そして兄は猫になる

Ete

文字の大きさ
12 / 27

兄は風になりました

しおりを挟む
兄は歳と共に少し性格が丸くなっていった。
体も一緒に丸くなっていった(笑)

そう言えば顔も丸顔だったな。
母親似だと皆んなから言われていた。

私は父親似だとしきりに言われた。
言われるとムキになって「母似です!」と言い返していたけど…

面長で眉毛や目の辺り…
先祖の遺影を見ると、祖父母も父も もちろん私も みんな同じ顔をしている‼︎
特に眉毛!
完全に遺伝子を引き継いでしまってるじゃないか⁉︎
間違いなく父の子だ。

母に似なかったのが悔しい。
幼少時から父が嫌いだったので、母親似と言われた兄が羨ましくてたまらなかった。
でも大人になって、歳をとった母の顔を見て、丸顔より面長の方がいいなと思うようになったのはちょっと内緒。

顔の事は置いといて、

丸くなったと言えば
兄は私の息子が学校を卒業して就職した時に、
「お祝いに何か買ってやる」と言ってきた。

ケチな兄からそんなこと聞いた事がない。
ずっと一緒にいた私にさえ言ってくれた事がないのに。
何かくれるとしたら、人から貰って自分には不要な物ぐらいか?

その兄が買ってやるって~?
これは気が変わらないうちにお願いしなければ‼︎

息子自体は特に欲しいものはなく、「何でもいいよ」と欲がない。
せっかく買ってもらえるのに…。

私はふと思いつく。
就職すると冠婚葬祭のお付き合いも増えるのに、まだ礼服を用意してやっていなかった!
「そうだ!礼服買ってもらったら?」と提案する。
「いいよ。じゃあ買いに行こう」
やった!やりました!
息子は兄と共に礼服を買いに出かけた。

「新しい礼服着て見せて!」私もドキドキ!

さすが兄貴!

…ブカブカじゃん…?(笑)

一体どんなサイズをチョイスをしたんだ。
仕方ない。ここは文句を言わずに、ありがとうとお礼を言う。


そして、その礼服の出番がやってきた!
その袖を一番最初に通すことになった冠婚葬祭ってやつが!

《まさか兄の葬式だったと言う結末…。》

買ってなんて言わなきゃよかった…。


さて、いよいよお墓に向かう時が来た。
空は秋空。綺麗に晴れていた。

父は骨壺を、母は位牌、私は遺影を持たせてもらった。
義姉はアロハ袋に入れたお骨を大事そうに抱えている。

お墓までは5分とかからないが、少し坂道を歩かなければならない。
ちょっと息が上がる。
近所に家は3軒しかないので、とても静かで 辺りは畑と山と青い空が見えるだけ。
昔はタバコの葉がいっぱい作ってあったなぁ。
お兄たちと、半ズボンとランニング、ノースリーブで走り回ったっけ。
いつも通る道なのに、今日は何だか違って見えた。

懐かしさと共に スゥ~っと顔の横を 秋の風が吹き抜けていった。


お墓に着くとお経が始まる。
これから先祖代々に兄が加わることになる。
みんなバンドさせられるんじゃないか?
お墓の中はドンチャカ賑やかになることだろう。
覗いたことはないが、勝手な想像。

墓にも色々あって、
従兄弟の所は 墓石の下を開けると石で囲まれたちょっとした空間があって、骨壺が何個か入るようになっていた。
誰の骨か分かるし、なるほど簡単でシンプル。見た目も綺麗。

うちの場合は、開けると土混じりの砂地になっていて とにかく『骨だけ』を入れるようになっている。
なので青い骨壺の役目は必然的にここまでだ。

結構な人数の親族に囲まれて、兄のお骨が父に手によって骨壺からお墓に移された。

これからはここがお兄の新しいお家だね。
実家もよく見えるし いい場所だ。
みんなが次々とお菓子を供えて線香を立てる。
兄の好きなコーヒーやコーラ、例の三色団子は勿論のこと、パンだの菓子だの…
いくら好きだからって ちょっと置き過ぎな気がする…。

私は少し離れた場所からその光景を見守っていた。
お兄 あっちでも間違いなく太るよね…

横の方で和尚さんが姉の持っているお骨の入った袋を指している。
義姉は骨が入っていることを説明しているようだった。
和尚さんはその骨もお墓に入れなさいと促している。
ここまで来て何やってんの⁇と思った。

義姉は袋ごと入れたかったのか?
それとも持ち帰りたかったのか?
しばらく拒否していたようだが、最後は渋々承諾した様子。

和尚さんは

『人は土に戻るんだ。骨は微生物らによって分解されて、少しずつ大地に還っていくんだよ。そこからまた新しい芽が出て 命は繰り返されていくんだ』
と教えてくださった。

ちょっといい話。

お兄も生えて来るのかな?(笑)


義姉はアロハで作られた巾着から、仕方なく兄のお骨を出してお墓の中に入れた。
袋をパタパタと振りながら。

その時

白いものが 空に向かってふわぁ~っと昇っていくのが見えた。
それは雲のように太く長く密集していて 義姉の頭上を 高く高く舞い上がっていく。
まるでランプの精みたいな感じだった。

何あれ⁉︎
びっくりして思わずボーっと見入ってしまった。

これ兄の骨粉⁉︎
にしては多すぎるでしょ?

誰も気が付いていないみたい。

もしかしてお兄はお墓から抜け出した?

狭いとこは嫌だったのかな。
手助けしたのはもしや義姉⁉︎
魂が自由を求めて旅に出たか~⁉︎

お兄ならやりそうだ(笑)

携帯持っていたのに、突然の出来事にその光景を写真を撮らなかったのが非常に残念(泣)
あれは絶対お兄に間違いない。
愛しの義姉のおかげか、アロハ効果か?

それとも風が誘ったのかな。
先祖が押し出したのかもしれない。

「お前にそこは早すぎる」なんて言って。

『千の風になって』まさしくその通りだ。

兄はお墓にいません。

訪ねて行っても
「ただいま不在にしております」の看板が出てると思う。
変顔の写真とか横に貼り付けて(笑)


兄は風になった。
風になったんだと私は思う。

これから いつでも 何処でも 
好きな時に 好きな場所へ
飛んでいける風になった。

まだまだやりたい事がいっぱいあるって予定も立てていたみたいだし。
兄は永遠の自由を手に入れたのだ。

と、私は思った。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...