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1章 サバイバル
サバイバル開始
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午前9時
耳が痛い、腹の奥からズンと来るような感覚が終始、身体に襲いかかる。
隣に座る者との会話も難しいような爆音の中、無線機を通してその司令は伝えられる。
「降下!」
命令はコンパクトだ。俺たちは〝輸送機〟の端に立ち、そこで手を離す。
一瞬の横方向への流れを感じた後、すぐにマイナスGがかかり、垂直降下が始まる。
────サバイバル訓練 開始
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
2時間前
サバイバルに備え待機部屋に待機していた第一飛行隊のもとに一つの命令がもたらされた。
「輸送機に乗り込め」
外を見ると3機の輸送機が準備万端の状態で飛行場に待機していた。
「これより、第一飛行隊はサバイバル会場の上空まで飛び、そこで待機し、訓練スタートの合図で会場まで空挺降下してもらう」
追加ルールがあるとは聞いていたが、それにしても最初から伏せていた事項があったとは驚きである。
まぁ、驚きはそれくらいとして、まずはこの追加ルールをどのようにして活用するのかを考えなくてはならない。
今までならここからは隼人と2人で話を詰めていき結論を出すところなのだが……今の俺たちの周りには後2人、仲間がいる。
「この追加ルールについて気づいたことはあるか?」
零の言葉は仲間たちにむけて発せられる。
だが、俺たちに考える時間を与えられることはなかった。
教官は無言で部屋から出るように促すと、次々と俺たちを輸送機に案内させる。だが、案内をしているのは殆どが飛行場の職員であり、教官の姿は数人のみであった。
俺たちは案内されるままに1機につき、3小隊ずつ乗り込んでいった。
輸送機までの移動中、話す時間こそあったが場には張りつめるような緊張感があったため安易に口を開けるようなものではなかった。
そのおかげで、俺たちが再度口を開けたのは輸送機に乗り込んでからだった。
輸送機には他に2小隊が乗っていたが、音がうるさすぎるため話を聞かれる心配はない。俺たちは目配せして、隊内無線を開くと会議を再開した。
「再度聞くが、何か気づいたことはあるか?」
この言葉に最初に反応を見せたのはケイリーだった。
「雰囲気、教官たちから感じる気配が異様に鋭いのを感じたわ」
「雰囲気とは、あの飛行場でのことか?」
隼人が確認のために質問を重ねる。
「ああ、その通りだ」
教官からか、俺もあの緊張感こそ感じてはいたが、生徒の発するものだと高をくくっていたのだ。今回のサバイバル訓練は経験者がいないためにそれもありえるだろうという先入観があったことも理由としてあげられるだろう。
経験者がいないというのはそのままの意味であり、従来ならサバイバル訓練は航空学生が行うものではなかった。
と、いうのもこの訓練は公式大会に新たに追加された競技である総力戦によるものであった。
総力戦とは、勝利条件だけ述べれば敵の拠点を占拠する事である。つまり、例え敵拠点の制空権を確保した後に空挺部隊などによる地上戦も必要となるのだ。
まぁ、このことについての分析はこれくらいとしてもケイリーの言った〝教官たち〟からの緊張感はひとまず頭の片隅に持っておかなければならないものであった。
たが、直近の問題は
「だが、直近の問題はこの空挺降下の理由についてだが、1つ思い当たることがある」
俺は1度言葉を切り、自分でも再度それを吟味してから口に出す。
「訓練会場の目視での地形の把握だ」
「地形把握か、確かに有り得そうね。けど、どうせ訓練がスタートしたら地図を支給されるのだからそこまで重要ではないのでは?」
「それは……」
ケイリーのその指摘に答えようとした時、タイミング悪く教官からの無線が入る。
〝後、数分もせずに目的地に着く、各自自分の持ち物、小隊長は座席下に入っている支給品を持って降下準備を整えておけ〟
