鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《クシナ、恐れよっ!》

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 福禄に憑依されたよーじと打って変わり、睦月に憑依されている夜空は戦闘以外であれば睦月の意識下にないことになった。
 だからよーじの受け答えは夜空の意識でやっていたのである。そんな夜空に睦月が頭の中で舌打ちをする。
『おい、ヨル! ちゃんと兄貴には敬語使えよっ。きじ様も居ると言うのに……』
「そんなことを言われてもねぇ~。睦月さんはよーじのことを兄貴だって思っているだろうけど、僕はよーじの親友だもん。別にいいでしょ?」
 すると睦月がさらに舌打ちをした。夜空はよーじが睦月になにをしたのかと考える。それでも、まぁいいかと考えて現場に向かう。
 現場の病院には立ち入り禁止のテープと共にパトカーや重装備な人々の軍団が居た。立ち入り禁止の前で警備の警察官が夜空に声を掛ける。
「そこの君っ! 入っちゃだめだよ。野次馬は帰った!」
「違うんですっ。そこの病院に僕の友人が居て――」
「そんなの関係ないから。ほらっ、さっさと帰った!」
 やはり気弱な夜空相手では鉄面被でガードの高い警察官に太刀打ちができない。やむ負えなく夜空は脳内で睦月に相談する。「どうしよう……。これじゃあ現場に入れないよ……」
 睦月がムカつくぐらい盛大な息を吐いた。しかし気弱な夜空は反応が鈍い。代わりに指輪の形状であるクシナが怒りを露わにした。
『睦月様。夜空様を馬鹿になさらないでくださいっ! 夜空様は睦月様のような野蛮ではないのですよっ』
『――チッ。クシナお嬢様は気弱の味方ってか?』
 どこかでブチッという音が聞こえた気がした。そういえばクシナは、いや、八岐大蛇はきじの血管を捧げていたなと呑気に夜空は思いついた。
 クシナに実態があればおそらく微笑んでいたのだろう。怒りの形相で弾けた血の巡りが沸点を超えた美女は、優しさを忘れていた。
 すると夜空の意識下が変わった。クシナが躍り出たかと思えば指輪を手にする。指輪を手にしたかと思えば呪文のようにクシナは紡いでいくのだ。
「余雫剣……無数の剣となり刃となりて、――邪魔な人間どもを、……消せっ!!!!」
 夜空がクシナに意識下を乗っ取られていたのではっとしたかと思えば、……空から槍が降ってきた。しかも大雨のように振ってくる。しかし夜空は指輪によって守られていた。シールドのようなものが張られていた。
 警察官たちが怯えと恐怖で槍たちを拳銃で撃つが効かない。槍はまるで意思を持つように警察官たちを黄色のテープの外へ連れ出す。
「なっ、なんだっ!???」
「まずいぞっ!???」
「なにが起こっているんだっ!???」
 多くの警察官たちはパトカーや大型車両に乗ってなんとか耐えようとするが、無数の槍が突き刺してねじ込んでくる。
 それからドッカッーーン!
 車両がはじけ飛んだのを見て多くの警察官が阿鼻叫喚や悲鳴を上げて逃げ去ってしまった。
 現場には夜空一人となる。夜空は冷や汗を垂らした。「あの……クシナさん。もしかして殺人は――」
『大丈夫ですわ、夜空様。爆発した車両は吹っ飛びましたが、人間たちは無事ですよ。少し火だるまになりましたが』
「えっと……。クシナさん、うん、とね……」
 これにはさすがの睦月もクシナの存在に畏怖さを感じた。それからクシナへ恐々とした声で言葉を紡ぐ。『えっと……、気安く名前呼びで……すみませんでしたっ! 姉貴と呼ばせてくださいっ!』
 脳内では睦月がクシナへひれ伏しているだろう。そんなことよりも夜空はクシナのせいで爆発して負傷している警察官の人たちへ駆け寄る。
 火だるまになったようだがどうやら無事のようだ。夜空は必死に声を掛けた。
「今すぐ水とか持ってきます! 看護師さんも呼びますからっ!」
「うあ……あぁ……」
 人間の焼け焦げた匂いに少々吐き気を催したが夜空は助けを呼ぶ為に病院へ行こうとした瞬間、――意識がまったくなくなった。

「よぉ、睦月にクシナ。また派手にやらしてくれてこっちは嬉しいよ」
 血だらけの斧を携えた真紅の髪の少年がにこりと笑う。夜空の意識を完全に支配している睦月は舌打ちをした。「鬼道丸様ですか……」
 鬼道丸はにこっと笑んだまま、転がっている人間の首を撥ねたのだ。
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