そして兄は猫になる

Ete

文字の大きさ
5 / 27

誰が仕切るの?私でしょう(泣)

しおりを挟む
病院で兄の死を確認してからというもの、
一気に時間との戦いが始まった。

両親と義姉は、亡骸に縋って動かない。
いや正確には動けない。
あまりのショックに脳も身体も固まったままだ。

でもみんな泣いている場合じゃない!
いつまでもここには居られない。
看護師さんも、エンゼルケアをしようと待ち構えていらっしゃる。
早く遺体を連れて帰らねば!

どうする⁉︎
誰が仕切る⁉︎
ええ~い(汗)
私しかいないでしょ💢

とにかく電話だ!
電話しまくるしかない!

まず一番近い親戚に電話。
兄が亡くなったこと、自宅に行って受け入れ準備をして欲しいこと、親戚中に連絡を入れて欲しいことを伝えた。

「何~⁉︎死んだって⁉︎」
叔母は驚き、慌てふためき 何度も繰り返し聞いてきた。
とは言え 悠長に説明している暇がない。

でも
「よし!分かった!」と引き受けてくれた。
「バイクは移動したから大丈夫!心配するな」との返事も聞けて、事故現場の事を考えなくていいってだけでも力が抜けそうになった。
やれやれ…。

次は翌日行くはずだった京都のホテル!
やっとの思いで取った 窓から二条城が見える部屋だったのに~!
理由を説明してキャンセル。
くっそーーー!キャンセル料金3分の1取られた(泣)

いやそんな事言ってる場合じゃない(汗)
今度は葬儀屋だ!

って、電話番号なんて知らんわ💢
知り合いにTELして探してもらう。
それから葬儀社に連絡して、病院から自宅までの送迎をお願いした。

次!
私の子どもたち。息子と娘!
娘は高校生で、電話をした時ちょうど電車に乗ろうとしていた。
「待て!乗るな!兄を向かわせるからそこで待て!」と指示を出す。
間に合った!

今度は息子!
こっちも仕事が終わって帰宅中の車内。
事情を話し、妹を駅で拾って 2人無事に家に帰るよう指示した。
家は誰もいないから 途中、弁当かおにぎりを買って帰るようにと付け足した。

次!
お寺!
「こんな時間にすみません!(中略)そっちのスケジュール教えてください!」

ハァハァハァ…

次!
お兄のお友達!
義姉からあっという間に広がってたからそこはヨシ!

次!
両親を家に帰す方法模索‼︎
ちょうど病院の廊下を 駆けつけてくれたバンドの人が歩いていたのを発見!
大声で呼び止める!
(院内は静かにしましょう)

「〇〇さーーーーーん‼︎」
よかった!振り向いてくれた‼︎

「あの人名前違うよ?〇〇さんだよ」
夫がポソっと呟く。

「え⁉︎」

でもいい!今は誰でもいい!
(恥ずかしい~!)
私たちは手続きしてからでないと帰れないから、両親を家まで送って欲しいとお願いした。
ちょっと距離遠かったけど、快く引き受けてくださった。

次!職場の上司!
「って事なのでしばらくお休みしますっ!」

次!
オットノ ジッカ…

実は私 夫の両親と同居していましたが、折り合い悪く、
3ヶ月ほどで『オット ヲ ツレテ』逃げだしました(笑)
(ここだけデスマス調だな)

そして私の実家の近くに家を建てたと♪

ん?
これって…
まさか⁉︎

《後取り居なくなるから お前戻ってこいってことだったんじゃ⁉︎》

生唾ゴクリ…あり得る…
もしやご先祖様の仕業かぁ⁉︎

…寒いぃぃいいいいいいいい‼︎
話 出来すぎてて鳥肌立つわ‼︎



1人騒いでいた私を見て
痺れを切らした看護師さんが
「処置をしたいのですが…いつ頃がよろしいですか?」と声をかけてくる。
また私かよ…トホホ(泣)
義姉と両親に離れるよう促し、帰りの身支度を整えていただいた。
「衣類がないので 病院の用意した着物でいいですか?」
「はい。お願いします」
と言ったものの…