無線は命令が終わっても開かれたままであった。これでは、小隊内で話をする事は不可能である。
それは、皆も分かっているようで各自準備にうつる。
「目標地点到着、ただ今、8時59分10秒……20」
かすかな振動とともに扉が開く。身体が浮かび上がるほどの暴風が吹くなか、カウントだけが頭に届く。
「50……60、降下!」
合図とともに次々と機外へと人影が消えていく。
一瞬のうちに自分の番となり、躊躇う間もなく身体が動く。
耳元で風の唸る音がする。一瞬の横方向への流れを感じ、後は垂直の降下が始まる。
俺の手は訓練通りの動作を行い、パラシュートを開いた。
近くには自分以外の11個のパラシュートが開いている。
急激にスピードの落ちた降下の中、俺の目はその光景を焼き付け始める。
全方向、等距離に高いフェンスが見えた。それが訓練場と公共の土地を隔てる仕切りなのだろう。距離はおよそ5キロ、訓練場は1辺5キロのフェンスに囲まれた正方形の戦場であった。
等距離なことから、俺たちの降下地点はちょうど訓練場の中央あたりなのだろう。
北の方角には山があり、その中央から川が流れている。山はもちろん、訓練場全体が深い森に囲まれている。
東の端の方は若干木が少ないように見えるが遠く、その正体までは分からない。
西の方角には、森が広がり……いや、何かに光が反射している。あれは、湖か?
それを確認するにはもう高度が足りなくなってきていた。
下を見ると木の1本、1本が判別できる距離まで高度が下がっている。ここまで来るともう周りには注意をはらう余裕はなくなる。
誤っても、ゲームでいえばチュートリアルのような段階で怪我をするわけにはいかないからだ。
靴の裏に固い感触を感じるとふとした安堵感が感じられた。たが、それも一瞬のことである。
油断なく周囲を見渡し、安全を確認する。
森は所々に差し込む日の光によって幻想的に広がっていた。
だが、その光景は太古の昔より旅人を魅せ、そして迷わせた森────それと似たものを感じさせた。
9時00分
残り小隊数、36
耳が痛い、腹の奥からズンと来るような感覚が終始、身体に襲いかかる。
隣に座る者との会話も難しいような爆音の中、無線機を通してその司令は伝えられる。
「降下!」
命令はコンパクトだ。俺たちは〝輸送機〟の端に立ち、そこで手を離す。
一瞬の横方向への流れを感じた後、すぐにマイナスGがかかり、垂直降下が始まる。
────サバイバル訓練 開始
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
2時間前
サバイバルに備え待機部屋に待機していた第一飛行隊のもとに一つの命令がもたらされた。
「輸送機に乗り込め」
外を見ると3機の輸送機が準備万端の状態で飛行場に待機していた。
「これより、第一飛行隊はサバイバル会場の上空まで飛び、そこで待機し、訓練スタートの合図で会場まで空挺降下してもらう」
追加ルールがあるとは聞いていたが、それにしても最初から伏せていた事項があったとは驚きである。
まぁ、驚きはそれくらいとして、まずはこの追加ルールをどのようにして活用するのかを考えなくてはならない。
今までならここからは隼人と2人で話を詰めていき結論を出すところなのだが……今の俺たちの周りには後2人、仲間がいる。
「この追加ルールについて気づいたことはあるか?」
零の言葉は仲間たちにむけて発せられる。
だが、俺たちに考える時間を与えられることはなかった。
教官は無言で部屋から出るように促すと、次々と俺たちを輸送機に案内させる。だが、案内をしているのは殆どが飛行場の職員であり、教官の姿は数人のみであった。
俺たちは案内されるままに1機につき、3小隊ずつ乗り込んでいった。
輸送機までの移動中、話す時間こそあったが場には張りつめるような緊張感があったため安易に口を開けるようなものではなかった。
そのおかげで、俺たちが再度口を開けたのは輸送機に乗り込んでからだった。
