鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《朱印が集結して始まる》

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 きじと共に鬼道丸が消えてもなお戦いは続いていた。早太が置いていった狼煙を使ってよーじを殺そうとしたのだ。しかし、早太は泣いてうずくまるよーじを殺せなかった。「やめてやれ、早太。お前は調子に乗りすぎだ」
 そう言って狼煙は狼の姿となって顕現し、早太の右腕を噛みついたのだ。おびただしい出血をした早太は悲鳴を上げる。
「ぐぁぁっ!??? おおかみ、野郎……かぁっ!???」
 狼の姿である狼煙は遠吠えを上げたかと思えば頷いた。「あぁそうだ。自惚れているてめぇの目を覚ましてやりたかったから、ここに参上したわけだ」
 それから狼煙は人間の姿となる。すると福禄も、クシナや睦月でさえも憑依を解いて人間の姿となっていた。しかし弥生は居なかった。
「きじっ……きじっ……!」
「よーじ……? どうしたの、泣いて……?」
 事態の把握が追いついていない夜空に睦月は彼の頭を叩いた。それからそっと耳打ちをする。「きじ様が鬼道丸様を治める為に自らを差し出しんだ。弥生はおそらくきじ様の魂だから、そのせいでここに居ない」
「そんなっ……。でも、みんなどうして人間の姿に――」
「夜空様。この姿ではお久しぶりです」
 クシナは夜空へにこっと大輪の花のように笑んだ。夜空が目を見開き泣き出しそうな顔になる。しかし、睦月がそれを阻むように夜空へデコピンをかました。
「痛ったぁ……! もうっ、睦月さんばっかりでずるいっ!」
「泣きそうな顔をするな、男だろお前は。姉貴に守られてばっかじゃ駄目だろ」
 睦月からの姉貴発言でクシナが鼻を高くしている中で痛みに負けて依代となりかけている早太へ福禄もにやっと笑って早太の腹を思いっきり殴った。そして蹴り上げたのだ。
「――――ぐあぁぁぁっっ!????」
 その強烈な拳と足技で本当に依代となって朱印となった早太へ福禄はあっかんべーをする。「みっさんにしたこと、俺は覚えていたからね。まったく!」
 次に狼煙が睦月の方を見やる。睦月は覚悟が決まったかのようににこっと微笑んだ。「わかっています。皆さんも兄貴に納められているのであれば、――俺も納めます。まぁ、いろんなことが出来たし、悔いはありませんからね」
「それなら話は早い。おい、よーじ。泣いてねぇで俺の言葉に耳を傾けろ。お前には今から重要なことを伝える」
「ひぃっく……、うぅ……、重要な、こと……?」
 狼煙に頭を撫でられて目元を拭われて耳を傾けるよーじではあるが、どうして主因となった者たちが人間の姿になったのかという疑念に駆られた。
 しかしそこには早太や弥生、そして鬼道丸やきじは居なかった。きじと弥生が居なかったのは寂しく思えた。それでも狼煙はよーじへ向けて放つ。
「これからはお前が百済宗の継ぐんだ。坊ちゃんの努力を無駄にするなよ」
「えっ、ど、どういう意味で……?」
 すると狼煙や福禄、そして睦月やクシナが透明になっていく。透き通っていく。それが別れだと、最期の別れだと気づくまで早かった。なぜならよーじは予兆ができるからだ。
 しかしふと思う。どうしてきじの突飛な行動と突然の別れには予兆することができなかったのだろうかと。 
 朱印が集まり、よーじの左胸に刻印が施された。そこから物体が現れる。それは一体の少年と青年が組み合わさってできた仏像であった。
 それを手に取ってよーじはわかったことがある。これがきじとの最後ではなく新しく始める百済宗の歴史だと言うことに。
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