『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯

文字の大きさ
27 / 40

第26話 ウチはやり直したい

月は静かに街を見下ろして、当然、海野と雨宮の家も視界に入れている。
現在、彼ら家に共通している点は2つ。

カタカタカタ……

まだ、パソコンゲームに耽っている人物がいること。
そして、堕天使が屋根に乗っかっている。

雨宮宅の堕天使は、体育座りでメソメソと泣いている。

海野宅の堕天使は、白衣を纏っている。
また、屋根の上に段ボールで作った簡易的な机を置いている。
彼女はその上で何やら、怪しげな薬を調合していた。

「ついに、ついにできたよ……」
そう言って、フラスコを月明かりと共に見上げる。
興奮しているのか、少々握る力が強いと思われる。
キラリと、彼女がかけている、大きな丸眼鏡は光った。

堕天使は、見るからに女児である。
着ている白衣も、半分くらいは地面に垂れている。
ただ、月明かりに照らされる幼い顔は、妙に艶やかでもある。

「ようやく、ようやく天界に帰れるんだね……」

まるで、月に恋焦がれているかの如く視線。
堕天使であることは本当のようだ。

堕天使は這うようにして屋根を下る。
そしてベランダに着地し、コンコンと葵の部屋をノックする。

「んー? どーしたの?」

薄着の葵は、にこやかに出迎える。
堕天使との身長差はやはり、姉妹であった。

「葵ちゃん、コレ! 早く飲んで!」

堕天使は斜めにフラスコを掲げる。
こうでもしないと、葵との身長差はうまらない。

葵が受け取ったフラスコ内には真っ赤な液体。
いかにも怪しい薬。その禍々しい風貌に眉を顰めた。

「これって……例の薬だよね?」
「うん! 葵ちゃんが言ってた薬だよ!」

葵は薬と睨めっこして、しばらく時間が過ぎる。
その後ようやく決心がついたのか、「ふーう」と大きく息を吐き出した。
葵は目を閉じる。出来るだけ、薬の外観を意識しないためだ。

「それじゃあ、飲むよ……」
「うんうん! ゴクゴク飲んじゃって!」

キラキラとした眼差しは、堕天使から注がれる。
葵は気づかない。いや、知らない。

ゴクゴク……

「ぷはっ」

薬を一息で飲み干して、口元を拭う。
ちょうど赤い薬だったため、葵の唇は紅を塗ったようだった。
まぁ、これが唯一の副作用。

ちなみに、堕天使は天界へ帰った。
葵の願いを叶えたからである。

では、葵の願いとは何であろうか。

それは単純だ。

今、ベランダに寝転がっている男子高校生が答え。
『海野葵』改め、『村雨』。
彼女……彼はすくっと立ち上がり、パソコンに向き合った。

──────────

少しソワソワしながら、俺はファミレスの一角でスマホを弄っていた。
現在、時刻は朝の8時。中々に早い、待ち合わせ時刻。
だが、そんなことも気にならないくらいには緊張していた。

今日、村雨さんと初めて顔を合わせる。
数年間ネット友達をしていた相手。

どんな顔? 声は? 性格は?

ここにきて、相手を全く知らないことに恐怖する。
だから、さっきから入店してくる人をチラチラ見ては、肩を窄める。

カランカラン……

また。視線を入り口へ。
入店した人は、眼鏡で小太りの若い男。
この瞬間、電流が走ったかのような衝撃。

ぜっったいアイツだ!

スマホを覗きながら、ぎこちない発声。

「連れがいるんで!」

と言って、店内を見渡す。
俺が用意した目印に視線を落として、ホッとした顔でこちらに向かってくる。
この向かってくるまでの時間、気まずい。

男は俺の前に座る。
俺も少し座り直して、「こんにちは」と会釈。

「その、こんにちは」相手も会釈。

ここから数秒、激気まずい時間が流れた後。

「あ、アマミーさん……ですよね?」
「はい、そうです。こちらこそ、……村雨さんですよね?」

相手がうなづいた所から、俺たちの会話がスタートした。



……気付かれてないよね?

アマミーとファミレスで待ち合わせて、その後映画を見に行った。
今はだいたい、3時くらい? ウチらはクレープ屋の列に並んでる。
まだバレてないっぽい。

「ウチのことバレたら、嫌われちゃうもんね。隠し通さないと」
「……なんか言いました? 隠し通すって……」

危ない、声に出ちゃってた。
もう、こういう時、思ったことを言っちゃうのはダメ。
アマミーと一緒にいられる時間が短くなっちゃう。

「えっ? あー、アレだよ。ウチ……じゃなくて、僕の趣味のこと。クラスの奴らに見つかったら、なんて言われるか分かんないし」
「隠したいのは、まぁ、そっすよねー。
 でも、村雨さんが思ってるより、皆んな優しいかもですよ?」

アマミーがウチを見上げて言う。
ウチとアマミーの身長差が逆転してるから当たり前。
けど、アマミーの言いたいことは当たり前じゃない。

「『優しいかも』なんて思って生きるの、けっこー難しくない?」
「そうですかね? 俺は自分の考え方次第だと思いますよ?」
「でも、現実って、取り返しつかないじゃん?だから、失敗したらオワリだよね。
 ボクは、打算で生きるよりも用心深く、だと思うよ」
「へぇ? どうしてですか?」

アマミーの挑発的な視線。少しだけ、少しだけ、不快。
もう、アマミーは理想的な人を思い描いてる。
ウチは違う。ウチは、もっと、現実の人間を知ってる。

「現実の人って、何するか分からないもん」
「俺は、怖がり過ぎたと思いますけどね?」
「うーん、アマミーは楽観的だね」

そういう人生、いつかぜっったい後悔するよ。
だから、だから、ウチが治してあげなくちゃ。

「アマミーはどう? これから先、後悔しない自信ある?」
「ないですよ」

すんなり、本当にすんなり。
ウチは驚いて、アマミーを2度見した。
一歩、クレープの列が進む。前に並ぶ客はだいたい、あと10人。
肝心のアマミーは、下を向いちゃってる。

「だって俺、後悔しっぱなしの人生なんですよ?
 あるわけないでしょ、後悔しない自信」

開き直って、笑ってる。
アマミーを導かなくちゃ。
ウチの中に、使命感が強く出てきた。

「だったら、ボクみたいに──」
「ですけどね。俺、後悔したから、やり直せたんです」

いや、アマミーは、開き直ってない。
噛み締めてる。深く、味わってた。

「……村雨さん、知ってました?」

アマミーの瞳に、ウチは吸い込まれてしまう。

「後悔したら、失敗をやり直せるんです」

いつの間にか、クレープの順番が回ってきていた。
「ご注文は?」と爽やかな若い女の子が聞いてくる。
ウチは何か言った。でも、何を頼んだかは覚えてない。
クレープの味も、あまり覚えてない。

「やり直せないよ。……ウチの失敗は」

ウチらは近くにあった、ベンチに座ってる。
アマミーはクレープに夢中だ。
だから、ウチの言葉なんて聞こえてない。
ウチは味のしないクレープに齧り付いて、空を見る。
さっきまで晴れてたけど、今は曇り。
雨が降るのも、時間が経てばそうなると思う。

ウチの失敗は、やり直せない。
分かってる、分かってるけど、アマミーの言葉に揺らいじゃった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。