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《再会》
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あたたかい青と白の球体を抱いて、楠は泣き叫んだ。うぉうぉ……と泣き叫び、気が付けば人だかりができていた。そのなかに植物探偵団も居る。
「先生、それって……」
すると楠は羞恥のあまり泣き叫ぶのをぐっと抑え「……ウツギが最後に残してくれたんだ」そう告げた。
すべすべとしていて奇麗な球体に瞬かせるが、その前にも楠がなぜアベリアのなかに居るのにも疑問が募る。
「なんで先生アベリアのなかに入っているの?」
またしても目木に疑問を問いかけられたので答えようとすれば……そうだと楠はアベリアのなかにそっと青と白の色調をした球体を放り込んだ。
――これでウツギが戻ってくるかもしれない。そう強く願った。
だが一向にウツギが出てくるわけでもない。ただ、球体は停止したままである。
楠は唇を噛んだ。
「なんだよっ! なんだよ……、お前、戻ってくるって言ってたじゃねぇか。アベリアの前に来ればって!」
涙が溢れて止まらない。とめどなく止まらず楠がしゃくりあげる。
「お前に会いたいよ。……また会って、楽しいことしようぜ。――お願い、だから」
楠は近づき白と青の球体を抱き寄せ……キスをした。
するとなんということか。
光がたちまち広がり、楠の腕のなかで大きく重たくなる。
「な、なんだ!??」
神々しく輝く光のなかで脚が生え、腕が生え、顔の造形が整い、華奢で薄い背中に小柄な身体、そして艶めく茶色の髪の青年はぐっすりと眠っていた。――周囲が大きな歓声を上げた。その見覚えのある顔は……。
「姫が……生き返った、のか?」
「うーちゃん……?」
百日紅と黒鉄がさまよい挙動不審になっているさなかで、楠は呼吸をしているウツギに――キスをする。
すると左目が白潤な瞳が目を覚ましにっこりと微笑んでいた。
「ね、驚かせるって言ったでしょ」
「……馬鹿ウツギ」
二人はまた誓いのキスをした。ウツギの瞳は白いままだった。
事情聴取の内容としては「どうして現場に向かってしまったのか?」を催促するような質問であったが、以前からウツギが狙われていたのに動かなかった警察もどうだと楠が言い負かし、謝罪の弁を受けた。
だがそれでも、一般人がむやみに現場に急行するなと告げられて、長時間渡った事情聴取とお咎めは終えることができた。
ウツギは一応警察の医務室に入って眠っていた様子である。疲れていたのであろう。起き上がってから事情聴取を医務室で受けたうえで去ることになった。
「大変だったぁ~」
戦闘用ネイチャードールであったがゆえに生き延びることができたウツギではあるが、内心では瞳を青くさせて不安で堪らなかった。
みんな自分が死んだと思い込んでいるとも思ったし、思わせた自分も悪かったなと考え込んでいた。
特に楠には悪いことをしたなども。
「はぁ~……気が重い」
ウツギは濃紺にさせて肩を落とし、出口へと向かう。出口の扉を開けて外に向かうと蒸し暑さが増した。蒸し暑い……となったところでベンチに腰かけている植物探偵団と楠が目に入った。
瞳を白くさせる。こんな熱いさなかで待っていたことが嬉しかったし、感謝でしかなかった。
だがそれはウツギ以外ではなかったらしい。植物探偵団も目が合って「お~い!」そう声を掛けてくれて、近づいて頭を撫でられたり抱き締められたり手を取られたりしたのだ。
「うーちゃんが戻ってきてくれて良かったよ。ほっとした……」
「うーちゃん心配させやがって~!!!」
「姫が無事で良かったぜ」
黒鉄がポンポンと頭を撫で、目木にくすぐられるように抱き着かれ、そっと触れられるように百日紅に握られた。
自分って愛されているのだという実感が湧いた。それぐらい皆、心配もしてくれたが温かい言葉や行動をくれたのだ。
「うーちゃん、どこ見てんの~。ちゃんと俺の方見て?」
目木が自分の方に手を添えて手繰り寄せ、キスでもしそうなほど近くに迫ったのち、ゴンッ! という音が聞こえたかと思えば、真顔で目木の頭をぶん殴りウツギを取り返していた楠が居た。
目木を威圧するような楠にタジタジになるウツギではあるが……。
「俺の恋人にちょっかいかけんな、馬鹿。というか、お前らはとっとと帰れ」
冷静だが率直な言葉に右目が瞬いて、ジクリと疼いて離さない。
――これも嬉しいという感情か。ウツギはその衝撃のあまり楠を抱き締めた。
「あ、ずるーい。うーちゃんの目の色が変わったじゃん」
「バーカ。恋人なんだから当たり前だろう。――じゃ、俺らは帰るから」
「先生のばーか!」
目木に言われつつもひらひらと右手で「また明日ね~」などと言ってくれる仲間に、ウツギは嬉しくて目を細めた。白く透き通った瞳に変わった。
黙ったまま歩いていくウツギと楠ではあったが、不意に楠に「今日は別の場所に泊まるか」なんて言い出した。
ウツギは少し青色に染まった。
「別の場所……ですか? どうして?」
「……お前と家以外でも一緒に居たいから、かな」
蒸気が出そうなほどの言葉にウツギが黙っていると、楠がニヒルに微笑んで「行くぞ!」そう言って手を繋ぎ駆けだした。
