだっ!」
鬼道丸は遠距離攻撃を仕掛けるクシナへ斧を携えて突進した。長くて太い大太刀をまるで自分の手足のように巨大な斧を振り上げて地面へと墜落させる。
そして間合いを詰めてクシナへ斬りかかろうと仕掛けた。その瞬間に意識が変わる。「姉貴を殺させるかよ! あんたにはこれで十分だっ!」
今度は睦月が余雫剣を集結させて槍で斬り込んだ。鋭い槍は鬼道丸を貫きかけたが斧で弾かれてしまう。しかし睦月には秘策がある。
睦月は跳躍したかと思えば鬼道丸の懐へ入り、斧を含めて無数の槍を放った。無数の槍は今度こそ鬼道丸を貫いた、……はずだった。
「はぁ~……。良かったぜ。あやかしもたらふく食っておいてよ。あやかしたちが俺の力となるからな」
鬼道丸の顔面も身体中も血だらけであったはずなのに見事に修復されていく。睦月も夜空の意識下に引っ込んでいるクシナも驚嘆した。
まさか再生できるとは思いもしなかった。睦月は崩れ落ちていた目玉や臓物が修復されていく姿を見て胃の中にある胃酸が込み上げてくる感覚を覚えた。
そして思う。これはまずいと。本当にこのまま事態が進行したら、――夜空と共に、クシナと共に死ぬと。
足が震えて動けずにいた。助けを呼ぼうにも呼べない自分が居た。だがこれだけは言える。「……きじ、様」
ここに来ては駄目だと伝えたかった瞬間に、睦月の首を鬼道丸が間合いを詰めて撥ねようとした時であった。
「――――避けろっっっ!」
勇敢な少年が鬼道丸の背後に回り、短刀で鬼道丸の腕を切り裂いていたのだ。その瞬間を見ていた睦月はなにもできずにただ尻もちをついていた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる