『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯

文字の大きさ
20 / 40

第19話 他の誰でもない

さて、やはり今日もどエロい絵がここにあるわけだが……。
問題はどうやって氷の魔女を呼び出すかということ。
作品のレビューを続けているだけでは、一向に話せる機会はこない。

「にしても、今日のはすごいなぁ……」

ふうぅーと吐き出す感嘆符。握るシャーペンに力が篭る。
いつもの絵の質感とはリアリティが違う。
胸の膨らみ、太ももの柔らかさ、美しい足の爪と、恥じらいを持った表情。
体育座りをしている少女の絵だった。

「……」

いつも以上に気合が入っていることが悠々と伝わる。
今日は閉館日、俺にしか見つからない故の挑戦か?
それはそれで、なかなか、心躍るモノがございます。

──キュルキュル……

静寂をぶった斬る、車椅子の音。
誰が来ているのかは一発で分かった。
まだ遠くで聞こえる。息を潜めてさえいれば、見つかることなどない。

「……くーん、優くーん。私にナイショで隠れんぼー?」

とてつもないスピードで、着実に向かってきている。
ここは一本道。隠れる場所はない。

シャーペンをパレットの横に置く。
ごめん、今日は評価シート書けそうにない。

ちなみに、隠し事がバレれば俺アレルギーが発動する。
それはこれまでの経験から得た確信。
ガスマスクの2人を殺した質問が最も分かりやすい一例だと思う。

『あなたの好きな人は誰ですか?』

今の俺なら、『誰でもない』と答えられる。
そう、隠す必要がなければ、死人が出ることもなくなる。

人を愛せば爆弾を抱えることになる。

嘘もつきたくない、人も愛したくない。
もういっそ、極限まで他人にキョーミを抱かぬよう生きるしかない。
この気持ち、四葉、お前には分かるまい。

「あははっ! みーつけたっ!」
「……奇遇だな」

四葉の瞳、未だ感情読み取れず。
瞳の中にハイライトあらず、かつての木之下四葉である。
全てを拒絶し、俺にしか会話を許さない四葉です。

「エッチな絵……いっっつもここに来て見てたんだー?」
「作品制作の手伝いをしてただけだ。別にそれ以上のことは──」
「別に、おこってないよー?」

狭い、狭い一本道。
車椅子の横を通り抜けるなんて、できない。
四葉は虚な瞳を揺るがして、ゆっくりと近づいてくる。

「優くんはさ、私にしたこと自覚してないよね。だからいっつもあやふやな態度で、それでいいと思ってる」
「お前にしたことなんて、俺は知らねえよ」

車椅子は止まる。壁際、押し込まれた。
壁に沿うような形で背筋が固定される。
ただ、四葉はこれ以上の行動は起こせない。
たったそれだけ、確信できた。

「知らない? 思い出せない? またそうやって言い訳するの?」
「言い訳なんてしてねぇ。本当のことだ」
「……なら、思い出させてあげる」

パチンッ、四葉は指を鳴らす。
パチンッ、図書室の照明が消える。

バチチチチッ!

青い光が俺の体に触れる。
流れる激痛、なにがなにやら……。

「よつ……ば、なにやって……」
「私、ひとつだけ、優くんに隠してたことがあるの」

遠のく意識、うすら笑みを浮かべる四葉。
その奥に、ポツンと人影。

「おおー、木之下。いい作戦だったなぁ」
「当然ですよ雫先輩。私がずっっっと前から準備してた作戦なんですから」
「……同じ女でもちょっと引くわー」
「なんでですか?」

ふふっ、雫先輩は分かってないですね?

愛してるからこそ、彼の周りを消すんですよ。

私以外、愛せなくなるように。

────────

「……あれ?」

いつも通り評価シートを受け取ろうとしたけど、白紙だった。
そばには彼のシャーペン、端に寄せられた私の絵。

今回のは自信作だったから、いい感想を貰えると期待してたのに。
まさかいい感想どころか、感想すら貰えないなんて……。

とりあえず、本棚に隠しておいた盗聴器とカメラを取り出す。
もしかしたら彼、賢者タイムで感想どころじゃなかったのかも。
なんて極小の期待と興奮を胸に、カメラを再生する。