二人は見合わせて笑い、――甘美な植物園へとたどり着くのである。それはウツギも行ったことがない秘密の場所……であった。
「先生、それって……」
すると楠は羞恥のあまり泣き叫ぶのをぐっと抑え「……ウツギが最後に残してくれたんだ」そう告げた。
すべすべとしていて奇麗な球体に瞬かせるが、その前にも楠がなぜアベリアのなかに居るのにも疑問が募る。
「なんで先生アベリアのなかに入っているの?」
またしても目木に疑問を問いかけられたので答えようとすれば……そうだと楠はアベリアのなかにそっと青と白の色調をした球体を放り込んだ。
――これでウツギが戻ってくるかもしれない。そう強く願った。
だが一向にウツギが出てくるわけでもない。ただ、球体は停止したままである。
楠は唇を噛んだ。
「なんだよっ! なんだよ……、お前、戻ってくるって言ってたじゃねぇか。アベリアの前に来ればって!」
涙が溢れて止まらない。とめどなく止まらず楠がしゃくりあげる。
「お前に会いたいよ。……また会って、楽しいことしようぜ。――お願い、だから」
楠は近づき白と青の球体を抱き寄せ……キスをした。
するとなんということか。
光がたちまち広がり、楠の腕のなかで大きく重たくなる。
「な、なんだ!??」
神々しく輝く光のなかで脚が生え、腕が生え、顔の造形が整い、華奢で薄い背中に小柄な身体、そして艶めく茶色の髪の青年はぐっすりと眠っていた。――周囲が大きな歓声を上げた。その見覚えのある顔は……。
「姫が……生き返った、のか?」
「うーちゃん……?」
百日紅と黒鉄がさまよい挙動不審になっているさなかで、楠は呼吸をしているウツギに――キスをする。
すると左目が白潤な瞳が目を覚ましにっこりと微笑んでいた。
「ね、驚かせるって言ったでしょ」
「……馬鹿ウツギ」
二人はまた誓いのキスをした。ウツギの瞳は白いままだった。
事情聴取の内容としては「どうして現場に向かってしまったのか?」を催促するような質問であったが、以前からウツギが狙われていたのに動かなかった警察もどうだと楠が言い負かし、謝罪の弁を受けた。
だがそれでも、一般人がむやみに現場に急行するなと告げられて、長時間渡った事情聴取とお咎めは終えることができた。
ウツギは一応警察の医務室に入って眠っていた様子である。疲れていたのであろう。起き上がってから事情聴取を医務室で受けたうえで去ることになった。
「大変だったぁ~」
戦闘用ネイチャードールであったがゆえに生き延びることができたウツギではあるが、内心では瞳を青くさせて不安で堪らなかった。
みんな自分が死んだと思い込んでいるとも思ったし、思わせた自分も悪かったなと考え込んでいた。
特に楠には悪いことをしたなども。
「はぁ~……気が重い」
ウツギは濃紺にさせて肩を落とし、出口へと向かう。出口の扉を開けて外に向かうと蒸し暑さが増した。蒸し暑い……となったところでベンチに腰かけている植物探偵団と楠が目に入った。
瞳を白くさせる。こんな熱いさなかで待っていたことが嬉しかったし、感謝でしかなかった。
だがそれはウツギ以外ではなかったらしい。植物探偵団も目が合って「お~い!」そう声を掛けてくれて、近づいて頭を撫でられたり抱き締められたり手を取られたりしたのだ。
「うーちゃんが戻ってきてくれて良かったよ。ほっとした……」
「うーちゃん心配させやがって~!!!」
「姫が無事で良かったぜ」
黒鉄がポンポンと頭を撫で、目木にくすぐられるように抱き着かれ、そっと触れられるように百日紅に握られた。
自分って愛されているのだという実感が湧いた。それぐらい皆、心配もしてくれたが温かい言葉や行動をくれたのだ。
「うーちゃん、どこ見てんの~。ちゃんと俺の方見て?」
目木が自分の方に手を添えて手繰り寄せ、キスでもしそうなほど近くに迫ったのち、ゴンッ! という音が聞こえたかと思えば、真顔で目木の頭をぶん殴りウツギを取り返していた楠が居た。
目木を威圧するような楠にタジタジになるウツギではあるが……。
「俺の恋人にちょっかいかけんな、馬鹿。というか、お前らはとっとと帰れ」
冷静だが率直な言葉に右目が瞬いて、ジクリと疼いて離さない。
――これも嬉しいという感情か。ウツギはその衝撃のあまり楠を抱き締めた。
「あ、ずるーい。うーちゃんの目の色が変わったじゃん」
「バーカ。恋人なんだから当たり前だろう。――じゃ、俺らは帰るから」
「先生のばーか!」
目木に言われつつもひらひらと右手で「また明日ね~」などと言ってくれる仲間に、ウツギは嬉しくて目を細めた。白く透き通った瞳に変わった。
黙ったまま歩いていくウツギと楠ではあったが、不意に楠に「今日は別の場所に泊まるか」なんて言い出した。
ウツギは少し青色に染まった。
「別の場所……ですか? どうして?」
「……お前と家以外でも一緒に居たいから、かな」
蒸気が出そうなほどの言葉にウツギが黙っていると、楠がニヒルに微笑んで「行くぞ!」そう言って手を繋ぎ駆けだした。
二人は見合わせて笑い、――甘美な植物園へとたどり着くのである。それはウツギも行ったことがない秘密の場所……であった。
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