輸送機には他に2小隊が乗っていたが、音がうるさすぎるため話を聞かれる心配はない。俺たちは目配せして、隊内無線を開くと会議を再開した。
「再度聞くが、何か気づいたことはあるか?」
この言葉に最初に反応を見せたのはケイリーだった。
「雰囲気、教官たちから感じる気配が異様に鋭いのを感じたわ」
「雰囲気とは、あの飛行場でのことか?」
隼人が確認のために質問を重ねる。
「ああ、その通りだ」
教官からか、俺もあの緊張感こそ感じてはいたが、生徒の発するものだと高をくくっていたのだ。今回のサバイバル訓練は経験者がいないためにそれもありえるだろうという先入観があったことも理由としてあげられるだろう。
経験者がいないというのはそのままの意味であり、従来ならサバイバル訓練は航空学生が行うものではなかった。
と、いうのもこの訓練は公式大会に新たに追加された競技である総力戦によるものであった。
総力戦とは、勝利条件だけ述べれば敵の拠点を占拠する事である。つまり、例え敵拠点の制空権を確保した後に空挺部隊などによる地上戦も必要となるのだ。
まぁ、このことについての分析はこれくらいとしてもケイリーの言った〝教官たち〟からの緊張感はひとまず頭の片隅に持っておかなければならないものであった。
たが、直近の問題は
「だが、直近の問題はこの空挺降下の理由についてだが、1つ思い当たることがある」
俺は1度言葉を切り、自分でも再度それを吟味してから口に出す。
「訓練会場の目視での地形の把握だ」
「地形把握か、確かに有り得そうね。けど、どうせ訓練がスタートしたら地図を支給されるのだからそこまで重要ではないのでは?」
「それは……」
ケイリーのその指摘に答えようとした時、タイミング悪く教官からの無線が入る。
〝後、数分もせずに目的地に着く、各自自分の持ち物、小隊長は座席下に入っている支給品を持って降下準備を整えておけ〟
無線は命令が終わっても開かれたままであった。これでは、小隊内で話をする事は不可能である。
それは、皆も分かっているようで各自準備にうつる。
「目標地点到着、ただ今、8時59分10秒……20」
かすかな振動とともに扉が開く。身体が浮かび上がるほどの暴風が吹くなか、カウントだけが頭に届く。
「50……60、降下!」
合図とともに次々と機外へと人影が消えていく。
一瞬のうちに自分の番となり、躊躇う間もなく身体が動く。
耳元で風の唸る音がする。一瞬の横方向への流れを感じ、後は垂直の降下が始まる。
俺の手は訓練通りの動作を行い、パラシュートを開いた。
近くには自分以外の11個のパラシュートが開いている。
急激にスピードの落ちた降下の中、俺の目はその光景を焼き付け始める。
全方向、等距離に高いフェンスが見えた。それが訓練場と公共の土地を隔てる仕切りなのだろう。距離はおよそ5キロ、訓練場は1辺5キロのフェンスに囲まれた正方形の戦場であった。
等距離なことから、俺たちの降下地点はちょうど訓練場の中央あたりなのだろう。
北の方角には山があり、その中央から川が流れている。山はもちろん、訓練場全体が深い森に囲まれている。
東の端の方は若干木が少ないように見えるが遠く、その正体までは分からない。
西の方角には、森が広がり……いや、何かに光が反射している。あれは、湖か?
それを確認するにはもう高度が足りなくなってきていた。
下を見ると木の1本、1本が判別できる距離まで高度が下がっている。ここまで来るともう周りには注意をはらう余裕はなくなる。
誤っても、ゲームでいえばチュートリアルのような段階で怪我をするわけにはいかないからだ。
靴の裏に固い感触を感じるとふとした安堵感が感じられた。たが、それも一瞬のことである。
油断なく周囲を見渡し、安全を確認する。
森は所々に差し込む日の光によって幻想的に広がっていた。
だが、その光景は太古の昔より旅人を魅せ、そして迷わせた森────それと似たものを感じさせた。
9時00分
残り小隊数、36
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