お兄…着せられた浴衣…似合わない。


その頃、葬儀社からもうすぐ到着しますと連絡が入った。
え?もう⁉︎

忙しい(汗)忙しいぃぃいいいいい‼︎

車には1人しか乗れないと言われたので、
義姉が乗って アパートに寄ってから家に帰る事になった。
死亡診断書を持たせて見送る。
兄の着ていた衣類は、病院でぐちゃぐちゃに切られていて、血がのっぺりと付いていた。事故とその後の悲惨さを物語っている。
捨てるわけにもいかずビニール袋に入れて持ち帰る事に。

病院のあれこれの手続きをして さぁ、私達も帰ろう!

グゥゥ~…

こんな時でも お腹空くんだ…。
途中コンビニに寄って サンドイッチを購入。
頬張りながら帰路に着く。
もうどっぷり夜だ。
帰ってからまた忙しくなる。

旅行の準備をする気が出なかったのは、こうなるから行くなっていうお知らせだったのかなぁ。
だとしたらすごいタイミング。
一日違ってたら 途中で帰って来なくちゃいけないところだった。
きっとお兄が止めたんだなぁ…なんて、夫と話した。


さて。
これからの段取り。どうしたものか?
すごく大変な予感。

家に帰ると叔母や母が遺体を安置する場所の片付けや準備に追われていた。
母から「嫁や息子はいつ帰ってくるの?」と聞かれる。
「え?まだ帰って来てないの?」
私達は彼女達を見送って、それから病院を出たことを母に話す。
「多分、アパートの荷物か何か持って帰ろうと用意してるんじゃないかな」そう言って母をなだめる。

…にしても帰って来なさすぎだろ~⁉︎
痺れを切らして電話する。
「ごめんなさい。もう直ぐ着きます。アパートを見せていたんです。もう帰れないから…」
義姉はぐすんぐすんと鼻を鳴らしながら呟く。

仕方ないか。一番辛いのは義姉なんだろうし。
帰って来たらあーして こーして…と考えながら、私達はお茶を飲んで待った。

待ったけど、帰って来ない。
           もう直ぐって一体あと何分⁉︎ ってか今どこ⁉︎

我慢我慢と言って待ち続け、
葬儀社の車が着いたのは、日付が変わった頃だった。

兄の遺体は葬儀社の人によって、西向きに安置された。
北枕にしたかったが、部屋が狭くて入らなかったから仕方ない。
葬儀社の人から翌日(と言っても今日のことだけど)の段取りを淡々と聞き、「また明日来ます。これから色々準備があります。皆様少しでも横になってお休みください」と合掌して帰って行かれた。

でも待てよ?
人が亡くなったら 遺体の前の線香は絶やさずにって言わないっけ?
死臭を消すためとか何とかの理由で。
お休みくださいって言われても…ねぇ?
誰が観る⁉︎
とみんなで顔を合わせる。

叔母が「お前達はこれから忙しくなるから休め。叔母さんが見てるから」と気を利かせてくれた。
お言葉に甘えて家に帰ることにした。

義姉は遺体の横に座り込んでいた。
肩を落とし、涙が止まらず、時々顔の布を外したり また掛けたり。
声のかけようもないほどの痛々しい姿で。

私と夫は 黙って家に帰った。

翌朝。
(と言ってもほんの数時間後の事だが)
叔母は「ずっと起きてたよ。ちゃんと線香立ててな」と眠そうな目をして言った。
叔母ちゃんほんと感謝だよ~。

「今日はどうなるんだろうね~?」
何て話をしていた時、遺体の枕元に、葬儀社が置いて行った袋が置いてあることに気がついた。

何が入っているんだろうと中を覗いてみたら、普通の線香じゃなくて、蚊取り線香みたいにぐるぐる巻かれた 長時間専用のお線香が入っている。
もしかして、ほんとはこれ使えば良かったんじゃないの?(滝汗)
みんな寝れたんじゃないか⁈

もっと早く気がつけばよかった。
叔母ちゃんごめんよ~!
なんか申し訳ない(汗)

ま、いっか…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...