「……なにこれ? 誘拐?」

私の彼は、車椅子の女の子に気絶させられていた。
そして、後ろから背の高い女が出てきて彼を担いでゆく。
暗視のカメラを買っておいてよかった。
かろうじて2人の顔は確認できた。

「木之下四葉、と……知らない人。この学校の生徒ではなさそう?」

何度か映像を巻き戻して、女の顔を見る。顔は私の知らない人だった。
盗聴器を聞く。私の知っている声だった。

「この人が海野雫……。たしかに、雨宮くんが好きそうな顔とおっぱい」

でも、将来なんてわからないからね。
私が、雨宮涼音になるからね。

子供の名前は、男の子なら優斗、女の子なら三葉。
ふふっ、私たちの名前からつけたいなぁ……。

おおっと、いけないいけない。
今は雨宮くんを助けるために情報収集しないと。
そうと決まればお家へレッツゴーなのです!

「あっ、忘れるところだった」

雨宮くんのシャーペンを手に取って、ジップロックの中へ。
空気を抜いて密閉し、カバンの中へ。
本日のオカズを手に入れた。

────────

「ただいま……て言っても、誰も居ないね」

手を洗う、部屋の電気をつける。
リビングを少し片付けて、ノートパソコンを開く。

カタカタカタカタ………

雨宮くんデータベースに、今日の出来事をまとめ上げる。
出来るだけ端的に、だけど詳細に。

「……ふぅ、終わった」

時計を見る午前03:17

立ち上がって、タンスの1番上を開く。
中には大量の写真。その中から、知らない女が写っているものをピックアップ。
机の上に広げる。

「これは違う、これも、これも……。この子は……似てるけど、ちょっと背が低いかな?」

焦って見落とさぬよう。

今こうしてる間にも、雨宮くんが乱暴されているかもしれない。
あの薄汚い娘達のいやらしい瞳、雨宮くんを捕食対象として見ていた。

でも、むしろこれはチャンス。
私が華麗に彼を助けることができれば、一気に距離は縮まる。
そして、溜め込んだ『雨宮力』で彼と話を合わせる。
2人の距離はさらに……。

「俺はお前のことが好きなんだ。付き合ってくれ!」
「うん、私も大好き!」

ってな感じゴールイン。

最強カップル、爆誕!

「ふへへ、かんっぺきな作戦……。我ながら天才ではー?」

これも……、これも……、この子はおっぱい大きいけど違う。

「あった!」

見つけた、海野雫。
暗闇で分からなかった髪色は金。
映像と照らし合わせても一致している。

先ほどから盗聴した会話の限り、彼女は政府側の人間らしい。
それならあとはー、相棒に電話してー。

ピッ、トゥルルル……

「へい、どうしたのー?」
「あっもしもしー? 雨宮くん関連で調べて欲しいことがひとつあるのー」
「オッケー、で、誰のこと?」
「海野雫って人。政府側の人間らしいんだけど、イブは知ってる?」
「コッチの組織じゃあ聞かないなぁ……。その人のこと調べたらいいの?」
「うん、今の居場所も特定してくれると助かる……盗聴だけだとイマイチわかんなくてさー」

「おっけい」と言ってイブが電話を切った。
しん、と部屋が静まり返る。

雨宮くんのアレルギーはたしかに強力だ。
知った情報が深ければ深いほど、死に至る可能性は高い。
だが、それは彼自身の口から聞いた場合。
私みたいに裏でカタカタやっている人間には無関係なお話。

盗聴器、彼の部屋にある隠しカメラ、彼の家の合鍵。
あの日、事故に遭ってから集め始めた、雨宮くんの名残り。
早く、早く気づいて。

──ピロン

「はっや……」

イブからのメール。
そこには海野の現在地が地図上に表示されていた。

『安川刑務所跡地』

かつては稼働していた刑務所。
跡地とは言っても建物だけは残っている。
家からはそう遠くない。歩いて数十分、雨宮くんのためなら一瞬だ。

さぁ、私の人生を返して?

足が動かなくなってもいい。
ただ、雨宮くんの側で笑っていたい。

早く見つけて。

私こそが本物。

私は四葉のクローバー。

アイツは氷の魔女。

あの日の事故から入れ替わったまんま。

だから早く、私の体を返してもらおう。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。